友達?
離れの日本家屋には、3部屋あり奧にトイレや風呂や
洗面、洗濯など3部屋で共通で使えるようにリフォームされていた。
「本当なら2部屋余ってるから、そっちに行って貰いたいだけどね。」
1番広い10畳ほどの部屋の両端にベッドをセットして
間にはカーテンまでしっかり区切った。
「そんな事言わないで!
これでも不安なんだから。
本当に大丈夫かな〜?」見波はビクビクしてる。
「本当に渡月橋もだけど、憑かれやす過ぎだよ!
え〜と、み、み、」
「見波だよ。やっと呼んでくれたね!ありがとう〜」
「全く〜調子狂うなあ〜」
アキラはため息をつく。
時計が夜中の2時をつげる。
「ずっと影を潜めてたのに。アンタが来たら俄に動き出した。
俺が苦手なはずなのに。」
少しアキラは自尊心が傷付いてるみたいだった。
「なんで苦手で嫌いか?分かる?」
アキラが少し寂しげに聞いてきた。
「えっ、それはやっぱり自分が死人だと自覚させられるからだろ!
彼女達にそれを教えてられるのは、君しかいないから?」
「そう、ああいう霊はね、憎しみとか憎悪で幽霊なってない奴らは、自分が死人だと自覚したら…消えてしまうんだよ。」
「そうなの?じゃあ絶対君には近づかないはずだね!」途端に見波が元気になる。
「じゃー絶対、大丈夫だね??」
アキラが口元に人差し指を当てる。
声がする。
「ドコ?九条サマ〜?」「ワタシのカワイイ人〜?」
「ギスケ?ワタシをヤットムカエニキテクレタノ?」
洋館から渡り廊下を渡ってコッチに来てる?!
まさかこっちまで探しに来てる??
見波は自分の口を塞いでベッドの角に固まる。
「スゴイね。僕が居るの分かってるのに来るよ!
あいつら!」
アキラが笑ってる!
残酷な笑みを浮かべてる。
部屋のドアノブが急にガタガタする。
「ヒッ!」つい声が出てしまう見波。
「ソコネ?ソコニイルノネ?ドウシテドウシテ
イナクナッテシマッタの?」
ドアが沢山の手で叩かれているかのようにガタガタして
今にも扉が壊れそうだ。
アキラは平然と腕組して、ドアの前に立った。
「忠告したはずだ。今度出てきたら消すって。」
「ヒイィィィい〜!アノコがイルワ!コワイコ」
「デモ九条サマにアイタイノ、ズットオカエリヲマッテタノ」
「ギスケ、イッシヨにオヤにアイサツへイコ?ケッコンして!」
扉が勝手に開いて3人の血だらけの女が現れた。
腹に穴が空いた下着姿の女が、アキラに飛び掛かる。
「アナタ、ジャマよ」
アキラの手が伸び、穴の空いた腹をスカスカと殴る真似をする。
「だから〜言ってるだろ!アンタは腹を銃で撃ち抜かれてとっくに死んでる。
アンタの待ち人は、姪っ子と結婚してこの屋敷で亡くなってるよ。60歳でな!」
「ソンナア〜ヒドい!ヒドい!ワタシのモノなのに〜」
そう言いながら下着の女はドロドロに崩れ、やがて消えた。
「ギスケ〜コンナコカンケイナイワ、サァお式ヲアゲマショウ?」
アキラを避けて着物姿の女が見波に飛びかかってきた。
首に巻き付いてるヒモをアキラが引っ張り止める。
「アンタ、そいつに首絞めて殺されてるんだよ。
儀助は網走で脱獄して結婚して、もう孫までいるよ。
90歳で最近亡くなったよ!」
「ソンナア〜ヒドい〜」と言いながら、またドロドロに溶けて消えた。
花嫁姿の幽霊はおびえて動けない。
全てを拒絶してる。
アキラが近づく。
「ワタシはアイサレテル。アイサレテルワ」
「ああ、そうだな。でも自分の身体見たら分かるだろ?
アンタは殺されたんだ。だから、九条サマはアンタの従姉妹と結婚して、この屋敷でとっくの昔に亡くなってるよ?」
「イヤあ〜ッ!」
泣き叫びながらドロドロに崩れてやがて消えた。
「幽霊のまま在り続ければ、夢見て生きれたのに。
現実を見ないで過ごせたのに。」
アキラが手を合わせて祈る。
見波も真似して手を合わせた。