26稼 スタンピード
ダンジョンマスターちゃんのダンジョンに当たりを付けた後。私は一応監視とか尾行とかがついてても問題ないように色々と行なった後に自分のダンジョンに入って今後のことを考える。
やりたいことと言えばやっぱり、例のダンジョンマスターちゃんの監視になるんだけど、
「そろそろダンジョン運営開始から1か月、か」
時が経つのは早い物でというべきか。なかなか濃い日々が続いたけど、ダンジョンの運営を始めてから約1月が経過した。
これによってガチャに必要な石が1つ手に入る。
1つもらえたからと言ってもどうせ石はまとめ買いするから特に何かガチャまでの時間が短くなるとかそんなこともなく、ただ区切りが良いだけの日。それだけ、だと思ったんだけど、
「ん?何これ?」
どうやらダンジョンにとっての1月というのは私が考えていたほど軽くなく、大事なものだったらしい。
私の目の前に、おそらく1月経過したから出てきたのだろうものが姿を見せて、
《スタンピードに使用するモンスターを選択してください》
「スタンピード?」
言葉だけは知ってる。
物語とかゲームでたまに出てくる、モンスターが大量発生したりダンジョンからモンスターがあふれ出たりする現象のこと。ただ、その言葉が今私の目の前に現れるとは思ってもいなかった。
ダンジョン関連のことなのは間違いないんだけど、
「何それ?ヘルプに描いてなったはずだけど……………って、項目増えてるし。こういうことしちゃうんだ」
ヘルプに描いてなかったし知るわけがないと思っていた私が確認しようとヘルプを開けば、そこには新しい項目ということで小さくNewと横に書かれた「スタンピード」の項目が増えていた。
まさかヘルプに全部の機能の説明が書いてあるわけじゃないとか知らなかったし驚きだよ。完全にヘルプで書かれてることがすべてだと思っていた私は前提が大きく崩れてしまったことにより頭を抱える。
「もしかしてあのダンジョンが私に抗争を仕掛けてきたのって、新しい機能を向こうは持ってる状態だったからとかだったりする?確実に向こうの方が期間は長いはずだしそこの差はかなり大きいはずだけど……………」
新事実により絶望というほどではないけどかなりショックを受ける。
それでも一旦気を取り直して、とりあえず増えたこのスタンピードというものをしっかりとシステムとしてどうなっているのか理解することにして、
「……………えぇ?これ、外に情報が洩れたら絶対ダンジョンとか潰されちゃうじゃん」
ヘルプに増えたものを読み終わり、内容を理解した私の口から最初に出た感想がこれだった。
やっぱりスタンピードというのはダンジョンの外にモンスターを出すというもの。それこそ、かなりの量を出せば周囲の街とかそれこそ小さいものなら国だって破壊できるような内容になってる。
まあとはいっても制約も大きくて、まず第1に通常のダンジョンに配置するモンスターと比べて圧倒的に外にモンスターを出すためにはDPが必要になる、具体的に言うと、10倍が最低ラインくらいかな。
強力なモンスターとかになってくると30倍くらいのDPが必要になるようにも見える。
そしてさらに、外に出たモンスターは復活しない。つまり何倍ものDPを消費したにも関わらず倒されたらそれで終わりってことだよ。代わりにといっては何だけど、維持にDPは必要ないらしい。
「維持費がかからなくてもまず雇う段階で大量に消費してるんだから差し引きで言えば圧倒的にマイナスでしょ…………」
ちなみに維持費はかからない代わりに食事なんかは必要になるらしい。ダンジョンに居れば食事は不要だからそこの部分もデメリットだよね。
モンスターたちを生かしておくには、食料を求めて移動させていく必要があるから、あまりずっと自分のダンジョンの近くにとどめておくっていうの難しそうだし。
「まあ、そんなにDPをかけてやるわけないよね」
メリットはほとんどない。そんな内容になってる。
世界を滅ぼしたいとかそういうことを考えるような人であればもしかしたらやりたいと思うかもしれないけど、私はそんなこと考えてないから正直たいして必要のない機能と言ったところかな。
まあやるとしたらせいぜい、
「とりあえずスライムの小さいのを100。いや、200体くらい出せばいいかな。ここでDPを使って良いのかはちょっと悩むけど、まあ初めてだし色々と試してみるってことで」
スライム200体。とりあえずこれを出してみることに決めた。
