丹波篠山
シャワーの後、片付けた有間の部屋兼居間で有間とアキラが話してるので自分も入る。
元々の豪華な暖炉や応接セットや飾り椅子がやっと使える状態に。
そこに座って、有間が嬉しそうに見波を見る。
「スゴイね〜ここまで昔の感じまで蘇るなんて!」
「元々丁寧にメンテナンスして使われてた家具みたいなんで
洗剤薄めた雑巾で何回も拭いてやったら、すぐ使えるくらいに戻りましたよ。
窓枠や柱、家具や時計台も塗装が剥がれた所はヤスリ掛け直してニス塗り直しました。」
見波が照れくさそうに笑う。
美人の大家さんに少しでも恩返しできたようで嬉しい。
「スゴイよ!こんな事できるなんて!」ソファのベルベット生地を撫でながら、
「こんな鮮やかな模様あったんだね〜埃カブってグレー一色だと思ってたよ〜」
「じーちゃんの家具、俺がかなり譲り受けたんで。
自分でかなり補修したんですよ。」見波が自慢げに言う。
「じーちゃんの家具、アンティーク家具なの?スゴイな。」
アキラが感心する。
「こう見えて、見波くんの実家は丹波篠山の富豪なんだよ!
正月のお節の黒豆や栗きんとんは、全部見波くん家の
品物なんだよ。」
「へーっ、だからか!完全に狙われてたんだな〜」
アキラが意地悪そうな笑顔で見波を見ながらアンティークの豪華な取っ手に寝そべっている。
「昔から食品加工やってるだけですよ!
山ばっかりだから、栗や豆作るしかないし。」
ちょっとむくれて謙遜する。
見波は実家が金持ちなのが、あまり嬉しくないみたいだ。
「丹波篠山のものは、高級品だからね〜
お母様がまた黒豆のケーキとマロングラッセ贈ってくれるって♪」
「洋菓子もやってんの?」アキラが驚く。
「うん、お節だけだといつか行き詰まるからね。
父母が今力入れてるんだ。」
「あの女も見波に乗り換えれば良かったのにな〜
あんなホストみたいな男の何が良いのか?」
アキラが最高に意地悪く言う。
「アハハハハ〜ッ………」力なく見波が苦笑する。
「コラ、アキラ!もう見波くんをイジメるんじゃない!
それより、君らが会った『教団』分かったよ!
これ見てご覧!」
有間がパンフレットを綺麗になったアンティークのテーブルの大理石板に広げる。
白の作務衣みたいな上着に白のパンツ、靴まで白かった。
「これこれ、この衣装だよ〜異様だった!」アキラがパンフの写真を指さす。
「今、大学やクラブとかに出入りして信徒増やしてる新興宗教で『畝傍会』と言うらしい。
このパンフもうちの構内で勝手に配ってたみたいでね〜大学から警察へ通報したらしいよ。」
3人でパンフの説明を読む。
「元々は奈良なのかな?畝傍山を含む大和三山の力で
不老不死を手に入れよう!みたいな?」有間が首をひねる。
「古代シャーマニズムを復活させて、永遠の若さ命を
選ばれた使徒に与えてくれるらしい。」アキラが明らかにバカにした顔で言う。
「これ信じる人がいるのかな?」見波も首を傾げる。
「学生から聞いたけど、この教団は『選ばれし者』しか入れないらしいよ。誘われても教祖様に認められないと
入れて貰えないらしい。」
有間が話す。
「ハッ、それで受かると認められた気分になるわけか!
いやらしいけど、人間そういうの好きだからな〜
大学受験終わってもぬけの殻なってる奴は、更なる競争に燃えそう。」アキラがまた残酷な顔で笑ってる。
あっ、教団の奴等をどう虐めようか考え出してる…
だんだん見波もアキラが分かってきた。