24稼 突破
怪しい恰好をしてたけど中身は超絶可愛かった、ダンジョンマスターだと思われる人。
その人のことはしばらく気になっていたんだけど、再会(?)は意外とすぐのことだった。
「あっ。こっちに人来るんだ。珍しい」
最近はめっきり少なくなっていた、お金を払わなくていい純粋にダンジョンを攻略していく道。そこに侵入者が現れた。
何人も無謀にも挑戦した人たちが姿を消したのは分かってるはずなんだけど、それでも挑戦するみたい。それがどんな人かと思って見てみれば、
「あれ。この間の子じゃん。さすがに死んでほしくないんだけど……………」
全体的に黒いうえに顔まで隠した非常に怪しい恰好。
その私が気になってたダンジョンマスターちゃんが、私のダンジョンへとやってきたというわけ。かわいい子だし個人的には死んでほしくないんだけど、さすがにこのダンジョンにも個人だけを死なないようにすることとかはできないから私は願って見守るだけ。
ただ、そんな私の願いが通じたわけではないんだろうけど、
『最初にゴブリンが来て、と』
小さな声。だけどしっかりこちらもかわいい物でが聞こえてくる。
相やら私のダンジョンで最初にゴブリンが奇襲を仕掛けてくるのは知ってたみたいで、明るさの違いで目をやられることもなく落ち着いて最初のゴブリンを対処した。
恰好が怪しいだけじゃなくてちゃんと良い装備も持ってるみたいで、腰に差してたナイフをゴブリンに向けるだけでゴブリンが凍り付き後は動かないゴブリンの首を刈り取る簡単な作業へ。
ただ、ゴブリンはどうにかできたけど本番はここから。明るさを利用して奇襲を仕掛けるなんて、 このダンジョンでは序の口でしかない。
その先をまだ誰1人として抜けてない落ちてくる天井が待ち構えていて、
『罠は……………うわぁ~。起動箇所が結構あるんだけど、いやらしぃ』
どうやら罠の場所が分かるアイテムか何かも持っていたみたい。
まさかの初突破を難なく達成されてしまった。地面に置いてあるスイッチには一切触れることがなかったから、危なげはない。
「罠の効かない相手だとここまで厄介か~。面白いね」
こうして今まで誰1人として通してこなかった罠が突破されてしまったけど、私はそこまで落ち込むこともない。単純に罠を発見できたり解除できたりする相手は厄介だと思う、それだけ。
正直に言うと、ここまで誰も先に行けてなくてそろそろそっちが本当に動くのかも確認しておきたかったからね。丁度良い機会だよ。
流石に、今回で1番奥まで突破されるとは到底思ってないし。
実際、その罠を突破した後は、
『おっと、両部屋にゴブリンか~。さすがにこの数は……………』
少し進むのを躊躇してた。今回は罠ではなく、単純にモンスターの数を揃えて配置したからね。
さっきはゴブリン1体を氷で動けなくして危なげなく対処できてたけど、今回はそうもいかない。通路の横に2つ穴が開いていて、その先にはそれぞれ部屋がありゴブリンが数体ずつ待機している。しかも、通路の先にもゴブリンはいて、どこかのゴブリンに発見されれば他の場所から気づいたゴブリンがやってきて合わせると結構な数のゴブリンと戦わなきゃいけなくなるという仕組みになってる。
『撤退、かな』
この数は無理だと判断したみたいで、撤退が選択される。まあ悪くない判断だとは思うよ。
でも、私はそこで撤退させてあげるほど優しくはない。
『ギャギャギャッ!!!』
『ギャギャギャギャッ!』
通路の先には結構索敵範囲の広いゴブリンを配置してあり、撤退しようと判断した時には既に捕捉をされてる。
それでもその通路の先からゴブリンが来るよりは入り口まで走って戻った方が早い程度ではあるんだけど、そこから先にいやらしいことに、
ブオオォォ!!!
『な、なに?何の音?』
ほら貝のような音が聞こえてくる。
それが何の合図変わらないで困惑してるけど、私のダンジョンはそんなことで待つわけもなく、
『ギャギャギャ!!』
『ギャギャッ!』
『っ!?うそぉ。ゴブリン出てくるの?』
通路につながっていた部屋からゴブリンたちがぞろぞろと出てくる。しかも、ここで撤退を相手が選択してもいいように数体は弓兵のゴブリンまでいるからそう簡単に逃がしはしない。
通常のゴブリンたちが出てくる後ろから出てくることで弓矢の存在をできるだけ見られないようにして出てきた(そうなるように私が設定した)は、そのままゴブリンたちの後ろから見えないように弓矢を放ち始める。
そうしてやっとやがとんできたことで 弓兵の存在に気づくわけで、
『うわっ、マズい……………』
気づくけどもう遅い。走って避けられるほど矢というのも遅くはなく、その慌てている頭上に雨のようにして降り注ぐ。
流石に避けられないし数本は刺さって確実に致命傷になる。
……………と思っていたんだけど、
『あ、危な。遠距離対策しててよかった』
ダンジョンマスターちゃんは無傷。その怪しい恰好のどこにも傷は見えない。
どうやら遠距離攻撃が当たらなくなるような何かを使っていたみたいで、矢はすべてそれて周りを取り囲むようにして地面に突き刺さっていた。
結構調整して弓矢も見えないようにしたし自信のあるトラップだったんだけど、まさか無傷で終わるとは思わなったよ。
でも、これが初めてだったんだからここまではあくまでも実験段階。またあとでもっと調整しておけばいい。
それよりも今は、
『うわっ。これ逃げ切れるかな?』
トラップの続きを見ないと。
弓矢による攻撃は効果がなかったとは言っても、こちらの攻撃はそれだけじゃない。まだゴブリンたちは1体として倒されていないし、直接的な攻撃はここからになる。
それぞれの獲物を片手に全員で駆け出し、迫っていく。
『くぅぅ。距離としては追いつかれそうにはないけど罠も避けながら走らなきゃいけないし……………って、それを言えば私、ゴブリンにも踏ませないようにしなきゃいけない?』
気づいたようだけど、このゴブリンが追いかけてくるときの1番の問題というのはやはり入り口付近のトラップ。
自分自身が避けて走るのは当然なんだけど、それ以上に追いかけてくるゴブリンたちにも踏ませないようにしなければならないのがミソ。
『うわ。結構ギリギリ。かなり距離詰めてきてる』
後ろを振り向きつつダンジョンマスターちゃんはゴブリンとの距離を確かめるけど、すでに結構詰まってきている。
ただ入り口まで走るだけなら問題はないかもしれないけど、技を回避するとなると問題がないとは言えない距離になってる。
『凍れ』
『ギャッ!?』
そこで使用するのが、やはり氷。
先頭の方のゴブリンを凍らせて、動きを封じる。そうして戦闘を止めることで突っ返させて後ろのゴブリンまで少し動きを止めさせつつ、どうにかギリギリ、
ゴォォンッ!
『うわっ。地面揺れた』
ギリギリのところで落ちてくる床を回避することにも成功。
衝撃で揺れる地面と発生した風圧でバランスを崩しながらも、どうにか入り口まで戻ってくることができた。
『とりあえず最初の方は分かったけどこれはきつそう……………偵察はここまでか』
ここまでで今回の活動はやめるということらしい。突破する手段もないみたいだから分かることではあったけどね。
……………まあでも、私は終わらせてあげるつもりはないけど。




