第14章7節: 町の活気と名物料理(の不在)
シルヴァミルの町を歩いてみて、最初に気づいたのは、やはり活気のなさだった。
湖畔の町ならば、新鮮な魚介を扱う市場や、それを食べさせる食堂などが賑わっているはずだ。しかし、市場は閑散としており、並べられている魚も種類が少なく、鮮度もあまり良くないように見える。食堂らしき店も数軒あるが、客入りはまばらで、提供されている料理も、アッシュウッド村で見たような、焼いただけ、あるいは茹でただけの単純なものがほとんどだった。
「この町、名物料理とかないのかしら?」
アリアが不思議そうに呟く。
「これだけ大きな湖があって、お魚がたくさん獲れるはずなのにねぇ」
リリアも同感のようだ。
そもそも料理という概念の薄いこの世界だ。
もともと名物料理、というものが存在していなかった可能性も高い。
私は宿屋の主人に、町の食事情について尋ねてみた。
「へえ、お嬢様方。確かに、昔はこの湖で獲れる『銀マス』を使った料理が名物だったんですがねぇ……。ここ数年、めっきり獲れなくなっちまって。他の魚も、なんだか味が落ちたとか、すぐに傷んじまうとかで……。今じゃあ、まともな魚料理を出す店も減っちまいましたよ」
なるほど、『銀マス』を使った名物料理は存在したのか。
場所によって料理に対する指向、スタンスが違うのかもしれない。
これはまたあとで研究すべき課題だな。
さて、不漁と魚の質の低下。
これが、住民の活力低下とどう結びついているのか。
単なる栄養不足か、それとも別の要因があるのか。
私は、市場で唯一売られていた、痩せた小さな「銀マス」を数匹と、湖で採れるという水草をいくつか購入した。これらを分析し、調理してみることで、何か手がかりが見つかるかもしれない。
「ハルカお姉さま、そのお魚で、また美味しいお料理を作ってくださるのですか?」
アリアが期待に満ちた目で私を見上げる。
「……まあ、実験のついでにな」
私は素っ気なく答えながらも、この貧相な魚をどう調理すれば美味しくなるか、頭の中でレシピを組み立て始めていた。




