新興宗教
アキラが山背の母校に事前に連絡を入れていたので
すぐに卒業年やその後3年間のアルバムを用意してくれていた。
有間が故人の親族なので特別に見せて貰えることに。
昔の物なので、名前や住所まで分かる。
3年間の同級生から後輩まで科学部20人の名前住所を控える事ができた。
公立なので異動で当時の事を知る教員は居なかった…が、
OB会会長が山背の同級生で遺族に会いたいとのことで
駅前ホテルで待ち合わせた。
現れたのは議員バッチを付けた男性だった。
「あんな事になるなんて。葬儀らしい葬儀もなく家も翌年にはマンションに建て替えられて同期皆で心配しておりました。」
深々と頭を下げられ、香典を渡された。
亡くなったのは、もう10年も前なのに。
「すみません。僕も若かったので兄さんの事は、叔父の入鹿さんに任せて京都の大学に戻ってしまって。」
「いえいえ、代表で私が親族の方に話を聞きに伺ったのですが
門前払いされまして…」
見るから紳士な男性は恐縮しているが、言葉の端々にトゲがある。
「それはすみません!家族を殺されて母達も命まで狙われて怖い思いをした所だったので。」有間も申し訳なさそうに言ってるが、なんか怖い!
なんだろ?大人同士の遠回しなジャブの応酬を見波は見せられてる感じがした。
「山背君は責任感の強い男だったので、ああするしかなかったのだと思います。
でも、本当に惜しい人物でした。
私が政治家をめざすキッカケをくれたのも山背君だったもので。」
「そうだったんですかあ〜」有間はあまり興味なさそうに相槌を打つ。
「秘書にならないかと誘ったのですが、断られていました。あの時、強引に誘っておけば…残念です。」
「いや、どう誘っても山背兄さんは動かなかったと思います。政治は特に。」
そこまで言うと有間は席を立った。
「見波くん、帰ろう。」
結局、実家に戻らず京都に帰った。
実家に泊まることになってたのを駅の公衆電話で断って京都行きのビスタカーにそのまま乗る。
「良かったんですか?お母さん」
「いいよ。用事は済んだし。母や叔母に山背の叔父も、あの議員を断ったのは宗教絡みもあったみたいだな。」
「あの教団ですか?」 見波が緊張する。
「ああ〜ちがうちがうよ。奈良はね新興宗教で街ができるくらい浸透してるんだよ。
だから議員さんも中にはサポート受けてる人もいる。
母や叔母は商いしてるから、そういうの嫌うんだよ。
入鹿さんも繋がりできるの恐れたんだろ。」
「一旦睨まれたり恨まれたりしたら、教団の組織がどの町にも浸透してるからね、怖いんだよ。」
見波は驚く。
街が丸々その宗教なんですか?
「そうだよ。街入ったら、信徒はハッピ着てるからすぐ分かる。学校も役所も皆ハッピ着てるから〜
あっ、さすがに警官は着てないけど。
でも信徒である可能性はあるから気をつけないとね。」
「…はあ」また見波は言葉を失う。
奈良は京都とは、また違う意味でカオスで魔境みたいだ。
「でも、これで教団が奈良の実家に接触してないの分かったよ。
新興宗教は新興宗教を絶対許さないからね。」
「そういうもんなんですか?」見波には良く分からない。
「彼の縄張りに教団は入れないよ。
今日も高校に連絡したら、すぐ現れたろ?
ああいう人はネットワーク張ってるから。」
カートを押した女性が車両に入ってきた。
「アイス食べよう。暑かったからね〜ご褒美」
有間にカチカチに凍ったバニラアイスをご馳走になった。
有間はホットコーヒーも頼んでアイスに掛けながら食べていた。




