15稼 今までの程度
私のダンジョンへ侵入してくるダンジョンマスターっぽい人たちは、日に日に減るどころか増えていく。
それこそ、有料の扉の方に行こうとしてる人がそれを見て、行く方を間違えてるんじゃないかって声をかけることが何回かあるくらいまで。
お陰で、今まで全くなかったはずのこのダンジョンでの死亡者はかなり増えてきている。
そしてやっぱりあの聞いた会話は嘘ではないようで、いくつか普通のタイプのダンジョンが攻略とかされてないはずなのに消えてるっていううわさも聞いてる。
それこそ中には、私のダンジョンと同じCランクのダンジョンまで消滅してるとか。
「この間のちょっと強めの人がそうだったのかなぁ?」
同じCランクということは、間違いなく気こっちの危険性は認識しているはず。だから、かなり警戒して挑んできた人がいないわけではなかった。
それこそ、どこから情報を集めてきたのかは分からないけどダンジョンの入り口部分の奇襲に関しては完全に対策を立てていて、一切傷を負うことなくゴブリンを返り討ちにした人もいた。
ただ、
「結局皆、押しつぶされるんだよねぇ」
死に場所は大抵一緒。未だにあの天井落下ゾーンを抜けた人は1人としていない。
その先にもいろいろとギミックは用意してあるんだけど、全くそれに到達される気配すらない。
唯一その罠に気づけそうだった人は、
「ゴブリンの奇襲だけで死んじゃったからなぁ。罠だけだと思って攻撃とか予想してなかったのかな?せっかく良い装備があったのに」
ゴブリンの奇襲に気づいた人とはまた違い、罠に気づけそうな人はいた。でもその人はゴブリンの奇襲に気づかず即死。
せっかく、罠を察知できてみたアイテムの名称も分かるとかいうモノクルを持ってたのに、それの効果が発揮されることもなく死んじゃったし。
ちなみにそのモノクルは私が今他のダンジョンを探索するときに愛用させてもらってるよ。
やっぱり罠に気づけるのはありがたいよね。
「……………ただ、ここまで来た人たちは結局大したことない人たちだからなぁ。私みたいなことを積極的にしてた人は、私のところには来てないよね」
今はまだ攻略されてない。でも、油断するわけにはいかにのもまた事実。
今来てる人たちって、おそらくそこまで無料の宝箱のダンジョンを狙ってた人達ではないと思うんだよね。きっと噂か何かでそういうことができるのを聞いて、後半になってようやく動き始めておいしさを知ったタイミングでそういうダンジョンがなくなってしまった人たちだと思う。
だって、あまりにも装備のレベルが低いから。
私みたいに最初からそういうことをしていれば、もう少し装備が整っていないとおかしい。それこそ、そういう人達なら私みたいに誰にも発見されないようなタイプの装備を持っていてもおかしくない。
でも、ここまで来た人たちは基本的に全員いい装備が多くても2個あるかどうかといったところで、たいして充実はしてない。
つまり、あんまり宝箱をたくさんは空けられていないことが分かる。
だから、今はまだそういう人達しか着てないけどもしもっと私と同じことを同じころから始めてた人ならもっと装備は充実してるだろうし、
「もっと先に進まれる可能性も十分あるよね?」
ということになる。
そんなことになるかは分かんらいけど、もし強い人が入ってきたらと思うとぞっとするね。
そういう人は今、私のダンジョンとは別のダンジョンのダンジョンコアを大量に奪って自分のダンジョンにDPを入れてるだろうし、ダンジョンマスター自身の強化も結構進んでる可能性が高い。となると、頭に天井が激突したところで痛くもかゆくもないビックリ人間になってて、このダンジョンのトラップが全部効かないとかいう可能性もなくはない。
「……………もうちょっと調整しつつ、DP溜めてガチャ回さないとな~」
私は罠の見直しをしつつ、もっと人が来てくれるようなダンジョンを考えていく。
本当に考えることが多くて厄介だよねぇ。まったく、ダンジョンマスターも楽じゃないよ。これでがお金が稼げなかったらやめてたね!やめられたかどうかは別として!
なんてことを考えつつダンジョンの改造をして、
「あっ。金保さん。今日も安定してますね」
「はい。というか、安定を求めてあんまり挑戦できていないと言いますか……………アハハッ」
「それは仕方ないあですよぉ。命がかかっているわけですしやっぱり安全が1番です!それこそモンスターに100回殴られても死なないくらい強くなってからで良いんじゃないですか?次に行くのは?」
「いやいや。それもう化け物じゃないですか。人間やめちゃってますって。今の強化のペースだと何十年も先の話になりますよ?」
私は組合の方に顔を見せに行く。
目的は、他のダンジョンのコアをもらいに行くときについでに倒したモンスターの素材や見つけた宝箱の中身の売却。
そして、情報収集。
「そういえば知ってますか?あの有料ダンジョンで死人が出てるって話」
「え?有料ダンジョンって、あのお金を払えば宝箱が開けられるダンジョンの話ですか?」
「そうですそうです。あそこで死人が出てるらしいんですよ」
「へぇ?あそこって安全だったから人気だったのに、そんな死人が出てるなら行く人が減っちゃうんじゃないですか?結構一般人とか子供も来てるみたいでしたし」
本当は私から聞くつもりだったんだけど、私のダンジョンの話題を組合の方の人から出してくれる。
どうやら、死人が出てるっていう情報はもう出回ってるみたいだね。
流石に長く出てこない人がいるって言うのが分かって確認を取られたのかな?
「いや、実はそれが、死人が出ているのは有料スペースじゃなくて無料の方らしいんですよ」
「無料の方?何ですかそれ?」
「え?知りませんか?あのダンジョン、有料の扉の反対側に、ダンジョンを純粋に攻略したいって人のための無料で入れる穴があるんですよ。そこがトラップは多いし攻略は不可能っていう判断をされてCランクに認定されてるんですけど」
「あっ、そうなんでしたっけ?でも、なぜわざわざそんな罠だらけの場所に行く人たちが?死人もたくさん出てるなら、危ないっていうのは分かってるわけですよね?」
「はい。組合も入り口近くで間違って入らないように職員を派遣して声掛けを始めたんですが、それでもやはり何人か入りたがる人はいて」
「へぇ?何があるんでしょう?」
「それが分からないんです。本部の方は、例の無料宝箱ダンジョンブームの時にちょっと良い装備を手に入れた人たちが調子に乗って攻略しようとして死んでいってるという結論付けをしたみたいですけど、とてもそれだけとは思えなくて……………」
「なるほど?よく分からないですね~」
あながち本部の結論は間違ってないんだけど、私はあまり分かってない雰囲気を出してごまかしておく。
この雰囲気だと、今のところまだ組合の人が来て声をかけるだけにとどまりそうかな?
職員が派遣されて本格的に内部が調査されるとかじゃないならまだ安心できるね。