全然使うDP少なくないじゃんって思うかもしれないけど、初めて使うものっていうことと私にとってこれくらいのDPは少ない方ですけど?ってことで許してほしいな☆
「さすがに今やると人に見つかって騒ぎになりそうだし、夜とかにやるのが良いよね。あっ、予約機能とかあるんだ。ならこれを使って……………」
実際に実行されるのは夜。
普段人が少ない時間を選択肢て、できる限り見つからないように放出することを決める。
夜更かしはお肌の天敵なんだけど、その日はさすがに遅くまで起きて待つことに。しかも、不測の事態にも対応できるようにダンジョン内で。
いやぁ~。ダンジョンにシャーを設置していたことにここまで良かったと思える日が来るとは思わなかったよ。
「…………そろそろかなぁ」
関係ないことを考えてたらだんだんと時間は過ぎていき、ついには予定していた時間にまで。
私はいつも以上に真剣にダンジョンの入り口付近を映し出すモニターを眺めて様子を観察し、
「あっ。出てきた」
人が並んでても大丈夫なように。そして、悪いことが起こらないようにと明るくしてる有料の方の入り口とは違い、全く灯りがなくこんな夜中だとどこにあるのかもわからないような無料の方の入り口からぞろぞろとスライムたちが出ていく。
灯りがないからほとんど分からないけど、さすがに200体も一斉に出てくると不自然には感じるものでいると分かっていれば気づくことができる程度。
しかも、私はさらに考えたうえでスライムを放出選択することを選択していて、
「排水溝にみんなは入れたっぽいね。良かったよかった。これで見つかる心配はほぼないかな?」
スライムは基本的に体が柔らかいから、狭い隙間なんかにも入り込みやすい。排水溝や建物の隙間など、人がなかなか見ないようなところに紛れ込んでいく。
200体いた集団もいつの間にか私が指示を出すことで散り散りになっていき、個体ごとに様々な場所に紛れ込んでいる。
例えば下水管の中とか自販機のしたとか茂みの中とか建物の隙間とか自販機の下とか。なんか2回言ったものがあるような気もするけど、まあそこには小銭が落ちてる可能性が高いから重要だってことだね。重要だってことだね!(大事なことなので2回言いました)
「その辺に落ちてるものを拾えるのって大きいよね。1つ1つは大したことがない金額でも、塵も積もれば山となる。小銭も積もれば大金になる。うん、間違いないね!!」
別にこれは狙ってたとかじゃなくてたまたまなんだよ?たまたまなんだけど、スライムは落ちてる小銭を集める能力が非常に優れてるの。
体内に入れて保管しておけるし、体内のものを自由に動かせるから小銭よりも小さい穴に入ろうとかしない限りは引っかかることもない。本当におまけでしかないんだけど、小銭を集めるのに非常に便利なんだよね。
「たまたま、本当にたまたまだけど運が良かったな~。ハハハ~」
そしてもちろん、それ以外にもメリットがある。
指示を出して移動させられているうえに場所が分かってる言ことから気づいてるかもしれないんだけど、モンスターの周囲の状況を引きのカメラみたいな感じで見ることができるんだよね。だからいろんなところの監視とかができる。
いろんな場所を移動できるから、バレにくいような移動もできるだろうし誰かを見張らせるのにも使えるな。指示はこのダンジョンにいる間だけしか出せないけど、各モンスターの映像は外にいてもダンジョンの様子が分かるモニターと同じ感じで使えるらしいからそれこそ国の施設とか組合とか、ダンジョンマスターちゃんとかを見張るのに使えそう。
いや~、お金稼ぎのついでだったけど便利、………じゃなくて、こっちが本命だったからうまくいきそうでよかったよ。うん。
とりあえず今のところスライム3体ほどを監視役として使ってて、それは全部例の抗争を行なう予定のダンジョンの周囲に置いてる。
ダンジョンマスターちゃんが本当にあのダンジョンのダンジョンマスターなのかはしっかりと確かめておきたいからね。
「国と組合は感知系の能力を持ってるかもしれないからどこまでやっていい物か悩むんだけど」
ダンジョンマスターちゃん以外に監視を付けられてないのは、気づかれる可能性があるから。
国とか組合が何も警戒してないとは到底思えないんだよね。
「でも、できることがこれでだいぶ増えたな~。これならもうちょっといろいろと問題を簡単に解決できそう」