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りんご一個分の収納。マジでどう使えと!? 〜辺境騎士爵に転生したので、なんとか無難な人生を…歩みたいなぁ〜  作者: 大童好嬉


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第59話 鑑定

投稿の順番を間違えると、、入れ替えが大変なんですね。。ほんの小一時間、58と59を間違えてました。今は変更済みです。

春も終わりに近づき、ホーネット村は緑が一層深まっていた。


ヴェゼルは早朝、オデッセイと共に村の農家を巡回していた。


土の香り、春の陽光、鳥のさえずり――どれも心地よく、まるで村全体が活気づいているかのようだった。田畑には今回導入した苗植えや肥料による効果が見事に現れ、耕作された土地は緑色の波のように揺れている。


毒芋改め、ウマイモ(命名:アクティ)も順調に芽を出し、白樺の樹液から発酵させた酒の発酵樽も順調な香りを放っていた。あとは、次回植えるときに輪作をしてみれば、一層効果がわかるだろう。


ヴェゼルの周囲を、例のサクラがひらひらと飛び回っている。


村民たちは不思議そうにその姿を見上げるが、誰も声をかけられない。サクラは勝ち誇った顔で、時折ヴェゼルの肩に止まったり、足元をくるくると回ったりしている。




農作業の最中、ヴェゼルはふと考え込んだ。


「石灰が欲しいな……。海が近ければ貝を焼いて畑に撒けるけど、この村では鶏もそんなに飼っていないしな。鉱山で掘り出すにしても、大規模になりすぎるし……」


彼は鍬を止め、じっと足元の土を見つめる。


「この土から、簡単に石灰を取り出せたらいいのになぁ」



畑で作業をしていたヴェゼルは、ふとサクラに問いかけた。


「ねぇ、サクラ……収納魔法で、特定の物質だけを取り出すって、できるのかな?」


サクラはぶんぶんと小さな羽を羽ばたかせながら、面倒くさそうに答える。


「うーん、ヴェゼルはこの前レベルアップしたっぽいし、できるんじゃない?」


かなり投げやりな返事。半信半疑のヴェゼルだったが、とりあえず試してみることにした。


彼は目の前の土をすくい、じっと見つめながら左手の収納箱に手をかざす。


(……土は、水分と空気、それからケイ素、アルミニウム、鉄、カルシウム……だったっけ……。よし、土の中から石灰だけを……!)


魔法を発動すると、箱の中に微量の白い粉がふわりと浮かび上がった。


「え、できた……?」


その瞬間、不思議な現象が起こった。土を見つめるだけで、その成分が頭の中に文字情報として表示されたのだ。


『重さ73g。無機鉱物(ケイ素、アルミニウム、鉄、カルシウム等)、有機物、水分と空気を含む。栄養素は窒素、リン、カリウムを含有。この土のpH値は5.4』


ヴェゼルはゾワリと背筋に震えを覚えた。――土の詳細な分析結果が、直接意識に飛び込んできたのだ。


「な、なにこれ……サクラ、僕、鑑定の力も手に入ったの?」


サクラは胸を張って飛び回る。


「ふふん、まあ教えてあげる。ヴェゼルが私と”つながった”からこそ、収納だけじゃなく鑑定も芽生えたのよ!」


ヴェゼルは驚きながらも、思わず笑みを浮かべた。


(これなら……作物の育成や肥料の調整に、大きな助けになるかも!)







