エピローグ
《side金保椎名》
「いや~。負けちゃったか~。惜しいところまで行けたんだけどな~」
非常に残念。
リッチとゴーレムナイトがすさまじい相性の良さを見せてくれたんだけど、それでも攻略されてしまった。まさかこの場面でステータスが上昇して飛行型のモンスターがワイヤートラップを抜けてくるとは思わなかった。このままいけばリッチが倒されるよりも先に相手のドラゴンを倒せると思ってたから、非常に悔しい結果ではある。
けど、とはいってもこれで負けたとはいえ目的は達成できたから構わない。
とりあえず相手の色々な要素は把握できたし、こっちの罠の検証もできた。
そしてさらに言えば、
「残念ながら私のダンジョン、ここからまだ先があるんだよねぇ」
私は自分の笑みが深まるのが分かる。
相手が気づいてて頭を抱えてるか気づいてなくて勝ったと大喜びしてるのかは分からないけど、どちらにせよ私はここのボスを倒す速さで負けたからと言って抗争が終わるわけではないことが分かってた。
私のモニターには、ぱっかりと2つに割れて、下へモンスターたちを落としていく映像が流れている。
そして下にはさすがにこういう風に構造的に落下死を狙ったりするのは禁止されてるため、
「ん~。水浴びできて気持ちよさそうだねぇ。まあ、今回活躍した飛行系のモンスターは入れなくて残念だろうけど、ね」
仰々しくダンジョンコアを先に見せて大きな扉を置いて、ボスを配置していたとしても、それが本当の道だなんていうことは分からない。
このリッチのところはあくまでも組合の人とかにここまでがダンジョンであるということを思わせて惑わせるためのブラフでしかないんだよ。
「ここから2倍以上のルートを通ってダンジョンコアまで到達しなきゃいけないんだけど、行けるかな?」
当然、行けるわけがない。
いや、正確には行けるのかもしれないけど、それよりも先に、
《ダンジョン抗争に勝利しました》
「よぉし!勝てた~。日本最強って聞いてたからどんなものかと思ってたけど、意外とどうにかなったね。モンスターの強さとかはともかくとして、罠の使い方とかは断然こっちの方が上だったかな」
私が勝つ。だからもう向こうは、こっちの攻略なんてできない。
相手のダンジョンコアが砕けて私の方に勝利のメッセージが届くとともに、だんだんと周囲が薄くなっていき、私の体が、
「あっ戻ってきた。結構あっさり戻されるんだ」
結果が出たらそれでもうおしまいと言わんばかりに現実の方に戻された。
ただ実際現実の方のダンジョンがどうなってるのかは見ておきたかったし、早く戻ってこれたのは別に構わない。
とりあえず攻略しようとしてる人がいないこととか問題が起こってないことを確認して、私は一安心。
ただ少し気になるのが、
「何やらゴーレムナイトをすっごいキラキラした目で見てる人が多いけど、何してたんだろ?」
ゴーレムナイトが人気んばことは前から知ってた。でも、その私が知っている以上の注目を今されているし、尊敬していて憧れているという気持ちのこもり方が尋常じゃない。
明らかにこれまでのものを超えてる。
これは間違いなく何かは起こっただろうし、あとで確認をしておかないとね。
ただその前に他にも確認しておきたいことがあって、
《ダンジョン抗争の勝利によって獲得できるDPは貸与状態となりました。現在返済待ちのDPは……………》
私がヘルプを開くよりも前に、そんなメッセージが現れる。
どうやら相手側のダンジョンは一括払いではなく、私に借りる形で借金のような形をとるらしい。利子がつくからその分払うDPは多くなっちゃうんだけど、今は返せないくらいカツカツってことなんだろうね。
「というか、そうじゃなきゃわざわざ私にあの中途半端なDPをかけて戦いを挑む理由がないもんね。私に絶対勝てると思ってるならもっと私から取れるDPは多くてもいいだろうし」
今回かけられたDPはおそらく向こうがギリギリ負けたとしても返せる程度のものだったんだと思う。一括じゃなかったのは少し驚きでもあるけど、維持費もカツカツっぽかったしないのも仕方ないかな。
「借金って怖いのにねぇ。大丈夫かなぁ?」
大丈夫なのかは分からない。でもとりあえず、もし何かあって私のダンジョンに人が来なくなったとしてもしばらく維持できるだけのDPを手に入れる手段は手に入れた。
あとはヘルプを確認したうえでまた何か新しい説明とか増えてないかを確認して、
「……………あっ。やっぱり増えてる。そうだよね。そうだと思ったよ」
私は早速見つけることになった。新しいヘルプの記載を。
そこに書かれているのは、ダンジョンマスター間連絡ツールの文字。
「借金の取り立てとか催促とか、こういうところからやっていくんだろうなぁ」
この機能を使えばいろんなところ(ダンジョン)にメッセージを送れるらしくて、当然その対象にはさっき戦ったばかりのダンジョンも含まれる。
じゃあそんな相手に送るメッセージどういうものがあるかと言えば、催促メッセージ早く支払えとか返済まだかとか、相手に返済を迫るようなメッセージが遅れるというわけ。
システム上も期限とかはあるから支払われるのは間違いないんだけど、相手と軋轢がある場合とかに精神的なプレッシャーをかけるのに使えるかもね。
ただ逆に言えば、返済しなきゃいけない側が脅したりとか抗議したりとか騒いだりとかするのにも使われるかもしれないけど。
「そのあたりはダンジョンのシステムがどう対応してくれるかだよね……………とりあえずダンジョンマスターちゃんの写真でも送っておこうか。本人なら面白い反応が返ってくるでしょ」
ダンジョンマスターちゃんがこのダンジョンに借金ができた以上、返さないといけない。ただそれが難しいとなると残った手段として出てくるのが、私のダンジョンを破壊し私を殺すことでうやむやにするということ。
ということでお前のことはもう分かってるんだぞという意味を込めて、相手に顔写真を送るというわけ。
どんな反応が返ってくるか楽しみだね。
「で、あそこのダンジョンはとりあえずいったんこれで対応は終わりってことで、次は組合とかの対応になってくるわけなんだけど」
ここから先重要になってくるのが、他の相手の対応。
特に、組合の対応が問題になってくる。
「幸いなことに日本最強のダンジョンと争って勝てるんだから、こっちも相当の戦力を持ててるのは間違いない。あとは向こうのダンジョンから学んだことを活かしてもっと強化していくしかないよね」
負けるつもりはない。
ここから先、戦うことになるとしてもしっかりと対応させてもらうとするよ。
ただもちろんどこかで和解なりしたいという気持ちはあるけどね。
「その時にどれだけ向こうから譲歩を引き出せるか。どれだけお金を引き出せるかっていうのが重要だよね……………ふふふっ!楽しみだな~」
私のダンジョン経営はまだまだ始まったばかり。
もっともっとこのダンジョンを充実させていって、たくさんお金を稼いでいかないとね!
ということでここで完結とさせていただきます
お付き合いいただきありがとうございました!
ここから先の作者の活動といたしましては現在連載中の
VRゲームで攻略などせずに勉強だけしてたら伝説になった
はまだまだ続いて行きます。
また、新作として、
現代社会で魔王な俺、異世界帰りの勇者に命を狙われてる!?
の投稿も始まっておりますのでこちらもよろしければよろしくお願いいたします。




