新学期
「やっと今日から学校かあ〜」
大学の長い夏休みもやっと終わる。
が、まだまだ暑い!
「もう秋だよ、おかしいだろ?」
部屋から出て顔を洗い鏡を見る。
夏休み最初は、まだ前のアパートで、お金が無くて
食費まで彼女の為に削ってた。
振られてバイトも首なって、アパートも燃えて〜
嵐山の渡月橋の下で野宿しょうとしてた。
アキラに助けられて、東山のこの屋敷で下宿してから
「色々あったなあ〜ほんと!」タオルで顔を拭く。
口は悪いが親切な奴で色々助けられた。
大学も同じらしい。
今日も大学までバイクで連れて行ってくれる。
ここから大学通うのも、今日が最初だ。
「ほんとにいい奴なんだよな〜口は最低なんだが。」
ダイニングに行くと既に眉間にしわ寄せながらコーヒーを飲むアキラと
サンドイッチやヨーグルトを並べる有間がいた。
「おはよう!今日から大学だろ。朝からガッツリチキンサンドにしたよ。タルタルソースたっぷり挟んだから
食べ応えあるよ〜♪」
有間は近くの国立大学の准教授だ。
頭はスゴく良いはずなのに、なぜかあまり賢く見えない。
食べる事が大好きで、おかげさまで美味しい朝ご飯をいつも食べさせて貰ってる。
並べるついでにアキラの読んでる新聞を覗きながら、
「やっぱり教団は残るんだ〜
ハッキリとしたテロ行為の物証が出なかったから。」
有間が腑に落ちないように首をかしげながらテーブルに着く。
「4件の自殺幇助疑いと死体損壊だけだけだしな!
議員としては、金と票のタブル温床だ。手放す訳ないさ!」アキラが新聞を畳む。
「見波君が居なかったら、確実にアキラがテロリストにされてたな。」
有間が笑う。
「なんでだよ!」アキラが朝からキレる。
「死人に口無し。教団撲滅を狙った爆弾魔に仕立てられたよ。確実に。」
有間が涼し気に紅茶を飲む。
ダージリンの良い香りが辺りに漂う。
「見波くん、ありがとうね。君のおかげだよ。」
有間が微笑む。
「いえ、お使い頼まれただけですから!」見波が照れる。
「いやいや、アキラなら完全無視するからね。
君じゃなきゃ、あの状況でお使い行かないよ。」
有間が褒める。
「なんだよ!だいたい、コイツが変な女に騙されたから始まった話じゃん!
おかげでこっちが巻き込まれて大変だったんだからな!」
アキラがプンスカしている。
でも、本当にあの時、なんでお使い優先したのか?
改めて分からない。
「見波君は、それで良いんだよ。
君は大義より個人を先に考える。困ってる人を助けたりね。目の前の現実に忠実なんだよ。
まあ、騙す奴もいるけどね、そんな人を。」
「アキラに足りない視点だよ。ずる賢い奴が沢山居るんだ。
気をつけなよ。」有間が注意する。
ふと教科書を思い出す。
天智天皇の前に引き出され謀反の疑いを掛けられた有間皇子は、
「天と赤兄と知る、吾もはら知らず」と答えた。
天は、天智天皇を掛けたのだろう。
赤兄は有間をそそのかした人物だ。
有間皇子処刑後、左大臣となり娘は天智天皇の后となった。
アキラの力を利用する人間がいつか現れる。
それはアキラ自身の破滅にもなる。
きっと有間はそれを恐れてるんだろ。
「さあ、時間だよ。大学行っといで。」有間が2人を送り出す。
大きなリュックを肩から担いで、アキラのまたがるバイクに近づく。
「ホラッ」とメットを力いっぱい投げてくる。
「もっと、優しくしてくれよ〜」見波がブツブツ言いながら
アキラの後ろにまたがる。
「知るか!行くぞ!」京都の街へ山を下って行った。




