第3話 - 若枝の根と二つの道
※この小説はAI生成されたものです。
見切り発車なので、修正する可能性が高いです。
硬い感触が背中にあった。
薄い毛布を押しのけて目を開ける。知らない天井。古びた木の匂いと、微かな埃の匂いがする。
体を起こすと、視界の端で何かが動いた。
「あ、おはよう。よく眠れた?」
覗き込んできたのは、私と同じくらいの年頃の少女だった。
彼女の屈託のない笑顔に、私は少しだけ身を引いてしまう。けれど、彼女からは嫌な感じがしない。敵意がないことは、なんとなくわかった。
「ここはどこ?」
掠れた声で尋ねると、少女はベッドの端に腰掛けながら答えた。
「『若枝』の女子寮だよ。昨日、マダム・ロージーに連れてこられたでしょ? 私はサラ。よろしくね」
そうだった。私は昨日、あの大きな壁の街に辿り着いて、それから……。
記憶がまだ、霧の中にあるみたいにぼんやりしている。
「わからないことがあったら何でも聞いてね」
サラはそう言って、私の着替えを手伝ってくれた。
支給された服は、少しごわごわした麻の感触がした。袖を通すと、ようやく自分がここにいるという実感が湧いてくる。
「さ、行こう。まずは朝ご飯を食べて、それからリリアさんのところで検査だから」
サラに手を引かれて部屋を出る。
廊下には、私と同じくらいの年頃や、もっと小さな少女たちが何人もいた。すれ違いざまに向けられる視線に、思わず肩が縮こまる。
何をされるわけでもないのに、知らない人が近くにいるだけで、心臓が早鐘を打つ。私はサラの背中に隠れるようにして歩いた。
食堂に着くと、サラは「自分の食器は自分で片付けること」「出されたものは残さないこと」といったここのルールを教えてくれた。
サラが持ってきてくれたスープは薄味だったけれど、温かくて美味しかった。
簡単な食事を済ませた後、私たちは保健室へと向かった。
辿り着いたのは、清潔な匂いのする部屋だった。
薬品と、干した草のような香りが混じっている。
「リリアさん、連れてきました!」
「あら、おはようサラ。ありがとう」
部屋の奥から、白衣を着た女性が振り返った。リリアと呼ばれたその人は、とても穏やかな目をしていた。
「検査が終わったら、お昼ご飯に案内するね。またあとで!」
サラはそう言い残して、パタパタと走っていってしまった。
残された私は、リリアの前に立つ。彼女は優しく微笑んで、椅子を勧めてくれた。
「怖がらなくていいわよ。痛いことはしないから」
リリアの手は温かかった。
彼女はまず、私の顔を覗き込みながら優しく尋ねてきた。
「貴方、記憶がないって聞いたけれど、自分の名前も思い出せない?」
私は小さく頷いた。名前も、どこから来たのかも、何もわからない。
リリアは少しだけ悲しそうな顔をしたが、すぐに温かい微笑みに戻った。
「そう。辛いことを聞いてごめんなさいね。焦らなくていいのよ」
「でも、名前がないと困るでしょう? 仮の名前でもいいから、決めておきましょうか」
リリアはそう言って、棚から一冊の本を取り出した。
「これは薬草図鑑よ。この中から、貴方が気に入った名前を選んでみない?」
彼女の提案に、私はこくりと頷いた。
リリアがページを開いて見せてくれる。私の目は、あるページで止まった。小さな星のような形をした花。
「……これ」
私が指差すと、リリアは嬉しそうに頷いた。
「『アステル』ね。星のような花。とてもいい名前だと思うわ。じゃあ、今日から貴方はアステルよ。よろしくね、アステル」
それから彼女は私の脈を測ったり、胸に耳を当てて呼吸の音を聞いたりと、時間をかけて丁寧に体を調べていく。
いくつかの検査を終え、それなりの時間が過ぎた頃、リリアは私に向き直った。
「それじゃあ、次は魔法の資質の検査をするわね」
リリアは私の両手を包み込むように握り、静かに目を閉じた。
部屋の中がしんと静まり返る。
私はじっと、彼女の顔を見つめていた。
しばらくして、リリアは目を開けた。
「……うん、終わりよ」
彼女は手元の紙に何かを書き込みながら、私に告げた。
「貴方には、魔法使いや治療士としての資質はないみたいね」
残念がる風でもなく彼女は言った。
「これで検査は全部終わりよ。お疲れ様」
リリアは優しく微笑むと、サラが迎えに来るまでここで待っているように言った。
私は椅子に座ったまま、ぼんやりと窓の外を眺めていた。空は高く、雲がゆっくりと流れていく。
しばらくすると、廊下からパタパタという足音が聞こえてきた。
「お待たせ! 終わった?」
