第2話 - 城壁の影と名もなき若枝
※AI生成小説です。
見切り発車なので、修正する可能性が高いです。
(2026/01/03: 字下げを統一、パートの数字を削除しました。)
## 1
壁は、とても大きかった。
首が痛くなるくらい見上げても、てっぺんが見えない。
赤茶色の荒野の向こうに、その壁はずっと続いていて、まるで世界をそこで区切っているみたいだった。
私は、その壁にある大きな門の前に立っていた。
門の周りには、槍を持った人たちが立っている。鉄の帽子を被って、強そうな顔をしている。
「おい! そこのお前!」
門のところにいた一人が、私を見て大声を上げた。
すごい勢いで走ってくる。顔が引きつっていて、目が泳いでいる。
彼は私のすぐ近くまで来ると、槍を構えることも忘れて、私の後ろ――私が歩いてきた荒野の方をキョロキョロと見回した。
「大丈夫か! どこをやられた! 追手は!?」
男の人の声は震えていた。
私は首を傾げる。
後ろには誰もいない。あの黒い影みたいな獣たちは、もうずっと後ろに置いてきた。
男の人は、私の体を見て息を呑んだ。
視線の先にあるのは、私の服だ。
ボロボロに破れていて、元の色がわからないくらい真っ黒に汚れている。
触るとパリパリして、鉄みたいな匂いがする。
これは血だ。私の体から出た、たくさんの血。
「ひどい出血だ……! おい、衛生兵を呼べ! 担架だ!」
男の人が後ろに向かって叫ぶ。
なんでそんなに慌てているんだろう。
私は自分の腕を見た。血で汚れているけれど、動く。足も、ちゃんと立っている。
「怪我は、ない」
私がそう言うと、男の人は変な顔をした。
言葉の意味がわからなかったみたいに、口を半開きにして固まっている。
「……は? いや、でも、その血は……」
男の人は恐る恐る、私の腕に触れた。
破れた服の隙間から見える肌を、布で少し拭う。
黒い血の下から現れたのは、白い肌だった。
どこにも傷が見当たらない、無傷の肌。
「……おい、嘘だろ?」
男の人は、目を丸くして私を見た。
他の人たちも集まってきて、心配そうに私を見ている。
「怪我はないのか?」
「服だけ汚れたのか? それにしてもひどい血だぞ……」
みんなが口々に言っている。
私はただ、立っていた。
「……本当か? まあいい、とにかくギルドへ報告だ。こんなチビが一人で、しかもこの状態で……放っておけねえ」
男の人は、首を傾げながらも、私の背中をポンと押した。
その手は、大きくて温かかった。
## 2
連れて行かれたのは、壁の中にある大きな建物だった。
中はすごくうるさかった。
たくさんの人がいて、怒鳴り合ったり、笑ったりしている。
汗と、お酒と、埃の匂いが混ざった、ムッとするような熱気。
「はいはい、どいたどいた! 迷子の到着だよ!」
私を連れてきた男の人が、人混みをかき分けて進んでいく。
奥にあるカウンターには、派手な服を着たお婆さんが座っていた。
顔におしろいをたくさん塗っていて、手には派手な扇子を持っている。
「おやまあ。随分と派手な格好のお嬢ちゃんだこと」
お婆さんは私を見ると、扇子で口元を隠して目を細めた。
その目は、笑っているようで、笑っていなかった。
私の服の血と、顔や手足の傷のない肌を、交互に見ている。
値踏みするような、怖い目。
「名前は?」
「……わからない」
「どこから来たの?」
「……あっち」
私が指差すと、お婆さんは「ふん」と鼻を鳴らした。
「記憶なしかい。まあ、あそこは子供の散歩コースじゃないからねえ」
お婆さんは手元の紙に何かを書き殴ると、パンパンと手を叩いた。
「運がいい子だこと。……あるいは、運を全部使い果たしちまったか」
その言葉の意味は、私にはよくわからなかった。
## 3
「若枝」という場所に連れて行かれたのは、日が暮れる頃だった。
街の外れにある、古くて大きな建物。
「また拾ってきたのかい! ロージーの奴、うちはゴミ捨て場じゃないんだよ!」
出てきたのは、岩みたいに大きな女の人だった。マーサという名前らしい。
口は悪いけれど、手は温かかった。
彼女は私を大きなお風呂に入れてくれた。
お湯は熱くて、最初はびっくりしたけれど、すぐに気持ちよくなった。
こびりついていた黒い血が、お湯に溶けて流れていく。
体を洗ってもらうと、自分が少し軽くなった気がした。
「ったく、傷ひとつありゃしない。不思議なくらい何ともないねえ」
マーサさんは私の背中を流しながら、不思議そうに呟いた。
お風呂から上がると、温かいスープとパンをもらった。
味は薄かったけれど、体の中に染み渡るような感じがした。
清潔な服を着て、柔らかいベッドに横になる。
窓の外には、街の明かりがぽつぽつと見えた。
でも、ここは怖くない。
壁があって、屋根があって、人がいる。
私は目を閉じた。
泥のように深い眠りが、すぐに私を飲み込んでいった。
## 4
夜の帳が下りたギルドマスター室。
紫煙が燻る部屋で、隻眼の巨漢、ヴァルガスは苦々しげに吐き捨てた。
「腐った商売だ」
机の上には、一枚の報告書が投げ出されている。
そこには、本日保護された身元不明の少女に関する記述があった。
発見場所は「砕けた背骨」の出口。衣服には致死量の出血痕。しかし、身体には外傷なし。
「状況から見て、間違いありませんわね」
ソファーに腰掛けたマダム・ロージーが、扇子を畳みながら低い声で言った。
「あの子は囮でしょう。商隊がモンスターを撒くために使う、生きた肉盾。……衣服の血の量からして、本来なら五体満足でいられるはずがありません」
「だが、あいつは生きている」
ヴァルガスは隻眼を細め、報告書を睨みつけた。
「記憶がない以上、どこの商隊がやったかは特定できん。証拠不十分だ。だが……」
彼は太い指で机を叩いた。
「囮を使って生き延びるような連中が、のうのうとこの街の門をくぐったということだ。そして、あんな小さなガキどもを、ボロ雑巾のように使い捨てた」
「ええ。本当に、胸糞が悪くなる話ですわ」
ロージーは扇子で口元を隠し、不快感を露わにした。
「ギルドとして、看過できることじゃねえな」
ヴァルガスは立ち上がり、窓の外、闇に沈む街を見下ろした。
「監査部に伝えておく。最近の商隊の出入り、少し注意して見ておくようにな。……確証がなけりゃ動けねえが、囮を使うような外道どもを、野放しにはしたくねえ」
その背中には、静かだが確かな怒りの炎が揺らめいていた。
カクヨムにも投稿しています。
https://kakuyomu.jp/works/822139841734682933
あいぺんにも投稿しています。
https://aipen.jp/novel/69589a3439126b5149fe783d




