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第377話 聖都がみえたけど

この話は本編とはあまり関係ないので飛ばしても全く影響はありません。

ただのヴェゼルの酒池肉林話です。。

この底冷えのする道中、フリードとエスパーダとルドルフの三人?は、御者席で終始無言だった。


話す気力がないわけではない。ただ、口を開けば寒気が喉から魂までさらっていきそうだったのもあるのだが、馬車の中の喧騒があまりにも……あまりにもだったので、三人ともただの雪像と化していたのだった。


ルドルフはというと、朝と休憩のたびにシャノンにじゃんけんを挑み『負けたほう、御者席!』と叫んで場所替えを要求する。


しかし、シャノンよりも体の大きなルドルフは、足じゃんけんの動きがわかりやすいのか、シャノンの目を誤魔化せずに全敗していた。


結局、馬車に入れてもらえず、休憩のたびに「ワォ……ン」と耳と尻尾をしょんぼり垂らしていた。


そんな凍える御者席とは対照的に、馬車の中は熱気に満ちていた。


笑い声、嬌声、そして時折混ざるヴェゼルのくぐもった悲鳴――寒さとは無縁、むしろ暑苦しいほどである。御者席の三人としては、いろいろな意味でつらかった。


やがて、ついに聖都の城門が遠くに見えてきた。


そして今日も当然のように、シャノンと同様にヴェゼルは巡回膝上抱っこ。


ヴェゼルが「いい加減に――」と言いかけた瞬間、フェートンがヴェゼルをむぎゅっと抱き寄せ、胸部でがっちり挟み込む。


「ちょ、ちょっと……!」


その抗議の声は、柔らかい壁に吸われて消えた。


抵抗は無意味――フェートンの“バインバインの圧”の前には、英雄も魔王もひれ伏すしかない。


ヴェゼルは内心で嬉しいのか、悲しいのかはわからない涙を流しながらも、あきらめの境地へ至りつつあった。


そして、この経験でヴェゼルは悟ってしまった。


――弾力の素晴らしさは、フェートンが圧倒的だ。ダントツに。突出している。これは絶対に。その次がエコニック、ここまではとても心地良い。さらにソニア。ここまではまぁ……常識の範囲だろう。そして最後が慎ましいプレセアである。と。


もちろん、本人の口からそんなことを言うはずもないが。


しかし、プレセアにどうにか仕返しをしたいという思いのヴェゼルは、心の中で黒い黒い感情が支配してきていた。


ヴェゼルが女子軍団に圧倒されて、完全に魂が抜けていた隙に、プレセアが率先して散々あらゆるところをこねくり回し、三つ編みにしたり着せ替え人形にして遊んでいたことをヴェゼルは忘れてはいない。


フェートンの胸で一度バインと跳ね返したあと、ヴェゼルはプレセアの胸をちらりと見て、勝ち誇った表情のまま「フフン」と鼻で笑ったのだ。


それに気づかぬプレセアではない。プレセアは徐にヴェゼルのほっぺたをつねる。


ヴェゼルは痛いふりをしながら、今度はエコニックの胸に飛び込む。


そしてまた、プレセアへだけに見える角度で黒い笑みを浮かべる。


「ぐ、ぬ、ぬ、ぬ……!」


プレセアは怒りで震え、「もう抱っこしない!」と宣言した。


するとヴェゼルは今度はソニアの胸へ顔をずぼっと埋める。


「いいよ別に。プレセアさんのは硬いし」


プレセア、怒りの第二波。


一同は、ヴェゼルがプレセアに、散々弄ばれたことの仕返しをしていることを察し、苦笑するしかなかった。


でも、他から見れば……これは……これこそ…これこそが……まさしく子供が行える、最上の酒池肉林なのだろう。


足元のルドルフも、ヴェゼルの胸ポケットから顔を出したサクラも、同じ“呆れ顔”で見ていた。


そして、ソニアがぽつりと呟く。


「ヴェゼルさんって……ただのスケベなんですね。さすが、噂に違わぬ…スケコマシです…」


エコニックも困ったように微笑む。


「これを、ヴェゼルさんと仲良くなった……と言っても良いのでしょうか。ただ胸が好きなだけの男の子なのでは?」


フェートンだけが、なぜか妙に満足そうに腕を組みながら恍惚とした顔で言う。


「そこがいいんですよ! あぁ、ソソるわぁ!」


一人だけ別世界へ旅立っていた。

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