31稼 罠ばかり
《side???》
相手は数で攻めてくるみたいだけど、幸いなことに私のダンジョンは最初からボス戦だから数で突破していくという戦法が非常に通用しにくい。
確実に時間はこっちが稼げるから、序盤の攻略されない間にどこまで私の側が向こうのダンジョンの奥まで進めるのかっていうのが重要になってくるんだけど、
「さて、罠があるんだよね。どれくらいつぶれるかな?」
まず向こうのダンジョンは罠がある。
罠と言ってもあの天井が落ちてくる罠ではなく、
「わっ!?眩し!?」
入り口の光量の差を使った罠……………だったはずだったんだけど変わっていた。ありえないくらいの量の光を天井から発していて、モニター越しにも関わらず私は目をやられる。
ただそれは私だけじゃないみたいで、かなりの数のモンスターが目を抑えて壁にぶつかりながら走っていた。
しかもそれを向こうが見逃してくれるわけもなく、
「うわっ。やられてるやられてる。頭潰されちゃってるよ。グロい…………」
こん棒で私のモンスターが頭をつぶされてる。いろんなものが飛び散ってなかなかに観るのがつらい光景になってるよ。
しかも、このためかは分からないけど入り口付近のモンスターがゴブリンからオークに変わってるみたいで、おそらく攻撃力も上がってる。
この段階でかなりの数の私のモンスターがやられてしまった。
とはいっても、
「リスポーンまでの時間は1分か。結構あるなぁ……………」
やられたモンスターは復活する。特に何か学習をしたりするわけではないけど、いなくなるわけじゃないから充分。
ただ厄介なのが、
「この天井の明るさのトラップは、復活した時にまた効果があるってことだよね?それはかなり辛いかも」
復活するときは完全にゼロの状態から復活するから、目が明るい状態になれているとかそういうことも当然ない。
いつまでのこの明るさのトラップにはやられ続けるっていうことになる。
「将来的には能力値が上がってこん棒で頭を一撃っていうのはなくなるのかもしれないけど、この最初に目をやられる段階で時間を確実にとられるのはマズい。向こうもなかなか考えてるね」
偵察に行った時から抗争用にこんな変化を起こしてるってことは、向こうも対策はかなりしてきてる。予想はある程度してたけど、それ以上の相手かもしれない。
油断はできないかな。
それに、ここで頭をつぶされずに生き残った数体も先に進もうとすれば、
「あっ。終わった」
そう思わされる結果がもたらされる。
先へ走って行こうとしたモンスターの1体が地面に合ったスイッチを踏み、周りを含めて落ちてくる天井に押しつぶされる。
「うわぁ。これでもうかなりの数がリスポーン待ちの状態か。困ったね」
こん棒の攻撃は兎も角として、落ちてくる天井を絶えられる防御力を得られるのは相当先の話になると思う。
この罠には、確実に長い時間苦しむことになるはず。
「そしてしかも、まだまだ先はある、と」
天井が落ちる罠は強力だけど、それでもる程度クールタイムも存在する。
落ちてきた後もう1回上に戻るまでに引き上げられるのが割とゆっくりで、その間は危険がない。
入り口のオークと落ちる天井を避けた運のいいモンスターが、その先の通路をかけていく。
問題は間違いなく、ここから。
「ここからは引き返してきちゃったから、完全に未知の領域。うまく対応できると良いんだけど」
私はこの通路をある程度進んで結構な数のゴブリンが待ち構えていたところで撤退した。
だからこの先の情報をあまり持っていないし、どうなるかは分からない。
ただ、
「私はそれを知ってるんだから、対策を立てないわけがないよね?」
あまり深く知ってるわけではに得けど、それでもわかってる部分はある。そしてそこに対して私が対策をしないわけがない。
たくさんのゴブリンが待ち構えているのであればそれを突破するために、
「空を飛んでいけばいいんだよ」
私はこの大軍を回避するため、飛行できるモンスターを採用した。
こういうのが出てきてくれるから、無理して新しいモンスターを求めてよかったと思う。
飛行できるモンスターの方が早いから、歩きのモンスターより早めに敵の待ち構えているところまで進んで、
「うわぁ。ここも全部オークに代えられてる?」
予想外なことに、ゴブリンの集団も全部オークに代えられていた。
どうやら基本的にゴブリンとかは残していないし、さらにはゴブリンの代わりをオークにさせてるように見える。
「絶対DPの消費がとんでもないことになると思うんだけど?……………ここで勝てばその分を取り返せるとか思ったのかな」
オークには驚くけど、だからと言って私はおびえることはない。
例えオークだとしても、所詮豚は豚。空も飛べないただの豚。空中を移動する私のモンスターに弓以外で対応できるとは思えない。
しかも、前回私が気づかれた時と違ってかなりその移動速度がモンスターは高いから、オークが反応して矢を狙って飛ばすまでにかなり距離が詰められる。
流石にすべては無理だろうけど、数体は飛んで抜けていけるはず。
そう予想して、
私の見ているモニターに映る飛んでいたモンスターは、突然落下した。
「え?」
そこを逃すオークでもなく、囲まれ全てこん棒で殴られ無残にも殺されている。
「……………え?」
よくよく見てみると、オークたちの頭上には、細いワイヤーのようなものがいくつもあり、そこを通ろうとすると体が切り裂かれたりして墜落させられるようだった。
「ワイヤートラップ……………うそでしょ」
仕掛けられていたのはワイヤートラップ。どうやら向こうはこちらが飛んで抜けようとしてくるのは予想済みだったらしく、対策をバッチリと立てられていたらしい。
完全に、向こうの掌で踊らされた気分。
「く、悔しい……………」
私はこぶしを握り締めてこの気持ちを落ち着かせる。
まだこのダンジョンは始まったばかり、どんな結果になるかなんて、予想はできない。
「まだ大丈夫。歩行タイプのが後続で来るし、リスポーンも始まり出してる。まだまだ、ここで止められてはいられないよ」
飛行タイプのモンスターがやられても、それで終わりというわけではない。
まだまだ復活したモンスターも含めて戦力はいるんだから、せめてここくらいはすぐに突破しないと。