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りんご一個分の収納。マジでどう使えと!? 〜辺境騎士爵に転生したので、なんとか無難な人生を…歩みたいなぁ〜  作者: 大童好嬉


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第17話 で、ようやく帰路

文体変わった。。

夕暮れの石畳を、馬車の車輪がゴトゴトと鳴らしながら進んでいく。


大広間で感じた視線や囁きがまだ耳に残っている気がして、俺は小さな体を窓辺に寄せ、遠ざかる城壁を見つめた。


「ヴェゼル、顔色が冴えないな」


隣で父フリードが、豪快な声をかけてくる。


脳筋剣士の父らしく、細やかな気遣いではなく直球だ。


「……別に、大丈夫だよ」



「ヴェゼル、話したでしょ。気にすることはないわ」


母オデッセイが柔らかく微笑む。


彼女は冷静に、そして鋭く物事を見ている。俺の小さな拳を握ると、声を潜めて囁いた。


「帰ったら、ちょっと早いけどいろいろと勉強をしてもらうことにするわ。あなたなら賢いから大丈夫よ」


(……やっぱり母さん、鋭いな)


親父脳の俺ですら、はじめは「あれはただのクソ魔法じゃないか?」と悩んでいた。


だがオデッセイは最初から「これは成長する可能性のある特異点だ」と断じていた。


対して父フリードは腕を組み、豪快に笑う。


「まあ、どんな魔法だろうと関係ない! 剣一本あれば大抵の問題は片付く!」


(いや、それは父さんだけだろ……)


