第14章3節: 出発前の小さな攻防
リリアとアリアの間に挟まれ、私は深いため息をついた。
シルヴァミルへの調査旅行が、出発前からこんなに騒がしくなるとは予想外だった。
「まずリリア、君の気持ちは嬉しいが、今回の調査は遊びではない。危険も伴うかもしれん」
「分かってるよ! だからこそ、あたしが一緒に行った方がいいの! ハルカさん、森のことならあたしの方が詳しいでしょ?」
リリアはアリアをチラリと見て、対抗心を燃やす。
「お言葉ですが、ハルカお姉さまの知的なお話相手は、村娘のあなたより、わたくしの方がふさわしいと思いますけれど?」
アリアも負けじと言い返す。
二人の少女は、私を挟んで睨み合っている。
まるで、あたしのお姉様、あたしのお姉様と、私が何か所有物であるかのような言い草だ。
「……私は誰の所有物でもないぞ」
思わず本音が漏れたが、二人は聞いているのかいないのか。
グレイアムが困ったように口を挟んだ。
「リリアさんと仰いましたかな。お気持ちは分かりますが、今回の旅は辺境伯家からの正式な依頼であり、アリアお嬢様の同行も、辺境伯ご自身の許可を得ております。部外者の方を安易にお連れするわけには……」
「部外者ですって!? あたしはハルカさんの最初の友達よ! アリアさんよりずっと前からハルカさんのこと知ってるんだから!」
リリアの主張は、もはや論理ではなく感情論だ。
だが、その必死な様子に、私もアリアも、そしてグレイアムも、少しだけ気圧された。
最終的に、ボルガンも加わっての話し合い(というより、リリアの熱意に皆が根負けした形)の末、リリアも「ハルカの助手兼護衛(?)」という名目で、シルヴァミルへの旅に同行することが、半ば強引に決定してしまった。
アリアは不満そうに頬を膨らませ、リリアは得意げに胸を張る。
私はただ、これから始まるであろう賑やかすぎる旅路を思い、再び深いため息をつくしかなかった。
やれやれ、だ。