勢いよく扉が開いて、サラが顔を出した。
リリアが頷くと、サラに声をかけた。
「ええ、終わったわよ。それとサラ、この子の名前だけど、仮の名前として『アステル』と呼ぶことにしたわ」
「アステル? へえ、可愛い名前! よろしくね、アステル」
サラは私の顔を見てにっこりと笑った。名前で呼ばれるのは少しこそばゆいけれど、悪い気はしなかった。
サラは私の手を取って立ち上がらせた。
「じゃあ、お昼ご飯に行こう!」
昼食の時間、食堂は子供たちの喧騒に包まれていた。
「検査、どうだった?」
パンを齧りながらサラが聞いてくる。私は首を横に振った。
「悪いところはなかった。でも、魔法の資質もなかった」
「そっか。まあ、ここの子供たちのほとんどはそういった資質を持ってないから、それが普通なんだよ」
サラはあっけらかんと言った。
周りを見渡すと、たくさんの子供たちが食事をしている。この子たちも、私と同じなんだと思うと、少しだけ肩の力が抜けた。
午後は、訓練場という場所に連れて行かれた。
土埃と汗、それに鉄錆の匂いが混じった空気が鼻をつく。そこに立っていたのは、寮長のマーサという大柄な女性だった。
「よし、次は戦士の適性を見るぞ」
マーサの声は低く、お腹の底に響くようだった。
最初に指さされたのは、足元にあるずっしりと重そうな砂袋だった。持ち上げてみろと言われ、私は恐る恐る手を伸ばして力を込める。
重い。でも、持ち上がらないほどじゃない。私はそれを抱え上げることができた。
次は、小石を的に投げるように言われた。
狙いを定めて、腕を振る。石は的の端を掠めたり、少し外れたりもしたが、いくつかは真ん中近くに当たった。
「ふん……次はこれだ」
マーサは訓練用の棒を私に持たせ、自分を叩いてみろと言った。
そんなこと、できるわけがない。私は躊躇して、弱々しく棒を振った。
「あんた相手に怪我なんてしない! 舐めてるのか!」
怒鳴り声に体が竦む。
マーサは呆れたように息を吐くと、今度は拳を構えた。
「次はあたしがいくぞ。当てる寸前で止めてやるから、目を開けて見てろ」
次の瞬間、マーサが拳を振り上げた。寸止めだとわかっていても、体が勝手に反応した。
私はその場にしゃがみ込み、頭を抱えて震えた。怖い。叩かれる。
「敵の前で目を塞ぐな! 死にたいのか!」
再び怒号が飛ぶ。私は涙目で顔を上げた。
マーサは私を見下ろしていたが、その目は呆れているというより、何かを値踏みするようだった。
「筋力も、物を投げる勘も、同年代の女子にしちゃ上出来だ。平均よりはずっといい」
そう言われて、私は自分の手を見つめた。あの重い袋も、石投げも、私にとってはただ必死にやっただけのことだった。でも、それは他の子よりも「できている」ことだったらしい。自分にそんな力があるなんて、思いもしなかった。
「度胸はねえが、素質はある。気弱なのは慣れればどうにでもなるさ」
夕食の後、私は部屋でサラに午後のことを話した。
「すごい! アステルには戦士の才能があるんだね!」
私がマーサに言われたことを伝えると、サラは自分のことのように目を輝かせて喜んでくれた。
「戦士の才能?」
「そう。ここの『若枝』からはね、才能に合わせて色々な道があるんだよ」
サラは指を折りながら教えてくれた。
治療士の才能があれば教会の学校へ。魔法使いの才能があればギルドの専門施設へ。
そして、戦士の才能があればギルドで訓練を受けて、冒険者になるか、騎士団の試験を受けることもできるらしい。
それ以外の子供たちは、街の職人や商人、ギルドの職員になることが多いそうだ。
「私はね、治療士の素質があるから、今度教会に行くことになってるんだ」
「教会……」
「うん。だからアステルとは違う場所になっちゃうけど、アステルにも道が見つかって本当によかった」
サラの笑顔を見て、私は少しだけほっとした。
私とサラは違う道を行くことになるのかもしれない。でも、彼女がこんなに喜んでくれるなら、それは悪いことではないのだと思えた。
夜、ベッドの中で今日一日のことを思い返す。
私には魔法はない。けれど、マーサが認めてくれた、戦士としての素質がある。
この体があれば、明日も生きていけるかもしれない。そんな微かな期待を抱きながら、私は眠りについた。
カクヨムにも投稿しています。
https://kakuyomu.jp/works/822139841734682933
あいぺんにも投稿しています。
https://aipen.jp/novel/69589b8e39126b5149ff3540




