10稼 無料宝箱
オーロラが見れる。流れ星が見れる。きれいな星空が見れる。
場所の問題も、運の問題も、そして人の欲による問題すら関係なく、綺麗な景色が見れる。そういう話はあっという間に広まり、私のダンジョンには多くの人が押し寄せるようになった。
そしてその大半が、今までとは違い一般人。冒険者ではないような人達。
「やっぱり強くないと入ってくるDPは少ないか~。まあでも、人が増えるだけで十分だし良いかな」
質が落ちたから1人当たりのDPは少なくなっちゃったけど、数で補えるからそこまで問題ない。
ただそこに問題がなくても、他の部分にまで問題がなかったり、全く問題がなかったりするわけではない。
弱いとはいえ人が多いからDPの収入自体も悪くない。後もう数日で石のセットを課金で買えそうなくらいにはなってる。
そして、入っていくる人が多くてしかもそこまですると飲食に手を出す人も多いから金銭的な収入もそこまで悪くない。
間違いなくこのダンジョンは幅広い層に人気のある場所になってて、将来的にも人気を維持した状態で運営していける。
ただ、
「冒険者が来ないのが痛いなぁ……………」
今の唯一と言ってもいい問題。しかしながら、かなり大きな問題でもある。
それが、侵入者に一般人が多くなっているのに対して冒険者は少なくなってしまっているということ。しかもそれは割合的な話ではなく、今までの数から考えて少なくなっている。
その理由は、
『10万より上の宝箱はここしかないからな~。他は金払う価値がないとして』
『急に増えたよな~。無料のダンジョン』
今ダンジョンに来てる冒険者2人が話していること。それがすべて。
急に各地で、無料のダンジョンが現れたの。何が無料なのかって言えば、宝箱が。
私のダンジョンのように、というか私のダンジョンを最初に作った時以上に宝箱が大量に並んでいるようなダンジョン。それが増えてきた。
しかも私のダンジョンとは違い、各宝箱は無料。そのダンジョンには全くお金がかからない。
流石にこのダンジョンでかなり高額に設定している部類のレアリティの高いアイテムが出てくる宝箱は設置するのに必要なDPが多すぎるからないみたいだけど、低ランクの宝箱を狙っている冒険者からすればそこは完全にここの上位互換。
お金は必要ないし危険もないのにアイテムが手に入るという夢のような場所。
お陰で、私のダンジョンはそういった層の冒険者がパッタリとくることがなくなってしまったというわけ。
「まあ予想済みではあるから良いんだけどさぁ」
ただ、こうなるのは予想済み。
私がこうして全く攻略されることのないようなダンジョンを作れば、絶対に真似しようと考えてそうして宝箱無料配布みたいなことをする人が出てくるのは分かってた。
宝箱を大量に設置しておけば攻略せずに済むんだと解釈した人たちが。
だからこそ、
「金保さん。今日も結構いろいろと集めてきましたね」
「はい。宝箱を開けて中身売るだけですし、そこまで難しいこともないですからね」
私はそれを利用する。
私はダンジョンマスターになったとはいえ組合に所属する冒険者でもあるから、そういったダンジョンの攻略に行ったとしても問題にはならない。
そして、そのダンジョンの宝箱を開けて手に入れたものを売り払ったとしても、全く問題にはならない。
「……………でも、最近ちょっと減ってきちゃいましたし困りますよね」
「本当ですよねぇ。無料でアイテムが大量に手に入るわけですし、組合としても保護していきたいところではあるんですけど。いつの間にか奪われたり破壊されたりということも多くて……………」
ちょっと歩いて宝箱開けてそれを回収してくるだけ。それだけで、どんどんお金は増えていく。
流石に今までダンジョンに来てた冒険者たちが落としていたお金を補えるほどかと言われるとそんなことはないけど、私が足を使って稼ぐ程度の価値はある。
ただ、そんなダンジョンもあまり寿命が長くないというのが残念なところ。
最近多い宝箱設置のみのダンジョンは、いつの間にかダンジョンコアを奪われていたり破壊されていたりして消えてしまうことも多い。
組合にとってもかなりの痛手と言って良い。
「どうせなら、発展してるダンジョンは組合のものにしてもいいんじゃないですか?1つくらい確実に確保しておくためとかいえばそこまで批判も大きくはならないと思うんですけど」
「あっ。そうですか?そう言ってもらえると助かります……………上でも検討して入るみたいなんですけど、やっぱり会議に呼ばれる冒険者の方々はそこに関しては否定的な意見を出す方が多いんですよねぇ」
「あっ。そうなんですか?1つくらいだったらいいと思うんですけどねぇ。どちらかと言えば組合が抱える在庫がなくなる方が怖いですし」
「ですよねぇ。今は宝箱があるおかげでポーション類や素材類も豊富ですけど、これから先数が少なくなってしまうと、結局今までのようにひっ迫してしまうわけですし」
資源を守るために、宝箱がたくさんあるダンジョンを1つくらい組合で独占してアイテム類の在庫が途切れないようにするべきなのではないかと私は意見する。そうして、ダンジョンを保護する方向への理解を見せる姿勢を示した。
奪ったり破壊したりしてるのは、私だって言うのに。
「じゃあこちらどうぞ。報酬です」
「はい。ありがとうございます。なくならないうちにまたとってきますね」
「はい。ぜひそうしてください。アイテムの類はいくつあっても良いですから組合としてもありがたいです」
売却した金額を受け取って、私は組合の施設を出る。
そしてそのまま、スマホで調べておいたダンジョンへ。もちろんそのダンジョンは、最近数が少なくなってきてるという噂の宝箱だけを設置しているタイプのもの。
組合にいた時とは少し変えてある装備でダンジョンへと突入し、
「あぁ~。ここはDP溜めてるのかな?あんまり宝箱多くないな~」
宝箱を開けていく。
残念なことにこのダンジョンは宝箱の数が少なく、収入も大したものではない。何かしらの理由があってDPをためてるんだろうとは思うけど、そんなことでケチったら魅力が低下するだけで意味ないよね。
そんなんだからあんまり人も来ないし、
「盗まれても気づかないんだよ」
私は宝箱の中身をすべて回収した後奥まで行って、ダンジョンコアを持つ。
そのまま、誰かに気づかれる前にダンジョンの出口へと速足で歩いて行く。そうしてその持った状態でダンジョンを出れば、ガラガラッ!と音を立てて、
「お、おい!今ダンジョン崩れたぞ!!」
「え?ここ、宝箱だけのダンジョンじゃなかったか?なんで壊してんだよ!」
ダンジョンが崩れていく。
これによりダンジョンは破壊され、おそらくこのダンジョンのダンジョンマスターは死亡したんだと思われる。
私の視線の先では、一足遅くやってきたらしい冒険者たちが驚愕した表情で固まっていた。