おかえり
その日アリシアは珍しくも緊張していた。
「ねぇイリア、この格好おかしくないかしら?」
今日何度目かもわからない問いかけをしてイリアに若干嫌がられている。
「姉さん、その質問今日5回目くらいだよ。さすがに多すぎる」
「でも本当に久しぶりに会うんだもの。前のドレスはもう着れないし、体型も以前とはだいぶ違うでしょう?」
アリシアのお腹は前と比べて大きくなっており、体を締め付けない方が良いこともあってふんわりとしたドレスを着ていた。
ただでさえそれほどスタイルが良かったわけではないので、今の体型でルーカスに会ったらどう思われるのか少し心配だった。
もちろんそんなことで態度の変わる人ではないとわかってはいたが、そこら辺は女心というのか、一番ベストな自分で会いたいとアリシアは思う。
「大丈夫だよ。ルーカス兄はどんな姉さんでも好きだと思うし」
呆れながらもちゃんと答えてくれるイリアはきっと良い弟なんだろう。
何度も答えをもらってアリシアもやっと落ち着いてきた。
ルーカスからの先触れが届いて2日。
とうとうルーカスがカリス領のカントリーハウスまで来る日がやってきた。
この2日、アリシアの心は落ち着かなくてソワソワしていた。
いや、ふわふわかもしれない。
ルーカスに会うのは実に7ヶ月ぶりだ。
アリシアは明らかに変わったが、ルーカスはどうだろう。
「もうすぐなのよね?」
ルーカスの到着の確かな時間がわかっているわけではない。
周りのみんなには体調を考えて止められたが、アリシアは玄関ホールでルーカスを迎えたかった。
だから今はホール脇に椅子を置いてそこに腰かけている。
立ちっ放しを許さない周りとの妥協点がそこだった。
「姉さん冷えない?大丈夫?」
案外イリアも心配性なのか、こちらはこちらで同じことを聞いてくるのは3回目だ。
「大丈夫よ」
そう答えた時、ポコンっとお腹を蹴られた。
最近感じるようになった胎動は、今日が一番強いかもしれない。
そっとお腹に手を当てるとまたポコンっと蹴られる。
「到着したようですよ」
アリシアがお腹の子に気を取られているとノエに声をかけられた。
とうとう、ルーカスがカリス邸に着いたのだ。
執事によって開かれたドアの向こうに懐かしささえ感じる漆黒の髪が見える。
アリシアは咄嗟に立ち上がると小走りに駆け出した。
「ルーカス!」
アリシアの声に、ルーカスがこちらを見る。
「アリシア」
いつもの声だ。
アリシアを呼ぶ、ルーカスの声。
甘さと優しさを込めた声。
「おかえり!!」
アリシアは決めていた。
次にルーカスに会った時には絶対に「おかえり」と言おうと。
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