心の中で突っ込みながらも、その楽天的さに少し救われる。


バーグマンとアビーも同じ馬車に乗っていた。だからぎゅうぎゅうだ。。


アビーは俺の隣で、まだ興奮冷めやらぬ様子だ。


「ヴェゼル、さっきの鑑定の時、すごく堂々としてたよ」


「いや……正直、めちゃくちゃ心臓バクバクだった。ただ、呆然としてただけだよ」


小声で返すと、彼女はくすっと笑った。


アビーの父バーグマンは渋い顔で腕を組んでいた。


「……娘が五属性魔法を授かったことは、家としては誇らしい。だが同時に、帝国の魔法師団に召し抱えられる未来が決まったということでもある」


その言葉に、アビーが一瞬、不安そうにうつむいた。


「お父様……」


「いや、良いことだ。出世も約束されるし、領地の名誉にもなる。ただ……親としては複雑なんだ。まぁ、何度もいうべきことではないな。」


バーグマンの声音は低く、迷いがにじんでいた。


母オデッセイが口を挟む。


「バーグマン様、それでもアビーちゃんの未来は開かれています。才能を縛られるのではなく、帝国という舞台で広げるのです。ヴェゼルの力も、きっと彼女を支えられるわ」


その言葉に、バーグマンはしばし沈黙し、やがて苦笑を浮かべた。


「……オデッセイ殿、あなたにそう言われると、妙に説得力があるな」


アビーは小さく頷き、俺の手をぎゅっと握った。


「大丈夫、ヴェゼル。私は……どこに行っても、あなたと一緒にいる気持ちで頑張る」


その言葉に、胸の奥がじんと熱くなる。





やがて夜風が強まり、御者が「森を抜けたら休憩しましょう」と声をかけた。


その時だった。


「――グルルルルッ!」


低い唸り声とともに、馬の前方の茂みが揺れた。


護衛の騎士三人が即座に剣を抜く。


「グレイウルフの魔物だ!」


次の瞬間、灰毛のワーウルフよりも一回り大きい魔物が飛び出した。


牙を剥き、真っ直ぐこちらへ突っ込んでくる。


「来るぞッ!」


父フリードが馬車から飛び降り、豪快に剣を振り抜いた。


「俺だけで十分だ!バーグマン殿は妻と子供たちを!」


その声を置いて、フリードの鋼鉄の刃が闇夜に閃き、グレイウルフの首を一瞬で断ち切る。


「ぐっ……まだいる!」


次の魔物は騎士と連携して二体を斬り伏せようとする。


小窓から覗いていた俺はただ小さな体で息を呑むしかなかった。


ふと思う。「でも、待てよ」。


俺は試しに右手をそっと差し出した。


「……そうだ、やってみよう……」


心の中で思い描き、ワーウルフの着地する足元の土を――りんご一個分――収納した。


土は一瞬で消え、グレイウルフは踏みしめる地面を失い、バランスを崩して一瞬疾走が弱くなった。


「うわっ!」


フリードと護衛騎士たちも一瞬驚く。


「ヴェゼル……それが、あなたの魔法の使い方なのね」母だけは、魔法の揺らぎを感じて、先程の違和感に気づいていたようだ。


俺は小さな拳を握りしめ、心臓の高鳴りを感じながらも次の攻撃に備える。


グレイウルフはすぐに立ち上がろうとするが、フリードが制圧し、すぐに一閃の元に倒された。


その瞬間、俺は分かった。


「りんご一個分……でも、工夫次第で戦闘でも役に立つ可能性がある……!」


まだ制限の小さい力でも、状況次第で絶大な効果を生むかもしれない。



フリードと騎士たちの連携で、魔物は瞬く間に蹴散らされた。


血の匂いが漂い、夜の森が再び静寂を取り戻す。


「ふぅ……たいした敵ではなかったな!最後の残りのグレイウルフも途中でビビるとは不運な奴だ!」


フリードが剣を払って笑う。ヴェゼルがやったことに何も気づいてはいないらしい。まぁ、脳筋だからな。。


護衛の騎士たちは息を整えつつ、警戒を続けている。




俺は小さく頷きながら、拳を握った。



森での小競り合いを終え、俺たちは再び馬車を進めた。夜気はひんやりと肌に触れ、月明かりが森の枝葉の隙間から洩れている。


「父さん、すごかったね……」


思わず呟くと、フリードは豪快に笑った。


「ハッハッハ! あれくらい朝の鍛錬と同じだ! ヴェゼル、お前も剣を振れるようになれば、一匹や二匹、斬り捨てられるぞ!」


(……いや、俺は魔法の方で頑張りたいんだけどな)


心の中でため息をつきながらも、そんな父の無邪気さに少し安心する。


一方で母オデッセイは、全く違う視点で戦闘を振り返っていた。


「……やはり、魔物の出没が増えているわね。以前ならこんな街道に群れで現れることはなかった。帝国の治安も、少しずつ揺らいでいる証拠よ」


その言葉に、バーグマンも静かに頷いた。


「確かに……この辺りの領主会議でも話題に上がっている。近年、森や山から人里へ魔物が下りる報告が増えているのだ」


馬車の中に緊張が走る。



やがて馬車は森を抜け、広い街道に出た。


夜空には満天の星が輝き、遠くには城塞の影が見え始める。


御者が声を張った。


「もうじきヴェクスター領に入ります! あと一刻もすれば城下町に到着しますぞ!」


バーグマンの表情がわずかに和らぐ。


「ふむ……やはり我が領の門を目にすると、少し肩の力が抜ける」


アビーも嬉しそうに身を乗り出した。


「やっと着くんだね!」無邪気な笑顔に、思わずこちらも笑ってしまう。


城下町の明かりが近づくにつれ、夜道を進む緊張感は薄れ、代わりに人々の生活の気配が漂ってきた。


窓の外には灯火が連なり、露店の片付けに追われる人々の姿が見える。


どこか懐かしい匂いがして、胸が温かくなる。


門をくぐると、槍を持った衛兵たちが整列し、バーグマンに敬礼した。


「お帰りなさいませ、閣下!」


「うむ、ご苦労」


バーグマンは威厳をもって応じつつ、俺たちを振り返った。


「フリード殿、オデッセイ殿。ヴェゼル、長旅ご苦労だった。我が館にて、まずは休んでいかれるとよい」


父フリードは大声で笑った。


「ありがたい! 俺は腹が減って仕方ない!」


(父さん……緊張感ゼロかよ……)


