閑話 晩夏の父と娘の1日 -その続きの顛末-
その後の短いお話です。これって微グロ??
夕餉が終わり、団欒も落ち着き、皆がそろそろ寝支度を始めるころ。
ひとりアクティは、こそこそと自室の隅で「戦利品」を見つめていた。
――ミミズ。
釣りの帰りに採ってきたものだ。
「ふふふ……これはいたずらのそざいにぴったり!」
アクティはにやにやしながら思案する。
まずは定番の「お土産作戦」。
「はい、おみやげ!」と差し出した瞬間、サクラは手のひらを開いて――
「ひゃあああああああ!!!」屋敷中に響き渡る絶叫!
羽をバタバタさせて机に激突し、椅子に引っかかり、カーテンを巻き込み、ついにはゴロンと転げ落ちる。
アクティはその様子を見て、口元を隠しながら「……ふ、ふふふ、だいせいこう……」とほくそ笑む。
「つぎはどうしよ……」アクティの悪戯心は止まらない。
(そういえば、ミミズってねつさましにきくって、おかーさまがいってたな……のみたくはないけど……)
(あと、なにかをかけると「はれ」るんだっけ?……なにかがはれるの?)
頭をひねりながら、「こういうのはおとーさまにきいてみようかな」と呟くが、さすがにフリードにミミズを突きつけたら怒られる予感がしたので、却下。
母オデッセイにミミズを見せても「ふーん」で終わりそうだし……。
「やっぱりサクラちゃんか……いやいや、こんどはおじさまでもいいかな……」
悪戯の可能性を広げては、にやけ顔でひとり笑うアクティ。
しかし、運命は意外な形で彼女を裏切る。
脱ぎ捨てていた服のポケットから――
ずるり。
ずるずるり。
……ウニョウニョ。
「わあああああああ!!!」
最初に悲鳴を上げたのは、部屋にたまたま入ってきたセリカだった。
「な、なにこれ!? アクティ様! 部屋、ミミズだらけじゃないですか!!!」
普段は穏やかでおっとりしたセリカが、珍しく本気で大激怒。
飛び出したミミズたちは部屋中を這い、ベッドの下、机の横、果てはカーテンの裏にまで侵入。
アクティは「あ、あれ……?」と青ざめる。
完全にコントロール不能。
「だ、だいじょうぶ、これはかがくてきなじっけんで……」
必死に弁解しようとするも、セリカは容赦なく手を大きく振り回し、アクティを問い詰める。
そこへ母オデッセイが現れた。
部屋の惨状を一目見るなり、無言でこぶしを握る。
「お、おかーさま、これはちがうの――」
ごんっ!!
アクティの頭に落ちたのは、温かい母のゲンコツ。
「……はい、ごめんなさい」
小さく縮こまるアクティ。
翌日。
ヴェゼルは一部始終を聞き、呆れ顔でぼそりとつぶやく。
「こういうの、現代だと……なんて言うんだっけ……ああ、そうそう。「因果応報」ってやつか」
その横でルークスは涙を浮かべるほど笑い転げ、サクラはまだ「昨日のミミズショック」で羽を震わせていた。
こうしてアクティの大悪戯は、見事にブーメランとなって自分に返ってきたのだった。
あー、アクティの話はいくらでも書けますね。。
本来は前話で、止めておいた方が余韻があってよかったんでしょうけど。。




