ライブ会場
「スピーカーだ!」アキラが後ろの見波の方を向いて叫ぶ。
「えっ、スピーカー?どういう事?」見波がキョトンとしてる。
「だから〜スピーカーの中に爆弾が仕掛けられてるんだ!」
「あ〜っ、確かに会場全体にある!頭の上の方だから
意識してなかった!」
「設置する前に、倉庫に集められた時に仕掛けたんだ!
後はスタッフや工事の人間が勝手に設置してくれる。
全く自分の意識に上らない。
倉庫で1人で無線や電話で指示出しながら仕掛ければ
僕に勘づかれない!」
「スゴイな!同時に2つの事考えながら作業出来るって…」
2人は改めて白鷺の優秀さに驚く。
そして、それだけ何が何でも成功させたいのだなと思った。
相手が超能力みたいな能力を持っていても、それでも
抗い突き進む。
なぜ、白鷺が、そこまでするのか?
唯一、白鷺が動揺したのは教祖の名前を当てた時だった。
あの時は心が見えた。
「教祖を失いたくないんだな、どうしても」
アキラはやっと白鷺の心に辿り着いた気がした。
見波が走って階段を降りる。
「和菓子屋さん、行こう!絶対何かあるはず!」
「場所知らないだろ?お前!」
大急ぎでアキラも走った。
店は丁度大学の講堂前にあった。
予約した蓮根餅なるものを渡され、
「これも渡してくれと言われましたわ。」と店主に
紙袋を渡される。
中を見ると、ゴーグルが2個と皮のかなり分厚い手袋が入っていた。
説明書がついている。
「小さいものは講堂で。大きな物は千本通りで散布するように。
高圧縮されてるので、講堂はすぐ床に置くように。
通りでは皮手袋でしっかり持って3km走りきれ!
中身はガス臭のある圧縮酸素。」
紙袋の底には何重にも梱包材で巻かれたバトンみたいな物が2本入っていた。
「どういう事?」見波は意味がさっぱり分からない。
アキラがニヤニヤしだした。
「目には目を!爆弾には爆弾を!って事だ!」
「?」やっぱり意味が良く分からない。
「さあ、まず講堂だ!強行突破するぞ!」アキラが
大学へ走る。
見波も後を追いかける。
講堂前には警備員が居たが、アキラはそのまま入っていく。
「え〜っ!いいの?」と見波は思ったがそのまま突破した。
後から警備員の声や受け付けのスタッフの声が聞こえる。
が、そのまま大きな扉を開け会場に入る。
爆音の中、2階席の先頭、白鷺の席まで走る。
流石に警備のスタッフに止められたが、1mの距離まで近づいた。
ふと白鷺の横を見ると車椅子と点滴や酸素吸入器、果ては心電計まで付けられた教祖らしき人が!
…これが山背の後輩の「西本」
すでに骨と皮だけになり意識も朦朧とした姿の餓鬼のような…
広瀬マリアの最期を思い出す。
前を見たまま、横目でアキラと見波を一瞬だけ見て白鷺が微笑む。
後から来た警備員やスタッフ総出で見波とアキラを捕まえている。
「来たね、清明くん」
白鷺が教祖の耳元に何か囁く。
すると教祖がアキラを方を向き口をパクパクさせるが
もう声は聞き取れない。
白鷺が代わりに質問する。
「高校の校歌を歌ってくれ。」
アキラは目を閉じた。
そして全く別人のあの声で歌い出す。
教祖の目からポロポロと涙がこぼれる。




