第14章8節: 発見1:湖の幸と保存の知恵
宿屋の厨房を借り(グレイアムの口添えと、私がアリアの食事を作っていた実績のおかげで、比較的スムーズに許可が下りた)、私は購入してきた「銀マス」と水草の分析・調理実験を開始した。
まず、銀マス。
見た目は確かに痩せているが、鱗を落とし、内臓を取り出して観察すると、特に病的な異常は見られない。身質も、弾力がないわけではない。だが、宿屋の主人が言うように、鮮度が落ちやすいのかもしれない。
私は一匹を三枚におろし、一部は塩焼きに、一部はハーブ(持参したもの)と共に蒸し焼きに、そして残りは……そうだ、前世の知識を活かして「昆布締め」ならぬ「水草締め」を試してみよう。
購入した水草の中に、昆布に似た粘りと旨味を持つものがあった。
この水草で魚の切り身を挟み、一晩置くことで、水分を適度に抜き、旨味を凝縮させることができるはずだ。
次に、水草。
これも数種類ある。昆布に似たものは、乾燥させて出汁を取るのに使えそうだ。別の、細くてシャキシャキとした食感の水草は、おひたしや和え物に良いかもしれない。茹でて、自作の醤油もどきと、これも持参した柑橘系の果汁で和えてみる。
調理を進める中で、私はこの町の住民たちが、湖の幸を活かしきれていない現状を改めて感じた。
彼らは、獲れなくなった魚を嘆くだけで、残された資源を工夫して美味しく食べるという発想に乏しいようだ。
だが、その一方で、魚を燻製にしたり、塩漬けにして干したりといった、素朴な保存の知恵は持っているらしい。これは、アッシュウッド村とはまた異なる食文化の断片だ。




