30稼 抗争開始
「……………さてさて。どうやって攻めていこうかな」
時間はあっという間に過ぎていき、ガチャを回していろいろとやっていたらいつの間にか抗争の時間となっていた。
現在は抗争までのカウントダウンを前にしながらどうやってここから相手のダンジョンを攻めていくかと考えているところ。
今の私には十分にとまでは言えないけど幅広いモンスターも罠もフィールドもある。だからそこまで瞬殺されるということはないはず。
だから、
《ダンジョン抗争が開始されました。これよりダンジョンの防衛能力が10倍になります》
そんなアナウンスと共に、ダンジョン抗争が始まり私は全く先ほどまでいた場所とは違う場所に移される。
そこは、このダンジョン抗争に時間をかけるためだけに作られた場所。
ここからだと残念ながらダンジョン抗争以外のことには手が付けられない。それこそ、冒険者がダンジョンに入ってきたりしても対策は立てられないということ。
ただ、代わりにというわけではないけど抗争の間はンモンスターの能力が10倍になってたりとか維持費がかからなくなったりと言ったことはあるんだけど。
「それはそれとして心配ではあるから、できるだけ早めに終わらせたくはあるかな。ただすぐに負けるっていうのも嫌だしある程度向こうの様子が見れるように調整して、と」
まず抗争の前にお互いやるのが、相手のダンジョンに入り込ませるモンスターの調整。
ここで相手のダンジョンに送り込む戦力というのはスタンピードの時とは違い、DPを消費することで相手のダンジョンに送り込むとかいうタイプのものではない。
実を言うと抗争で相手に戦力を送り込むというのはリスクがある行動で、自分の防衛に使ってるモンスターを攻め込ませる側に回していくということが必要になるの。
つまり、相手のダンジョンに攻め込ませようとすると防衛からそのモンスターが抜けてダンジョンの防衛能力が落ちて、逆に防衛に特化しようとすると相手のダンジョンに攻め込ませることができない。
「ただそれだけならいいんだけど……………」
それだけならいいんだけど、ずっとそうしているわけにもいかないというのが正直なところ。
このルールだとお互い防衛の方に力を込めていると一生終わらないような感じになっちゃうから、攻撃側のモンスターは時間経過で能力が上昇するようになってるんだよ。
だから、いつかはどれだけ防衛設備を鍛えてたとしても負けることになる。
「じゃあ攻撃に特化すればいいかというとそんなこともなく」
このバランスの調節がなかなか難しいところ。
それでも私は、
《side???》
「え?早い。もう事前に出すのは決めてたってこと?」
相手の、最近有名な有料のものが多くあって人が多く来るダンジョンのダンジョンマスターはすぐに出すモンスターを決めてきた。
決めると相手から見えるようになるからここでも読みあいがあるかと思ったけど、向こうはそういうことをするつもりはないらしい。
最初からこの選択しかするつもりはなったのかもしれないけど、
「攻めてくるのは基本的にゴブリンとコボルトっぽいかな。この見た目」
見た限りゴブリンとコボルトだと思う見た目。数は多いけど、それでも弱いモンスターばかりだからあまり攻める方には重点を置いてないような気がする。
それかもしばらくは時間がたつとこういう弱いモンスターは意味がなくなるから、罠も多くあることだし質のいいモンスターだけで対応できるって考えたのかも。
「となると、こっちはそれに合わせて攻め手を強くする必要があるか。戦力としてはこっちの方が強いから倍率としてもこっちの強くなるペースの方が上だと思うけど……………そこは向こうの攻め手は数でカバーできるとでも考えたのかな」
まだ始まってすらいないんだから評価はできないけど、そこまで大きな失態を向こうは犯してない。それだけでも苦戦をするかもしれないという予想はできた。
「でも、ここで負けるつもりはないよ。そのDPは私がもらう」
私の夢のため、向こうも考えて努力して作ったダンジョンでの成果なんだろうけど、その成果は私がもらう。
私の夢のためには、他人の努力も命もすべてが些事。
《side金保椎名》
制限時間とかあったんだけど、そんなものは必要なかったと言わんばかりにすぐに攻守のモンスターはお互い素早く決められた。
とはいっても私が守りに質を重視するようなモンスターを配置してると予想したみたいだから、というか私が攻撃側に選んだモンスターを見る限りそうとしか思えないから、向こうは逆にそれに合わせて攻める側を強めにしたって感じだね。
「あとはその強いのをどれだけ抑えて時間稼いで、逆にどれだけ攻める側が先に進めるかって話になってくるわけだけど……………」
私が攻める側に用意したモンスターは結構数が多い。
だから、少しくらい邪魔するモンスターが現れたところで相手にせず抜けていけるのが何体もいるはず。
そう期待しながらモニターを見ていると、モンスターをそれぞれ選択し終わったこともあってすぐに抗争本番は始まって、
「なるほどねぇ。本当にこのダンジョンって防衛しっかりしてるんだな~」
まず相手のダンジョンの初めとなる階層。これを見た段階で、私はAランクダンジョンの格というのを理解させられた。
まず、なんといったって待ち構えていたのが、
「初っ端からボスか~。私にはできないよそれ」
最初の階層にまず大きな部屋があり、そこへ私側のモンスターが入ることができる入り口と反対側に大きな扉がついている。そしてその扉を守るようにして、8つの首を持った大きなヘビのような何かが待ち構えていた。
「3つ首のイメージだったけど、これはヒュドラってやつかな?時間かかりそうだねぇ」
まず最初から数の力でごり押して抜けていくという戦法が使えなくなってしまった。
私の方のモンスターは先を目指すことを優先して設定してるからこの扉がボスを倒さなくても開くようであればそれに全力を出したはずなんだけど、戦う姿勢を見せている。
つまり、戦って倒さないと扉は開かないってことなんだと思うんだよね。
まだ能力値も上がってない序盤にそれの相手をさせられるのは非常にきつい。
「選択間違えたかな。私ももっと強いモンスターで攻めるべきだった?」
ヒュドラを倒せるほど強いモンスターがそう何体も私のダンジョンいいるかどうかは別として、もうちょっと質を上げても良かったかもしれないと思わされるような始まり。
思った通りに行かないだろうことが容易に予想できる始まりだった。
「こういう経験ができるのは良い事なんだけどね。というか、こういうことを学ぶために抗争することにしたんだし」




