マリア
「この人殺し教団め!」
嵐山の竹林事件が大々的にマスコミに扱われてしまったためマリアの握手会にも暴漢が現れた。
アキラ以外のボディーガードも屈強な運動部の学生が多いのですぐハンマーを持った男を取り押さえた。
アキラは車椅子から広瀬マリアを抱えて階段で会場から避難した。
驚くほど軽い。もうあまり食事を摂ることもままならないのだろう。
舞台の上の放送室に籠もり内側から鍵を掛け、椅子にとりあえず座らせる。
窓から下を見ると、まだ抑えられた男が喚いている。
確かにセンセーショナルな遺体の扱いでマスコミに名が知れ渡ってしまった。
教団の広報活動してる広瀬マリアは標的になりやすい。
白鷺同志がアキラをすぐにボディーガードに配置したのは正解だったろう。
「こうなるだろうと思ったわ。」マリアも覚悟していたのだろう。
「僕、新人なんで分からないんですが、あんな目立つ遺体にする必要があったんですか?」
アキラがマリアに聞く。
「再生のための儀式が要ることは、教祖様に聞いてたけど、よくは知らなかったわ。」
「後は場所も。なぜ嵐山の竹林なのか?」
マリアも少し考え込むように口元に手を当てた。
「それは少し聞いたことあるの。京都の平安京の最初のモデル、藤原京の大和三山になぞらえてると思う。
教祖様は奈良の方だから。」
「畝傍山、耳成山、香具山ですか?」アキラが言う。
「良く知ってるのね?そう、だから『畝傍会』なんだと思うわ。」マリアが合点が言ったように言う。
「僕の郷里もそこなんで、分かります。
しかし、遺体を異様な姿にする意味は分からない。」
アキラが首を振る。
「教祖様は慕ってた方が居て、その方が再生する術を
教えて下さったそうよ。
もしかすると、それが…」とそこで扉をスタッフが叩いた。
マリアが言いかけた所で、暴漢が警察に引き渡されたと連絡が入った。
「なんか似たような話聞いたような〜」
バイトと偽り教団の仕事から帰ったアキラが居間の暖炉の前で寝転がっていた。
消防の関係で今は使えないが、変わりに据え置き型のエアコンが置かれている。
冷風に当たりながら、床に直に寝そべる。
「床までカンナ掛けてワックス塗り直してくれたんだよ、見波くん、すごいだろ?」有間がアキラに自慢する。
京都の夏は暑い。エアコンも限界までフル稼働しても
まだ暑い。
ワックスでピカピカの床はひんやりしてて快適だ。
「そう言えば、見波は?」アキラが周りを見る。
あの存在がやかましい見波がいない。
「庭の手入れも頼んだんだ♪今頑張ってくれてるよ。」
「おい!外は38℃だぞ!あいつ大丈夫かよ?」
アキラが驚いて起き上がる。
「心配なら見てくれば?」有間がニヤッと笑う。
そうアキラがブチ切れてから2人は全然話してないのだ。




