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たしかでない世界、揺らぐ光(仮)  作者: siouni


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第4話 - 石積みの休息と戦士の型

※この小説はAI生成されたものです。

見切り発車なので、修正する可能性が高いです。

 窓の外が白み始めるよりも早く、目が覚めた。

 体の中に時計があるみたいに、決まった時間に意識が浮上する。

 まだ薄暗い部屋の中で、音を立てないようにベッドから抜け出した。

 麻の服に着替えて、靴紐をしっかりと結ぶ。

 冷たい空気を胸いっぱいに吸い込むと、頭の中がすっきりと澄み渡っていく。


 訓練場に行くと、マーサは既にそこにいた。

 腕を組んで静かに立っている姿は、まるで岩山のような安定感があった。


「おはようございます」

「……時間は守れるようだな」


 マーサは私を見下ろして、小さく頷いた。

 怒っているわけじゃなさそうだ。


「いいか、今日からやるのは『戦士の体』を作るための基礎だ」


 マーサの声は低く、よく響く。


「剣を振り回すのはその後だ。まずは走って、止まって、また走れる体を作る。怪我をしないための体だ。壊れたら元も子もないからな」


 精神論ではなく、道具の手入れをするような口ぶりだった。

 私は黙って頷いた。

 難しい理屈はわからないけれど、マーサの言うことには従うべきだという予感があった。


「ついてきな。まずは街の外周を走るぞ」


 マーサが走り出す。

 その巨体が、驚くほど軽やかに地面を蹴った。

 私も慌ててその後を追った。


 街を囲む城壁の上には、見張りのための通路がある。

 私たちはそこを走った。

 朝日が昇り始め、街が黄金色に染まっていく。

 左手には、まだ眠っている街並み。右手には、どこまでも続く荒野。

 かつて私が歩いてきた、鉄と瓦礫の世界。


 風が頬を叩く。

 息が切れる。肺が熱くなる。

 けれど、足は重くなかった。

 地面を蹴るたびに、体の中のバネが弾むような感覚がある。

 マーサの背中は遠くならず、かといって近くもならず、一定の距離を保っていた。

 苦しいけれど、辛くはない。

 むしろ、体中の血が巡っていく感覚が心地よかった。


 しばらく走ったところで、マーサが足を止めた。

 城壁の通路が少し広くなっている場所だ。

 内側の壁の一部が崩れていて、修繕用なのか、四角い石材が無造作に積み上げられている。


「ここがちょうど中間地点だ。少し休め」


 マーサが短く手で石材を示した。

 私は言われた通り、手近な石に腰を下ろした。

 石はひんやりとしていて、火照った体に気持ちいい。

 大きく息を吐いて、呼吸を整える。心臓の音が、ドクドクと耳の奥で鳴っている。


「……この壁も、古くなったな」


 マーサは崩れた壁の断面を見上げながら、独り言のように呟いた。

 その横顔は、いつもの厳しい表情とは違って、少しだけ遠くを見ているようだった。

 私は何も言わず、ただ風に吹かれていた。

 ここから見る空は広くて、高い。

 特別なことは何もない場所だけれど、不思議と落ち着く場所だった。


 休憩を終えると、また走り出した。

 訓練場に戻る頃には、すっかり日が昇っていた。


「次は型だ」


 休む間もなく、技術指導が始まった。

 渡されたのは木剣だ。ずっしりとした重みがある。


「足は肩幅。膝を少し曲げろ。剣先は相手の喉元」


 マーサの指示に合わせて体を動かす。

 振る、戻す。振る、戻す。

 単純な動作の繰り返し。

 少しでも重心がブレたり、剣先が下がったりすると、すぐにマーサの鋭い声が飛んでくる。


「違う! 肘が浮いてる!」

「足裏全体で地面を掴め!」


 声は厳しいけれど、それはただの感情的な怒りではないことがわかった。

 私の動きのどこが悪いのか、どうすれば直るのかを、短く的確に教えてくれている。

 言われた通りに修正すると、剣が軽く感じるようになった。


 私は無心で木剣を振り続けた。

 頭の中を空っぽにして、体の声だけを聞く。

 筋肉の動き、骨の重なり、重心の移動。

 余計なことを考えずに、ただ体を動かすことに没頭する。

 それは、パズルのピースがカチリとはまるような、不思議な快感だった。

 頭の中が静かになっていく。ただ、自分の体がここにあるという、確かな手応えだけがあった。


 数日が過ぎた。

 早朝のランニングと、石積みでの休憩。そして、ひたすら繰り返される型の稽古。

 それが私の新しい日常になった。


 夜、食堂で夕食を食べていると、サラが心配そうに顔を覗き込んできた。


「アステル、大丈夫? 毎日すごく大変そうだけど……辛くない?」


 私はスプーンを止めて、自分の手を見つめた。

 手のひらには、木剣を振ってできた豆ができ始めている。体中が筋肉痛で軋んでいる。

 けれど、嫌な痛みじゃなかった。

 今日一日を、確かに生きたという証のような痛み。


「ううん、平気」


 私は首を横に振った。

 強がりでも嘘でもなかった。


「体を動かしていると、すごく自然な感じがするの。……それに、楽しいかも」


「そっか。アステルがそう言うなら、よかった」


 サラはほっとしたように笑った。


 ベッドに入ると、すぐに眠気が襲ってきた。

 泥のように重い眠りではなく、温かい波に揺られるような穏やかな眠り。

 明日もまた、あの石積みで風に吹かれよう。

 そう思いながら、私は目を閉じた。

カクヨムにも投稿しています。

https://kakuyomu.jp/works/822139841734682933


あいぺんにも投稿しています。

https://aipen.jp/novel/6970b53fd67b8c01a2df4703

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