ヴェゼルは額の汗を拭い、再び土を手に取った。


「よし……次は『金』を収納? してみよう」


左手に収納箱を持ち、右手は土に添えて意識を集中し、魔力を注ぎ込む。だが――何の反応もない。


「……だめか」


苦笑するヴェゼル。その土には、そもそも金の成分が含まれていなかったらしい。


肩越しに覗き込んでいたオデッセイが言った。


「無から有を作り出すことはできない……そこに存在しないものは収納できない。そういうことかしらね」


ヴェゼルは頷き、今度は地面に手を押し当てた。じわりと魔力を見渡す限りの地面に薄く流し込むと――頭の中に淡い光の文字列が浮かぶ。


《土壌成分:ケイ素、アルミニウム、鉄、カルシウム、微量の金》


「……あった!」ヴェゼルは息を呑む。「ほんのわずかだけど、金がある!」


全身の魔力を絞り出すように集中し、念じる。


「――金、収納!」


瞬間、地面が淡く光を放ち、ヴェゼルの体から魔力がごっそり吸い取られた。


「うっ……!」視界が揺らぎ、思わず膝を折る。


「ヴェゼル!」オデッセイが駆け寄る。


ヴェゼルはふらつきながらも箱を覗き込んだ。そこには、砂粒ほどの黄金色の欠片がひとつ、きらりと光っていた。


「……ほんの、ひとつまみ……」


オデッセイは目を見開き、低く呟く。


「これは……もはや収納ではないわ。物質の抽出……なのでは?」


ヴェゼルは荒い息を整えながら、ゆっくりと頷いた。


「サクラが言っていた通り、僕の力は……進化しているんだね」


サクラは宙を飛びながら胸を張る。


「でしょ? 私のおかげなんだから!」


だが、オデッセイの心は笑ってはいられなかった。


(これは……すごい力だわ。けれど、もし外に知られたら――)


その不安を打ち消すかのように、彼女は拳を握りしめた。






収納箱の中でかすかに輝く金の粒を見つめながら、オデッセイは深い溜息を吐いた。


「……これは、ただの収納では説明がつかないわね」


まだ肩で息をしているヴェゼルに近づき、彼の脈を確かめながら続ける。


「収納は本来、既に形を持つ物体を空間に移すだけの魔法。けれど今あなたが行ったのは――土という素材から、特定の成分を選び出した。これは『分解』であり『選別』。そしてそれを可能にする目……すなわち『鑑定』を授かったのかもしれないわね」


ヴェゼルは目を見開く。


「やっぱり……僕は鑑定を得たのか」


「ええ。さっきあなたが頭に浮かんだという土の成分表示、それが証拠ね。鑑定は対象を解析し、構成を理解する力。収納と組み合わせることで、あなたは『抽出』という新たな段階に至った」


その分析を口にしながらも、オデッセイの顔には次第に険しさが宿っていく。


「……けれどヴェゼル。これは危険な力よ」


「危険……?」


「考えてみて。簡単に鉄を抽出できれば、鉱山を掘らずに武器を量産できる。薬草から成分を抽出すれば、無尽蔵に薬を作れる。そして、もし金や銀を自在に取り出せるとなれば――」


言葉を聞くだけで、ヴェゼルの背筋が冷えた。


「……各国や教会が、絶対に放っておかない」


オデッセイはしばし黙り込み、迷うように唇をかんだ。


「……あまり言いたくはないのだけれど」と前置きをしてから、視線をそらす。


「錬金塔にいた頃、一度だけ――本当に一度だけ、禁忌とされた古文書を読んだことがあるの。その中に、収納の力を持つ者が“鑑定”を授かる例が記されていた……。でも、どの例にも、必ず『妖精の影』が寄り添っていたと書かれていたのよ」


そこで言葉を切り、オデッセイは不安げにヴェゼルを見やる。


「だから……もしかしたら、あなたがサクラちゃんと繋がったことで、普通では決して得られない進化を遂げたのかもしれないわ。……これは推測に過ぎないけれど」


声は小さく、まるでこの場の空気すら警戒するかのようだった。



視線を宙に泳がせると、妖精サクラはにやりと笑い、何も言わなかった。


「でも――この事実を外に漏らすわけにはいかないわね」


オデッセイの声は固く、決意を帯びていた。


「これは国や教会から見ると、その存続を揺るがす禁忌に等しいわ。ヴェゼル、軽々しくこの力を使っては駄目よ」


ヴェゼルは唇を結び、深く頷いた。


「……わかったよ。僕の力で誰かを危険に巻き込みたくない」


その答えを聞いて、オデッセイはようやくわずかに肩の力を抜いた。


「そうね……でも同時に、これは希望でもあるの。農業、医術、鍛冶。平和のために応用できれば、これ以上の力はないわ」


真剣な眼差しで告げる。


「ヴェゼル。あなたの力は世界を変える可能性を持ってしまった。その重さを理解して、慎重に歩みなさい」


サクラがくるりと宙返りして胸を張った。


「だから言ったでしょ? 私がついてる限り、ヴェゼルは特別なんだから!」


ヴェゼルは苦笑しながらも、静かに答える。


「……特別、か。なら、この力は……みんなを守るために使うよ」


箱の中で輝く金の粒は、まるで未来を照らす火種のように淡く光り続けていた。







もう、アクティを書くのが楽しくって楽しくって、、、、、、、

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悪ティ
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