サモハンキンポーになり果てた私の話
前回汚い話で読めないって言われたので思い出せる限りで同じテイストの黒歴史です
全年齢読めます
いっぱい食べる君が好きって小池徹平が歌うCMを知っていますか?
あれはデブには非常に良くないCMです
何故ならば太れば太るほど可愛いんだと曲解させてしまうから。
これは私がアメリカンビッグサイズデブだった頃のお話。
その当時の私は自分の事を少し太っているけどそれを差し引いても充分可愛い存在だと歪んだ認知を持っていました。
鏡に映るのはいつだって本田翼で石原さとみ、多部未華子になら勝てるとすら思っていました。
けど待てど暮らせどモテる気配がありません、高嶺の花かな? なーんてその当時の私は思っていたんですね
なーにが高嶺の花だよ貴乃花がよ。
なので当時の私は考えました。
どうしたら男にチヤホヤされてもてはやされるのかと。
私がやっているうたプリの世界を現実の物とするにはどうすればいいのかと。
そこでその当時の私は斜め上の発想を繰り広げます
そう、親しみやすいオシャレな格好だと!
当時私は170前半というタッパをもちあわせながら、目指していたのは儚げ美少女
地獄少女やローゼンメイデンに出てくるドールたちのようなあのお耽美なお姿。
だから当然着る服も黒を基調とした慎ましやかでゴシックチックな服装
それをまとった私の気分はローゼンメイデンの水銀燈そのもの。
ダークでお耽美、それでいて艶やかさもある
気分は既に魔性の女。
周りから聞こえてくるデブカラスとか葬式忍び込んで人食ってそうとか荒地の魔女を2、3発殴った感じとか神様の街で無銭飲食したからこんな姿になってるとかは全て嫉妬の言葉に聞こえていました。
そう、なぜならその当時の私は美しかったから。
けど庶民には触れがたい存在なのね、なんて謎の上から目線の私は、自分の姿のランクを親しみやすいものにしようとしたのです。
まずはこの黒く伸ばした長髪をバッサリ切って活発なスポーツ女子をアピールしましょ?と私は衝動的に部屋にあった工作バサミで髪をジョキジョキ切りました
当時の私はなんでも出来ると本気で思っていたのでこの行いすら愚行だとは気づきません。
そして切り終わった私の髪型は落ち武者もいいところ
え? 家で紛争あった? と聞かれてもおかしくないくらいの荒れよう
死に物狂いで敵軍に特攻かけるベトナムのゲリラ兵のような髪型。
さすがに当時の私でもマズいと、これはさすがに外に出れんと思いました。
まあけど謎にポジティブな当時の私は服装で誤魔化そうと、如何に布面積を減らして頭から意識をそらさせようかと画策するのです。
そして選びに選び抜かれた服装はなんとへそ出し短パンルック
デブのくせに? そう、デブのくせにあろうことかへそも太ももも全部出したのです。
しかもそういう用途で作られた服なんて当時は持っていないので、代用されたのは小学生の頃の服。
乳から下は全見えのボーダーのTシャツに、屈んだら爆音とともにはち切れそうな体操服のズボン。
客観的に見たらデブの浮浪者、よく言うなら格ゲーの投げキャラ、サムライスピリッツの腐れ外道。
その姿を当時の私は本気でセクシーだと思い込んでいました。
そしてあろうことかその姿のままで街をチャリで爆走、今の歳なら留置所1泊コースは免れない凶行に打って出たのです。
向かった先は街のQBカット、私が唯一知っている髪の毛を切る場所。
ここで髪の毛さえ何とかすれば私はエクセレント美少女になる!と
そんな夢を見ていたのです。
結果は見事なおかっぱ頭、キノコもびっくりなおかっぱ具合。
けどそんなのでへこたれる当時の私ではありません。
おかっぱ頭は選ばれし美人にしかできない髪型、ショートヘアーは美女のみが許される、その言葉だけが頭を渦巻いてました。
だから私は美しいんだと、選ばれた髪型にした美容師は見る目があると
なんなら私のメアドを教えて良い奴そうなら付き合ってもいいかななんて思っていたのです。
そして家に帰って母にこのセクシーな姿を披露してやろうと
家族仲最悪なウチのヒステリックマザーにエロスをぶつけて今後一切黙らせてやろうと
格の違いをアピールしようとしたのです。
「サモ・ハン・キンポーみたい」
知らん有名人の名前を言われて一瞬面食らいました
ですがその時のポジティブデブ略してボジデブな私は多分韓国とか中国の有名人だと曲解しました。
ユン・ソナとかビビアン・スーみたいなこと? と。
なので調べもしませんでした。
当時は家にパソコンもなければ全然ガラケーしか持っていない人間だったので。
ここまでなら幸せな誤解で終わるのですが、ここからが学生時代の私の真骨頂。
そう、翌日から学校で自分がサモ・ハン・キンポーであることを触れ回ったのです。
