第1話 - 虚ろな器と静かなる獣
※AI生成小説です。
見切り発車なので、修正する可能性が高いです。
(2026/01/03: 字下げを統一、パートの数字を削除、挿絵を追加しました。)
目が覚めた。
暗い水の底から、泡がぷくぷくと浮かんでいくような感じ。
目を開けると、そこは赤茶色の世界だった。
見渡す限り、錆びた鉄のゴミばかり。薄く光る空に突き刺さるような高い塔や、ひしゃげた鉄の板が、お墓みたいにたくさん並んでいる。
私は、大きな鉄の塊の陰に寄りかかるようにして座り込んでいた。
背中に当たる鉄の冷たさと、硬い感じ。
風が吹いている。乾いた、砂混じりの風だ。それが鉄の隙間を通り抜けて、ヒュウヒュウと寂しそうな音を立てている。
体を動かしてみる。
痛くない。どこもかしこも、驚くほど軽い。
けれど、自分の体を見てみると、ひどい有様だった。
着ている服はボロボロで、元の色がわからないほど汚れている。こびりついているのは、黒くなった乾いた液体。
血だ。
こんなに血が出ているのに、なんで私は生きているんだろう。
ううん、そもそも――私は誰?
思い出そうとしてみる。
けれど、何も思い出せない。
名前も、昔のことも。なんでこんな場所に一人でいるのかも。
全部が真っ白だった。頭の中にあったはずの本が、全部なくなってしまったみたいに。
記憶がない。
それがどういうことなのか、今の私にはよくわからなかった。
ただ、「記憶がない」っていう事実が、そこにあるだけ。
私はそれを、道端の石ころを見るみたいに、そのまま受け入れていた。
いつまでも座っているわけにはいかない。
なんとなくそう思って、私は立ち上がった。
足元がふらつくこともない。体はまるで、重さを忘れてしまったみたいに軽くて、スムーズに動く。
歩き出そうとした、その時だった。
風の音が変わった。
乾いた風の音に混じって、ズルズルと何かを引きずるような、湿った音が近づいてくる。
とっさに、鉄のゴミの陰に隠れた。
考えるよりも早く、体が動いていた。体が勝手に、あれに関わっちゃダメだ、って言っているみたいだった。
鉄板の隙間から、音の主を覗いてみる。
息を呑んだ。
現れたのは、影みたいな形のない群れだった。
形はぼんやりしていて、黒い霧が集まったようにも見える。けれど、そこには確かに怖い感じがあった。
お腹を空かせた獣の気配。
群れは、私が隠れているすぐ側を通り過ぎていく。
距離にして数メートル。見つかったら、逃げられない。
息を止めてやり過ごす。
こんなに近くに死にそうな気配があるのに、胸の鼓動は変わらなかった。
けれど、不思議なことに、あいつらは私の方を見ようともしなかった。
視線を感じない。
探している感じもしない。
まるでそこに、誰もいないみたいに。
あいつらにとって、私は道端の石や、錆びた鉄屑と同じ「背景」でしかないのかな。
群れが遠ざかっていく背中を見送りながら、私は不思議とそう確信していた。
あいつらは私に気づいていない。
そして、私にとっても、あいつらは怖くないんだって。
足は迷わなかった。
たくさんある瓦礫の道の中で、ただ一つ、「こっちだ」って感じる方向があった。
理由はない。
それでも、その予感は絶対だと思えた。
私は歩き出した。
錆びた鉄の墓場を、ただひたすらに。
どれくらいの時間を歩いただろう。
景色は変わらない。どこまで行っても、赤茶けた鉄と、乾いた土だけが続いている。
だんだん、足が重くなってきた。
息が上がって、胸が熱くなる。
ただ、疲れてきた。
私は近くの瓦礫の陰に座り込んで、体を休めた。
硬い地面に寝転がると、背中の痛みさえ気持ちよく感じる。
目を閉じて、息を整える。
すぐに意識が遠のいていく。深い眠りに落ちるように。
うとうとする中で、体の中に力が満ちてくるのがわかる。
まるで、空っぽになった器に、見えない何かが注ぎ込まれていくような感じ。
目が覚めると、すっかり力が戻っていた。また歩き出す。
疲れたら休んで、元気になったら歩く。
その繰り返し。
ただ歩くだけの時間だったけれど、嫌じゃなかった。
私はただ、見えない糸に引っ張られる人形みたいに、淡々と歩き続けた。
変化があったのは、何回目かの休憩の後だった。
景色の色が変わった。
視界いっぱいにあった赤茶けた鉄が減って、代わりに緑色が目につくようになる。
岩の隙間から生える草。捻じれた木々。
生きているものの気配が、死の世界に混じり始めていた。
そして、視界が開けた。
遠く、霞んだ地面の向こうに、大きな影が見えた。
自然のものじゃない。明らかに人の手で作られた、大きな壁だ。
あれが何なのか、私にはわからない。
けれど、それを見た瞬間、体中を突き抜けるような衝撃が走った。
あそこへ行かなければならない。
懐かしさじゃない。安心でもない。
もっと深い、引っ張られるような感じ。
私の体そのものが、あの場所を指している。
私は歩く速さを上げた。
迷いはもうない。
あの壁の向こうに、私が失った何かが――あるいは、私がこれから知るべき何かが待っている。
空っぽの私は、満たされるべき場所を求めて、また歩き出した。
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