オデッセイは呆れたように肩をすくめ、しかし小さく笑った。


やがて馬車はヴェクスター領主館に到着した。


高い石壁に囲まれ、堂々とした城館が月明かりに照らされている。



執事や侍女たちが並び、主の帰還を迎える。


その光景に圧倒されつつ、俺はようやく「別れの時」が近づいていることを悟った。


館の前で馬車を降りると、アビーは名残惜しそうに俺の袖をつかんだ。


「……ヴェゼル」


「うん」


「ずっと一緒で、楽しかった。また、すぐ会えるよね?」


その瞳に映る期待と不安。俺は大きく頷いた。


「もちろん。また会える。約束する」


アビーの表情がぱっと明るくなる。


バーグマンはそんな二人を見て、少しだけ柔らかな笑みを浮かべた。


「……若いな」


そして俺たちに向き直り、深々と頭を下げた。


「フリード殿、オデッセイ殿、そしてヴェゼル。娘とここまで無事な旅を送れたことを、感謝する」


父フリードが胸を張って笑う。


「気にするな! バーグマン殿!仲間を守るのは当然ではないか!」


母オデッセイは穏やかに頷いた。


「こちらこそ、よい旅路をご一緒できました」


そして俺は小さく手を振った。


「アビー、またな」


「……うん、また!」


アビーが館へと消えていく姿を見届けると、胸の奥にぽっかりとした穴が空いたような気がした。



アビーが館の中に消えた後、しばしの静寂が訪れた。


夜気の中、残された俺たち――フリード、オデッセイ、俺ヴェゼル、そして護衛の騎士たちは、どこか名残惜しいような、けれど確かな区切りを感じていた。



父フリードは大きく伸びをして、空を仰いだ。


「ふう……さて、俺たちも休むとするか! 明日はまた早く出ねばならんからな!」


その豪快さに場の空気が和らぐ。


だが、母オデッセイは慎重に言葉を選びながら呟いた。


「……アビーは、これから帝国にとって大切な存在になる。今は無邪気に笑っているけれど、その背に背負うものは大きいわ」


声に、淡い哀しみが滲んでいた。


俺は思わず母を見上げる。


「母さん……」


「ヴェゼル。あなたもきっと、この先“選ばれてしまう”ことになるかもしれない。鑑定で現れた、あの不思議な“りんご一個分”の魔法……」


母の眼差しは鋭いが、同時に優しさを帯びている。


「その意味を理解するのは、きっともう少し先。でも、私は信じている。あなたの力は、ただの偶然や失敗ではない。必ず、何かを成す力になる」


その言葉に胸が熱くなる。

(……俺は、本当に“何か”を持っているのだろうか。だとしたら、どう使えばいい?)


その夜はヴェクスター領の客間に泊まった。


広い部屋にふかふかの寝具、豪華な食事。


けれど俺は、どこか落ち着かないまま目を閉じた。


アビーと交わした「また会う」という約束が、頭から離れない。


翌朝。


まだ夜明けの薄明かりが残る頃、俺たちは館を後にした。


門の前にはバーグマンが立ち、娘の姿はなかった。


彼は小さく会釈をして言った。


「娘を、どうか……よろしく頼む。彼女が再び君らと会える日を、心待ちにしているはずだ」


父フリードは力強く頷き、馬の手綱を握った。


「任せろ! 娘のためにも、またこうして顔を合わせようじゃないか!」


母オデッセイも静かに微笑む。


「アビーの未来が輝かしいものになることを、心から祈っています」


バーグマンは深く頷き、そのまま背を向けて館の中へと戻っていった。


馬車が動き出す。


街並みを抜け、再び街道へ。


後ろを振り返ると、もう館は見えなかった。


胸の奥に、ひとつの空白が残る。


(……また、会えるよな。アビー)


だが同時に、不思議な決意が芽生えていた。


「次に会うときは、俺も“何か”を見せられるようになりたい」


拳を握りしめたその瞬間、馬車の中で父が豪快に笑った。


「おいヴェゼル! 帰ったら稽古だぞ! 剣の素振り百本からだ!」


「えっ、今の話の流れで!?!?」


思わず声を上げると、母オデッセイがクスクスと笑った。


馬車はゆっくりと東の空へ――俺たちの故郷へと進んでいった。


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見えてる離れたいち部分を収納できるなら、相手の心臓なり脳みそなり脊髄なりを収納しちゃえばドラゴンにだって勝てますね でも生き物は収納できないか
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