第14章10節: 発見2:奇妙な発酵小屋
石碑の調査を終え、町へ戻る途中、私たちは湖畔から少し離れた、森の入り口近くに、ぽつんと建つ古い小屋を見つけた。人の気配はなく、打ち捨てられているようにも見える。だが、その小屋からは、微かに、しかし確実に、独特の匂いが漂ってきていた。それは、私がよく知る……発酵臭だ。
「この匂いは……!?」
私は足を止め、匂いの元である小屋へと近づいた。リリアとアリアも、何事かと私の後についてくる。
小屋の扉は簡素なもので、鍵もかかっていなかった。私は用心しながら、ゆっくりと扉を開ける。中は薄暗く、埃っぽい。そして、中央には大きな木桶がいくつも置かれ、その周りには、魚を干すためのものか、網のようなものが吊るされている。そして、やはり、あの発酵臭が強く漂っている。
「ハルカさん、なんだか……変な匂いがするね……」
リリアが鼻をつまむ。アリアも顔をしかめている。納豆の時ほどではないが、彼らにとっては不快な匂いなのだろう。
私は木桶の一つに近づき、蓋をそっと開けてみた。中には、大量の小魚が、塩と、そして何か穀物の糠のようなものに漬け込まれている。そして、液体が滲み出し、独特の香りを放っている。
「これは……魚醤か? いや、もっと固形分が多い。魚のなれ鮨に近いものか……? あるいは、糠漬けの一種?」
私は興奮を抑えきれなかった。この世界にも、魚を使った発酵食品が存在した(あるいは、現存する)可能性が出てきたのだ。これは、「食の禁忌」の仮説とどう関わってくるのか? あるいは、禁忌を逃れて細々と受け継がれてきた、古代の食文化の生き残りなのか?
小屋の中をさらに調べてみると、壁には、魚と穀物、そして何かを混ぜ合わせるような工程を描いた、素朴な壁画のようなものも見つかった。これは、重要な発見だ。
私は、この「奇妙な発酵小屋」の謎を解明すべく、本格的な調査を開始することにした。




