逡巡
ルーカスが客室に戻ってから、アリシアはお気に入りのハーブティーを手ずから入れた。
丁寧にお茶を入れる工程が頭の中を整理してくれる気がする。
カップをテーブルに置いて、湯気が立つさまをぼーっと眺める。
いきなり多くの情報を得てアリシアは混乱の極みにいた。
辺りに満ちるハーブティーの落ち着いた香り。
いつも何かに迷う時は、お茶を入れて深呼吸する。
イレーネの事件とその顛末から始まってフォティアとその子どもの処遇まで、これでもかというほどの情報量だ。
その中で、アリシアが選べることは無い。
二つの選択肢の中で、フォティアが子どもと共にいるのであれば二人と直接関係することは少なくなるだろう。
養育費のやり取りはあるし、彼女たちが公爵領に住む限り無関係ではいられない。
それでも、日々直接会うこともなければ、アリシアが拒めは会わずにもいられる。
問題はフォティアが子どもと共にいることを選ばなかった場合だ。
(もしフォティア様が子どもを残していったら…私はちゃんと受け入れられるかしら?)
もちろん、もしアリシアが受け入れられないのであれば、残された子と関わらずに済む方法をルーカスは考えてくれるだろう。
しかしアリシアはその選択をしたく無かった。
子どもが残されるのであれば、アリシアは受け入れて家族として一緒に暮らしたい。
大人の都合で振り回される子をこれ以上見たく無かったから。
そして、そんなことになればきっとルーカスはまた傷つくだろう。
状況は違えども、大人の事情に巻き込まれなすすべもなくそこにいなければならない子を見てルーカスが何も感じないとは思えなかった。
全ては自分の心持ち次第だということはわかっている。
それでも、すぐに事情を飲み込めるほどアリシアはできた人間ではなかった。
中途半端な気持ちで受け入れて、後になって拒絶すれば余計に傷つけてしまう。
子ども一人の人生に関わる限りいい加減な対応はできない。
育てるからには責任があるから。
(覚悟を持つことはできる?)
ただでさえこれから新しい命を迎える身だ。
アリシアには自信がなかった。
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