求婚
ルーカスは立ち上がると、テーブルを挟んだ向かい側の席に座るアリシアの目の前まで来て跪いた。
「アリシア、いつも一緒にいてくれてありがとう。今回こんなに長く離れることになって、どれだけ君の存在に助けられていたのか実感したよ」
下から見上げてくる濃紺の瞳。
思えば、ルーカスを見上げることはあっても見下ろすことはなかった。
指通りの良い漆黒の髪は艶やかに光り、太陽の光を弾いてまるで天使の輪が乗っているかのようだ。
「一緒にいて当たり前のように婚約して、当たり前のように結婚するつもりでいたけれど、ちゃんとけじめをつけなければいけないと思っていたんだ」
両想いだったから婚約したのに、これ以上なんのけじめをつける必要があるのだろう。
一抹の不安を感じてアリシアが見守る先で、真摯な瞳をしたルーカスがさらに言葉を続ける。
「アリシア・カリス伯爵令嬢、あなたを愛しています。どうか私と結婚してください」
求婚の言葉はシンプルだった。
嬉しい。
愛しい。
恋しい。
その時アリシアの胸をよぎった気持ちは何だろうか。
すべてをひっくるめて大きな塊となった気持ちで胸がいっぱいになる。
唇は震え、瞳は潤んで、アリシアは喘ぐように息を吸った。
「喜んで」
掠れた声で答えてスッと左手を差し出すと、その手をすくい取ったルーカスが手の甲に唇で触れる。
そして薬指に指輪をはめた。
ルーカスの顔に柔らかく花開くような笑顔が溢れる。
「アリシアに私の忠誠と愛を捧げよう」
低く甘い声がアリシアの耳をくすぐった。
騎士が忠誠を誓うように、恋人が相手の心をこい願うかのように。
ルーカスの心が、間違いなくアリシアに届いた瞬間だった。
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