幕間ー別離ー
この1ヶ月間、フォティアは乳母を断り自身の手でテリオスを育てた。
一生懸命生きようとする小さな命。
名前をつけて、あやして抱きしめて、その温かさを知る。
全力で自分を求める姿が愛おしくてしかたなかった。
テリオスには産まれた時からニコラオスの面影がある。
見た目なのか雰囲気なのか、その場にいるだけで周りを照らすような明るさを感じた。
思えばニコラオスは太陽のような人だった。
温かくて優しくて、フォティアを包み込むような大らかさを持った人。
人生に絶対なんてないけれど、こんなに早く別れがくるなんて誰が思うだろう。
「お父様は素敵な人だったのよ」
テリオスを抱っこしてフォティアは話しかける。
ゆらゆらと揺らすと笑い声を上げた。
テリオスは産まれて間もないと思えないほど落ち着いた赤子だった。
比較的いつも機嫌が良く育てやすい。
そしてふと気づくと綺麗で純粋な目でフォティアを見ている。
もちろん、お腹を空かせて泣いたり、夜泣きをしたり、手のかかることもあるけれど。
それも今この時だけ。
瞬間、瞬間のテリオスを覚えていたかった。
フォティアはテリオスを公爵家に残し自身はここを去ると決めた。
迷いに迷って決めたことではあるけれど、これが正しい答えだったのかはわからない。
それはきっとテリオスが大きくなって初めてわかることだろう。
選択できる自由を、テリオスに残したかった。
フォティアと一緒にいれば、基本的な教育は養育費で受けられるとしてもやはりいろいろなところで制限は出る。
それに比べて公爵家にいればテリオスの選べる道は増えるだろう。
「あなたは私が捨てたと思うかしら?」
いつの間にか腕の中ですやすやと眠り始めたテリオスを見つめながら、フォティアは呟く。
フォティアがテリオスにしてあげられることは少ない。
ただ一つ、可能性をその手に残すために、フォティアはテリオスを手放すのだ。
明日、フォティアは公爵家を離れる。
テリオスと別れなければならない時まであと数時間。
今夜は、きっと一睡もできないだろう。
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