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天使のシャボン玉

作者: 諏訪 惠
掲載日:2026/02/26

シャボン玉が好きな女の子と、旅に出た男の子。

女の子の思いを乗せて、シャボン玉はどこまで届く。

女の子と男の子と小さな小さな天使たちの、小さなお話。

1.

 赤い屋根の上で、一人の女の子がシャボン玉であそんでいました。

 空は青く、女の子の長いかみが風になびく日のことです。おやつの時間をすぎると、女の子はシャボンえきの入れものとストローだけをもって、一人でやねにのぼってきたのです。

 屋根の上からは、もっと高いたてものの窓や、通りを走る車なんかがよく見えます。女の子はうれしくなりました。

 大きく息をすってストローを吹くと、ストローの先から小さなシャボン玉が次々ととび出して、風の中にちっていきます。シャボン玉の中では、にじの光がくるくるとまわっていて、まるで宇宙にうかぶちいさな星のようです。

 女の子から生まれたまあるい星は、お日さまにあたためられながら、地球をかける風とおなじはやさで四方へ広がり、やがてパチンとはじけます。

 さんぽをしていた犬のはなの先でシャボン玉がはじけて、犬は目をパチクリさせました。それを見ていたかい主が、笑って女の子に手をふりました。


2.

 女の子には大好きな男の子がいました。

 ちゃ色のかみとふかい色の目がきれいな、外国からきた男の子です。女の子と男の子はとてもなかよしで、二人はいつもいっしょでした。

 ある日、男の子はたびに出ました。女の子は泣きましたが、それは決まっていたことなので、どうしようもありませんでした。

 男の子は大きくならなくてはいけません。そのためのたびでした。女の子はなんども手がみを出しましたが、へんじがくることはありません。たまにゆめの中で会えると、女の子はうれしくてたまりませんでした。

「かなしいきもち、バイバイ」

「さびしいきもち、バイバイ」

こころの中で、女の子はシャボン玉にあいさつをします。

 女の子が息を吹き込んだシャボン玉には、女の子のきもちがとじこめられていました。 なんどもなんども、女の子はストローを吹きました。シャボン玉が男の子に届くことはありませんでしたが、それでよいのです。

 やがてシャボンえきの入れものがからになるころ、女の子のなみだもいつの間にかとまっていました。丸い頬にはなみだのあとがのこっていますが、その目はまっすぐに、はるか遠くのちへいせんを見つめています。

 女の子の長いかみが風になびいていました。


3.

 その日の夜、女の子はふしぎなゆめをみました。

 ひるまにとばしたシャボン玉の上に、小さな天使がのっているゆめです。

 一つ一つのシャボン玉から、天使たちはニコニコと手をふっています。風にはじけたはずのシャボン玉は、天使たちののり物になって、はるか空の向こうへとのぼっていきました。

 高く、高く、空の青色にすい込まれたとき、シャボン玉はなないろの光になって、せかいじゅうにふりそそいだのです。

 そのしゅんかん、せかいはそれまでよりもずっとうつくしくしくかがやきました。女の子の灰色の気持ちは、女の子のむねのずっとおくではあんなにきれいな色だったのだと、女の子は気がつきました。

 それが本当の女の子なのです。

 天使たちはそれをしっていて、女の子のシャボン玉を空に届けてくれたのです。

 それからしばらくして、女の子に一まいの手がみが届きました。

 でんしょばとがクルルとないて、もうすぐあの子が帰ってくるよと知らせました。


小さな女の子と小さな男の子は、少しだけ大人になって再会する。

伝書鳩のお知らせです。

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