調べもせず
そこからはもう同年代に対するマウント大会。
「田中ちゃんってAKBのあの子に似てるよねー!! 私?私なんてサモ・ハン・キンポーだから羨ましいよ〜」
とか
「私って目鼻立ちしっかりしてる方だからさぁ、日本に似てる有名人いないんだよねー……。海外ならサモ・ハン・キンポーとかいるんだけどなぁ」とか 。
愚かですよね、愚かだと思います
だってこれを『お前らとはランクの違う美人ってこと』という嫌味とマウントを含めて吹聴してるのですから。
サモ・ハン・キンポーを知ってる人からはタダの触れずらい愚かなデブの自虐、担任からされた生暖かい目でのフォローが今この歳になって遅効性の毒のように効いてきます。
そして終わりの日は突然やってきます。
そう、それは体育祭
男は組体操をくみ上げ女はダンスを踊る陰キャには地獄のようなあの行事。
当時の学生ってクラスごとのハチマキを個性的に巻いたり、好きな有名人をオシャレに腕に書いてみたり、そんなことして目立とうとするんですよね。
ええ、そうですよ?私は書きました、腕に黒い油性ペンでデカデカと『サモ・ハン・キンポー』と。
当時の私は汗も滴る元気っ子で素敵なあたし。
だったんですけど、傍から見ればジェネリックサモ・ハン・キンポーが腕にサモ・ハン・キンポーと書いて息を荒らげながらドタドタと踊り走るただの喜劇。
そして体育祭も無事終わり、クラス会の打ち上げ
当時学生の私達に財力も無く、クラスでお菓子やジュースを持ち寄ってみんなで慎ましやかに教室でやるんですよ
みなさんもそんな感じでしたよね?
そんな中でクラスのとある女子力の高い女の子が記念にってある程度親交のある子にクッキーを作って渡してくれたんですよ。
かわいく包装されて星やハート、なんならその人の好きなキャラクターの切り抜きとか入れた大力作。
当然私はクッキーを食べたいし、その子ともまあ親交はあったのでズケズケと貰いに行ったんです。
するとその子、「机に……置いといたよ」なんて言うんですね?
みんなみたいに直接渡してくれればいいのに。
まあけどクッキー食べたさに机に取りに行きましたよ。
するとそこにあるのは何故かみんなとはテイストの違うチャイニーズチックな装飾の施された半透明の袋
中央には謎の小太りの男性が蝶ネクタイつけて包装越しにこっち見て微笑んでる姿。
イジメ……? いや、これはあの子なりのユーモア? なんて思いながらとりあえず家に持ちかえることにした私。
そしてそのままクッキーをリビングにおいて自室でモンハンをしてますと
「え?! サモ・ハン・キンポーのクッキー!? なにこれ?!」
と、母の声が聞こえてくるんですよ。
ん?クッキー?サモ・ハン・キンポー?と嫌な予感がした私はイャンクックをそっと放り出して、リビングへ向かいました。
リビングには母が居て、その目線の先にあるのは私が置いてたクッキー。
まさか?! いやそんなことは無い
あの小太り中年チャイニーズがサモ・ハン・キンポーなわけ! と
そう、それがサモ・ハン・キンポーでした。
その瞬間走馬灯のようにぐるぐる巡る私の発言。
「好きな芸能人?サモ・ハン・キンポーかな、私に似てて親近感〜」
「KーPOPとかよくわかんないけど、サモ・ハン・キンポーの曲ならよく聞くよ?」
「日本のサモ・ハン・キンポーかも。私って☆」
殺してくれと
本当に殺せよ私をと。
気づいてた人間こそ少ない物の気づいてる人間のあの可哀想なものを見る視線の意図に気づいた私はそこから3日学校を休みました。
けど、悲劇はまだ続いたのです。
あそこまで自分で会話の中にサブリミナルサモ・ハン・キンポーを練り込んでいたせいで、校内では私の名前よりサモ・ハン・キンポーという名前が知れ渡るクソインシデントの発生。
人の口にとは立てられないとはよく言ったものでそれは瞬く間に学年中に広がり、1週間も経てば私は学内公認サモ・ハン・キンポーになっていました。
クラスメイトに呼ばれる時も、先生に呼ばれる時も「サモ!」なんて呼ばれ私は二度と知らん有名人を自称するのは辞めようと、そう固く決意したのでした。
ちなみに余談ですが大学時代はさらに別ベクトルのやらかしをして、カナブンほいほいというあだ名が着いてしまったというのはまた気分が向いたら。
一応昨日の汚い話の贖罪で排泄物の出てきていない話を投下しておきますが、本当にもう二度と書きません。人の邪悪な歴史見るくらいなら夢と希望に溢れた私の連載作品を読んでください。ほんとにまじで
PS
尻から内臓出た話が日韓にランクインして少し虚しくなったけどランクインは嬉しいです。読んでくれてありがとうございます。
でも本当に読んでほしいのは連載作品であってこんな珍妙エッセイどうぞ目をそらして下さい