デビュー
「マリア様、失礼します。」
マリアの部屋にローズとデイジーが来た。
アキラは部屋の扉を開け2人を招き入れる。
しかし、もうマリアは起き上がる事は出来ずうっすらと
目を開けて小さな声で囁くしか出来ない。
看護師が口元に耳を寄せ、内容を聞き2人に伝える。
「明日のデビューステージには必ず行きます。
そしてあなた達2人が新しい教団の光だと皆さんに
伝えます。」
もう無菌室のような透明なシートが何重にも掛けられその奥で厳重な装備の
看護師と医師しかマリアには接触できない状態になっていた。
「はい、お待ちしています。」2人は頭をさげて部屋を出た。
デイジーが泣き出す。
マリアのあんな姿を見たらショックだろう。
ローズに肩を抱かれて去っていった。
扉を閉めて中に戻ろうとすると、他の警護に止められた。
1番古株の警護だ。
「お前、明日会場までの警護だろ?今日はもう帰って休め。」
比較的若く体力のある5人が明日の移動に当たり、古株とアキラより新人の学生が夜勤警備することになったらしい。
「大丈夫ですか?」アキラが聞く。
いつも夜勤は5人体制なのだ。
「明日の移動の方が機材全部だから大変だ。下に建物の警備も10人ほど居るし大丈夫。」
そう言うとアキラの前でマリアの部屋の扉は閉められた。
東山の屋敷に仕方なく戻ると、手筈を整えた有間と見波がアキラの帰宅に驚く。
「今夜は夜勤じゃなかったの?」
「明日の移動が医療器具とか丸ごとだから大変だからって
移動担当は皆帰されたよ。」
「そうなんだ〜まあ、マスコミももう明日のステージの報道へ切り替わったしな。」
コンサート会場の方にマスコミが待機しはじめ、教団もその対応に追われている。
「明日の会場入りは確かに大変だろうなあ〜」
有間も同情する。
「それより病院に入れるようにしてくれた?」
アキラが聞く。
「ああ、大学病院のホスピスに末期の患者が入れるように用意してもらった。」有間が答える。
「見波は、僕と来て!4人眠らせて入れ替わるよ。」
と言いながら見波を見る。
「了解!任せてよ〜」アキラが前もって準備した教団の衣装を着て元気に応える。
「お前がやる気出すとロクの事ならない。
かえって不安だ…」アキラが本気で心配する。
翌朝早朝、ガーデン2階の広瀬マリアの部屋に行くと
もぬけの殻になっていた。
他の警護もオロオロしてる。
夜勤だった2人もマリアも医療関係者も機材丸ごと、部屋から消えていた。
階下に聞きに行ったが、建物警備の夜勤チームはもう帰宅したらしく誰も昨夜の事は分からないと…
用意されてるはずのバンもない。
しばらく部屋で待ったが、古株警護との電話は繋がらず幹部たちの部屋は鍵が掛かり誰もいない。
「どうしょうもないし解散しょう。」2番手の警護が
ため息を付いて決断した。
ガーデンの外で待ってた見波と落ち合う。
「一体どうなってるんだ???」
北山のお洒落なカフェに入り電話を借りる。
待ってる有間に連絡を入れた。
「あ〜っ、ヤラれた!」有間が電話の向こうで叫んだ。
「どういう事だよ!まさか…」アキラが電話なの忘れて食いつく。
「もう殺された後だろ。いや、自殺か?」
「でも、もう薬も自力で飲めないよ。周りに頼むか用意してもらうか?無理だ!」
「医師や看護師で顔の分かる奴いる?」
「!」アキラは言葉を飲んだ。
重篤化してから防護服着ての介護になり、もう前からの医者なのか看護師なのか?顔が分かるメンバーは
いなくなっていた。
「マリア自身が明日絶対会場に行くと言ったんだ!」
まだ信じられなくて食い下がる。
「それは直接かい?誰かを介してない?」有間が冷静に聞く。
「…」アキラは黙るしかなかった。
すでに普通に話す事も困難なマリアの言葉は、看護師を介して伝えられてた。
「僕は、毎人生こういう目に遭うから慣れてるけど。
アキラは初めてだもん、仕方ないよ…」
アキラは力なく受話器を置いた。
天智天皇に大化の改新で首切られた蘇我入鹿の従弟蘇我赤兄から天智天皇を返り討ちにし政権の奪還を持ちかけられ有間が同意した3時間後
屋敷を天智天皇の兵に囲まれた。
つまり、有間の返事の前から兵は出発していたのだ。
たった1夜の出来事だった。
18歳の有間
18歳のアキラ
手強い相手は、1歳でも若い内に経験が浅い内に潰しておく。
兵法の定石だ。
白鷺同志に見事に謀られたアキラだった。




