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11話 土下座と吸血鬼


 「お疲れ様でございます、アリスベル様。本日は私どもの手伝いなぞに参加してくださり誠にありがとうございました」


 そう言って、教科書に載りそうなくらい綺麗な土下座をしているのはモモだ。隣では圧倒的な力量差に恐れをなしたのか、顔を真っ青にしたクラリスが正座している。


 「…そんなに畏まらんでも良い、こちらから頼んだ事じゃからな」


 その声にモモが恐る恐る顔を上げ、クラリスは少しホッとした表情になった。


 「それにお前らはグラクの友なのじゃろう?それなら、此奴と仲良くしてやってもらってることに感謝せねばならん位じゃ」


 お前は俺のお母さんか。そう思いながら、俺はモモの隣で正座を崩した。


 「なんか釈然としないけどそういう事だからさ、ちょっとビビりすぎだったな!」


 「君には言われたくないな……しかし、そうだね。ボクとしたことが、強大すぎる力に恐れて本質的なものが見えてなかったかもしれない」


 「そうだな…確かに、さっきはビビりすぎてアタシらしくなかった。まぁとりま、依頼の手助けしてくれたことに感謝しとくぜ」


 アリスベルの言葉によって立ち直ったらしい2人は、地べたから立ち上がり笑みを浮かべた。


 「しっかし……これどうするよ、確か嬢ちゃんは結構なお偉いさんなんだろ?こんなん報告したら言及は避けられねぇと思うけど…そこら辺は大丈夫なのかよ?」


 「「あ…」」


 それを聞いた俺とアリスベルは、お互いに目を合わせる。……どう考えても、そんな事になった日には吸血鬼ということがバレるだろう。そしてラズログトさんよろしく、発狂する人間が出ないとは言い切れない。


 「………作戦会議ッ!!!」


 俺は声高くそう叫んだ。







 「成程、つまり私達がこの町を出るまでここに滞在してくれるという訳じゃな」


 会議の結論としては、俺とアリスベルが町を出ることになり。それまで報告を遅らせるために、モモとクラリスがこの集落の近くに止まるということになった。


 「だけど…良いのか?ここらで滞在するって事は野宿になるだろ?俺達のせいでそんなことをさせるってのもちょっと………」


 「構わねぇさ、どっちにしろここらで寝泊まりすんのは決まってた事だしな。それに嬢ちゃんがゴブリン共を刈り尽くしてくれたお陰で仕事も無くなったしよ、休暇だと思って羽を伸ばしてのびのびと楽しむぜ」


 「クラリスの言う通り、別にボク等がここに滞在する事に不満は無いんだよ。だからゆっくり別れの言葉や旅の準備でもすると良いさ、ただ3日か4日したら街に戻るつもりだから…あまりゆっくりし過ぎるのはオススメしないがね」


 2人の冒険者は何でも無いようにそう言い、ケラケラと笑う。どうやら、休暇を楽しむというのはあながち嘘では無いようだ。


 「それで…お二人さんはどこに行くんだい?中央都市にでも行くつもりかな?」


 「いや、この近くにあるソラタナの森にでも行こうと思っておる」


 それを聞いたモモとクラリスは顔を見合わせて、少し懐かしそうな顔をした。誰か知り合いでも住んでいるんだろうか?


 「それならメリスっつう冒険者を訪ねるといいぜ。結構稼いでるし親切な性格してっから快く泊めてくれんだろうよ」


 「そうだね、それじゃあボクから手紙を書いておこう。実はその人というのはボク等の師匠でね……住んでる距離はそんなに離れてないんだけど、むしろそのせいでこういう時くらいにしか連絡を取れないんだ」


 そうしてモモは懐から出した紙にササっとペンを走らせ、封筒に入れたものを俺に手渡す。


 「地図は………まぁ要らないだろう。あの人の家は丘の上にあるし、目立つ見た目をしているからね」


 さて、話はまとまった。正直ここでお別れというのは寂しいが、別に今生の別れというわけでも無いのだしまたいつか会えるだろう。


 「それじゃあ、俺達はもうそろそろ町に戻ろうかな。準備も色々かかりそうだからね」


 「そうかい…それじゃあお元気で。それと、野宿に必要そうなものをリストにしておいたから使うと良いよ」


 「助かる。色々と世話になったの」


 「こちらこそ、良いもん見せてもらったぜ。そんじゃあ元気でな!ギルドには通りがかりのワイバーンかなんかのせいだって説明しとくからよ?」


 別れを惜しみ、しかしお互いに次の再会を楽しみにして別々の道へゆく。こういったものも旅の醍醐味なのだろう、異世界に来てから碌な目に合わなかったが、こんな経験は日本じゃまず得られない。

 騒がしく、お節介だが、とても気の良い冒険者達に手を振り見えなくなるまで続ける。


 「………旅かぁ、初めての経験だな」


 「なんじゃ、怖いのか?」


 「まぁ正直ね……でも、こんな出会いがあるんならそう悪いものでもなさそうだ」


 アリスベルはその解答に満足したように、クスクスと小さな口を鳴らした。


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