第5話 - 崩れる石積みと見えざる悪意
※この小説はAI生成されたものです。
見切り発車なので、修正する可能性が高いです。
今日も、城壁の上を走る。
足の裏から伝わる石の硬さ。肺を満たす冷たい空気。
心臓が規則正しくリズムを刻んでいる。
苦しいけれど、足は止まらない。前に進む力が、体の中から湧いてくるみたいだ。
いつもの場所が見えてきた。
城壁の一部が崩れて、四角い石材が積み上げられている場所。
私はスピードを緩めて、その石積みに近づいた。
手頃な高さの石に腰を下ろす。
大きく息を吐くと、白い霧になって空に溶けていった。
額の汗を袖で拭う。
ここから見る空は広くて、静かだ。
誰もいない。私だけの場所。
筋肉の心地よい張りが、私が生きていることを教えてくれる。
平和な朝だった。
ふと、視界が暗くなった。
雲が太陽を隠したのかと思った。
でも、違った。
石積みの影から、何かが伸びてきた。
太い、丸太のような腕。
それが私の体を鷲掴みにした。
「え?」
声を出す間もなかった。
抵抗なんてできなかった。
圧倒的な力。巨大な岩に挟まれたみたいに、身動きが取れない。
私の体は、小石みたいに軽々と持ち上げられた。
視界が回る。
空と地面が逆さまになる。
体が宙に浮いた。
崩れた城壁の隙間へ向かって、私は投げ捨てられた。
世界がスローモーションになったように感じた。
重力が消え、内臓が浮き上がるような不快な感覚。
視界の端で、見慣れた城壁の石積みがぐんぐんと遠ざかっていく。
空の青さが目に痛いほど鮮やかで、それがぐるりと回転して、薄暗い地面と入れ替わった。
風が耳元で轟音を立てている。
ヒュウウウウ、という音が、私の悲鳴の代わりみたいに響いていた。
高い。あまりにも高い。
ここから落ちればどうなるか、考えるまでもない。
助かるはずがない。
怖い、と思う暇さえなかった。
ただ、迫りくる硬い石畳のディテールが、恐ろしいほど鮮明に見えた。
石の継ぎ目に生えた苔。誰かが捨てたゴミ。黒ずんだシミ。
それが私の最期の景色になるのだと、どこか他人事のように理解した。
そして、世界が叩きつけられた。
グシャリ。
耳障りな音が、自分の体の内側から響いた。
熟れた果実を高いところから落としたような、湿った破壊音。
背中から、全身の骨という骨が粉々に砕け散る感触。
肺が潰れ、空気が強制的に吐き出される。
熱い液体が喉の奥から逆流して、口の中を鉄の味で満たした。
痛みは、遅れてやってきた。
熱い。痛いなんて言葉じゃ足りない。
全身を焼けた鉄串で貫かれたような、脳髄を直接揺さぶるような激痛。
指先一つ動かせない。声も出ない。
視界が急速に赤く染まり、そして黒く塗りつぶされていく。
寒い。
あんなに熱かった痛みが、急速に冷えていく。
意識が泥の中に沈んでいく。
ああ、私はこの冷たさを知っている。
そう思った瞬間、プツリと糸が切れるように、思考が途絶えた。
――パチリ。
目が覚めた。
まるで、深い眠りからふっと意識が浮上するように。
私は石畳の上に横たわっていた。
静かだ。誰もいない。
体を起こす。
呼吸が荒い。心臓が早鐘を打っている。指先が震えている。
さっきまでの痛み、体が潰れたあの恐ろしい感触が、まだ肌に残っている。
けれど、どこも痛くなかった。
自分の体を触ってみる。骨も折れていない。血も出ていない。
見上げると、遥か高いところに城壁の縁が見えた。あそこから落ちて、助かるはずがない。
絶対に死んだと思った。
なのに、私は生きている。
恐怖で歯がカチカチと鳴る。体はまだ震えている。
さっきまでの死の感触が、まだ全身にこびりついているからだ。
でも、手足は問題なく動く。痛み一つない。
助かった? どうして?
混乱する頭で、私は必死に直前のことを思い出そうとした。
……投げられたんだ。
記憶が鮮明に蘇る。
石積みの影から伸びてきた、あの太い腕。
明確な意志を持って、私をここへ投げ捨てたんだ。
誰かが私を殺そうとした。
そして、私は死ななかった。
その事実だけが、重たい石のように胸に残った。
ふと、周囲を見渡す。
薄暗い路地。湿った石畳の匂い。
見上げれば、灰色の高い壁が空を切り取っている。
ここは、私がいつも走っている城壁の真下だ。表通りからは外れた、誰も通らない裏路地。
静かすぎる。
自分の呼吸音だけが、やけに大きく響く。
耳を澄ますと、遠くから微かに街の喧騒が聞こえた。
あっちに行けば、人がいる。この冷たい影から逃げられる。
私は震える手で、服についた砂埃をパンパンと払った。
そうでもしていないと、また足がすくんでしまいそうだったから。
一歩、足を踏み出す。
私は逃げるように歩き出した。背後にある暗い石積みと、見えない悪意から遠ざかるように。
早く、光のある場所へ。人のいるところへ行きたかった。
カクヨムにも投稿しています。
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