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りんご一個分の収納。マジでどう使えと!? 〜辺境騎士爵に転生したので、なんとか無難な人生を…歩みたいなぁ〜  作者: 大童好嬉


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第362話 道中での遭遇02

フリードは一瞬だけ眉を動かし、ゆっくりと振り返る。盗賊の狩猟らしき男を見て一瞬顔を歪めてその男に語りかける。


「……サクソか。ずいぶんと、肥えたな」


「なんだ、覚えてるじゃねぇか」サクソは歯をむき出しにして笑った。


「ちょうどいいや。なあフリード、一緒にやろうぜ。あの女ども、教国のお偉いさんらしいぞ。弄んだ後、身代金でひと稼ぎだ。資金難も吹っ飛ぶぞ」


その言葉を聞いた瞬間、侍女と聖職者の女は顔色を失った。


「……仲間、なのね……」消え入りそうな声が、震えてこぼれる。


サクソは周囲を見回し、転がる屍に目を落として舌を鳴らした。


「おいおい、派手にやってくれたな。ひぃ、ふぅ、みぃ……六人か。一瞬でこれだ。さすがだぜフリード。だがな、こんな連中は教国にゃ吐いて捨てるほどいる。一声かけりゃすぐに補充できるからな」


フリードの口元がわずかに歪む。


「……落ちたな、お前も。そこまで堕ちるとは思わなかった」


「お前もな。身なりは多少よくなったが、この寒さの中をうろついているところを見ると、生活も楽じゃなさそうだな?」


サクソは女たちを値踏みでもするように見下ろした。


「だが、こいつらは金になる。金貨五百枚は下らねぇ。教国に売ってもいいし、奴隷商に回してもいい」


ヴェゼルが剣を構えたまま、一歩フリードへ寄る。「……父さん、どうしますか」


周囲の盗賊たちは、二人の会話に気づき、緊張を緩めながら様子をうかがっている。


フリードは目を細めたまま告げた。「サクソ。今なら見逃してやる。部下を連れて、消えろ」


「独り占めはずるいぜ、フリード」


フリードはわずかに息を吐き、侍女と聖職者を一瞥する。


「……この二人は、関係ないだろ。俺が預かる。安全な場所まで送る」


その言葉と同時に、サクソの雰囲気が変わった。槍を構え、左手を持ち上げ、低く詠唱を始める。掌に、じりじりと火が集まり、やがて三十センチほどの火球が浮かび上がった。


「綺麗事はやめろよ。そいつらは教国の聖職者だ。それだけで悪なんだよ。俺たちの汗と血で巻き上げた金で肥えてきた、見た目は綺麗だがなぁ、……服の下じゃ、どうにもならねぇ腐ったものが蠢いてるんだろうぜ。田舎とまだ崇めるもんもいるようだが、都会じゃもう誰も崇めちゃいねぇ。税なんて稼ぎの八割も持っていかれる。もう死ぬか逃げるか、それとも俺たちのように盗賊にでもなるしかねぇんだ。こうなるのも、当然だろうが」


フリードの剣が、静かに持ち上がる。


「……昔は、もう少しマシなことを言っていた気がするがな。ここまでだ。サクソ、かかってこい」


サクソの手から火球が放たれ、空気を切り裂いてフリードへ飛ぶと同時に、サクソの槍が地を蹴った。激しい衝撃音と共に剣と槍がぶつかり合い、冷えた空に火花が散る。


防戦に回るフリード。その剣筋を読み切ったかのように、サクソの穂先が鋭く入り込み、逆手に振った一瞬の隙を突く。脇腹を裂いた感触に、フリードの顔がわずかに歪んだ。


「ほらな、言ったろ。体が伸び切ると隙ができるって」


フリードは歯を食いしばり、両手で剣を正眼に戻す。しかし――


「次は突きのあと、腕を戻して切り上げる……だろ?」


指摘されたその動きで、ほんの一瞬、剣が止まる。


「……」


サクソの笑い声が低く響く。


「お、聖魔法か? 身体強化だな。だがな、俺には……」


構わず、フリードの体を光が包み、剣は青白く輝き始めた。筋肉が隆起し、踏み込みが重く、鋭くなる。突き、薙ぎ、叩き下ろし――だがそれすらも、サクソは知り尽くした動きのように受け流す。


「相変わらず、すげぇよ……だが、当たらなきゃ意味がねぇ」


槍が低く構えられる。獣が獲物に飛びかかる直前の、静かな、だが決定的な間。


「――じゃあ、今度はこっちからいくぜ」サクソの足が、地を蹴った。


サクソの巨体がわずかに沈み、獣のような溜めが空気を裂いた。その足元の雪がふわりと舞い上がり、次の瞬間、槍の穂先が一直線にフリードの喉元を狙って突き出される。


刃と刃が噛み合い、乾いた音が森に響いた。フリードは歯を食いしばりながら受け止めるが、力の籠もり方が違う。サクソの踏み込みは重く、容赦がなく、純粋な殺意だけで研ぎ澄まされていた。


「どうしたよ、英雄さんよぉ?」


サクソが愉快そうに笑う。


「前は、もっと怖かったぜ」


フリードは応えず、足を滑らせ、ぎりぎりで一歩後退した。脇腹の傷から、血がにじむ。だが視線だけは、決して揺れない。


サクソが口の端を歪め、乾いた息を吐く。


「お前に戦い方を教えたのは、俺だったよな? 昔のお前はまるでお貴族様の剣だった。無駄に綺麗で、無駄に礼儀正しくて、そして――ひどく脆かった。あの見栄えだけの剣じゃな、実際の戦場じゃ何の役にも立たなかったよな」


フリードが顔を歪める。


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