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プロローグ

「あぁ~空から美少女が降ってくるみたいに札束の雨が降ってこないかな~」


世の中お金がすべて。

私はそう思ってる。


私が今歩いているこの道も、私の歩く道を限定するようにそびえる高いビルも、私の着る服も、この土地も、そして私すらも。すべてお金によって生み出されたと言っても過言ではない。

お金がなければ土地は買えないし道路も舗装できない。ビルだって建てられないしオシャレもできない。そして、子供を産み育てることもできない。

だからこそ、この世界はお金がすべて。それは間違いない。


でもね、私にはお金がない。それこそ空からお金が降ってきて一瞬にして大金持ちにならないかとか非現実的な妄想をしてしまうくらいにはお金がない。


「お金は、どうして働かないと増えないんだろう……………」


どれだけ働いて勉強してお金を増やそうとしてみても、まだまだまだまだまだまだ足りない。どれだけお金が私の下に来ても、全く足りることがない。

この程度じゃ私の横にあるような高層ビルを全て買い上げることはできない、もっともっとお金が必要。お金はどれだけあったって困ることはないんだから。


そんなことを思いながら歩いている時だった。


「ん?これは?」


私は壁に貼られた1枚のチラシを見つける。

そこには、万人受けしそうなポップな絵と共に、


『冒険者になって目指せ一攫千金!戦闘初心者大歓迎!』


なんて書かれている。

そう。冒険者。冒険という、夢のありそうな単語が入った詐欺にあう確率の方が高そうな職業への勧誘。だけど、


「そういえば一般人の募集がそろそろ何だっけ?冒険者組合系の機関に投資してたお金増えてるかな……………」


決してこの冒険者というのは名前に反して怪しい職業じゃない。

最近になって突然地球上の各地で発見されるようになったダンジョンという場所で探索や攻略をするのが冒険者。

元々は警察とか自衛官とかでこの国だと構成されてたけど、ある程度の調査が終わって人でも足りなくなってきたってことで一般にも募集が始まったみたい。


「一攫千金……………ちょっとやってみようかな」


別に戦うのが得意というわけじゃないけど、どの程度稼げるのかは試してみたい。あわよくば今後活躍する冒険者の卵ともつながりを作っておきたい。

金持ちには金持ちの知り合いが多いと聞いたことがあるから。


ということで私は早速その翌日、冒険者になるため申請を行なった。

申し込みの後は講習や簡単な訓練と言ったことが行なわれて、申し込みから約1月後、やっと冒険者としての活動がスタートできるようになる。

かなり高かったけど涙をのんで買った初心者用装備と共にスマホで調べた最寄りのダンジョンを目指し、


「いくら稼げるかな。1回10万くらい稼げたら良いんだけど」


初めての1人での正式なダンジョン対策に希望を抱き、私は買ったばかりの新品な耐久性の高い靴に力を込めて、踏み出した。

次の瞬間、



ガラガラガラガラッ!

「えっ!?」


足場が崩れる。

踏ん張るところがなくなり、真っ逆さまに落ちていく私。スローモーションのようにゆっくりと流れていく周りの景色を目に焼き付け、急いで手と足を延ばして壁に当てて勢いを殺しながら下まで滑り落ちていく。


これが、全ての始まりだった。







「…………アイタタッ」


落ちてから数秒後、私は擦り傷のできた手や足についている土を落としつつ私は起き上がる。

思ったより崩落してから下までの距離はみじあっくて、できた穴は自分が世界の真理を理解してるとか思ってる人たちがSNSに投稿するポエムくらい浅かった。

まあ浅いとは言っても落ち方によっては十分危ないくらいではあったけど、私も色々とダンジョンに行くにあたって用意してたから鞄が良い具合にクッションになってくれた。おかげでけがはそれこそ手足を擦りむいただけ。


「ここ……………ダンジョン?」


落ちたところがどこなのかと探ろうとして、私が見つけたのはどこか奥へと続いて行きそうな大きな穴。そして、そこから少しあふれてくるように感じられる魔力。

これは間違いなく、私の知識によるとダンジョンだと思われて、


「新しいダンジョンの出現か~。基本的に生み出されたばかりのダンジョンは弱いから過度に警戒しなくていいって話だったけど……………」


新しいダンジョンは、基本的に弱い。だからこそ、初心者が行くのにも適していると言われている。それこそ私にピッタリ。

しかも、ダンジョンにある宝箱っていうのは最初にあけるときが1番いい物が入ってるといううわさもあるし、


「これは行くっきゃない!」


振り返って一応ダンジョンからの帰り道が用意されていることを確認して、すぐにダンジョンへと入っていく。ここの宝箱は私が最初に見つけて、これから先豪華な生活をしていくんだフヒャヒャヒャヒャッ!!!!待ってろ私のお金ぇぇぇ!!!!!


「……………って、あれ?」


宝箱を見つけて一攫千金億万長者。そんなことを考えてダンジョンに入ったにもかかわらず、私は違和感を感じて首をかしげる。

だって、私の前には宝箱の席あが広がっているはずなのに。それこそ、お、値段以上な家具とか売ってるお店の収納コーナーのように大量の宝箱があるはずなのに。1番奥にはそんな収納に使うものの中でも特に大きな業務用ごみ箱のごとく巨大な宝箱が待ち受けているはずだったというのに!


「なんで何もないの……………」


私の前には宝箱もアイテムもない。モンスターすらおらず、先に伸びる道もない。

そこにあるのはただ、


「ダンジョンコアか~。まあ確かに高いっていう話ではあるけど、そこまで欲しくはないんだけど?」


両手の掌で持たないといけない程度には大きい、綺麗な丸い水晶玉みたいな物。名称はダンジョンコア。

その名前からわかるようにダンジョン固有のもので、ダンジョンを運営するのに重要な役割を担っているらしく、これを破壊すればダンジョンが完全に機能を停止して崩壊していくらしい。

破壊してもいいしそのまま持ち帰ってもいいんだけど、当然ながら壊していない状態の方が高く売れる。一応ダンジョンを運営するためのもので魔力がそこそこ溜まっているらしいんだけど、残念ながら生まれたてのダンジョンのコアにはそこまで高く売れるほどの魔力はたまってないらしいんだよねぇ。

ちょっとしたお小遣いくらいの金額にしかならないと思う。


「まあ、ないよりはマシかなぁ。これをいったん売り払って、気持ち切り替えて予定通り動くかぁ」


期待外れだけど、いつまでも落ち込んではいられない。

私はダンジョンコアへと手を伸ばして、それを回収しようとした。


その瞬間、



ピロンッ!

『接触を確認。ダンジョンマスター登録を行ないました』




「…………………………え?」

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