糾弾
書類の内容は端的に言ってしまえばイレーネの罪を問うものだった。
「ニコラオス公の子をルーカス公の後継にするにあたり、邪魔になると考えたフォティア・ラルマ伯爵令嬢を害そうとしたこと、相違ないか?」
重ねてニキアスが問う。
「…それは…フォティア嬢、彼女が悪いのです。ニコラオスの子が欲しくば公爵夫人の立場を確約するように脅迫してきたのですから。しかしルーカスにはすでに婚約者がおり、フォティア嬢の希望には沿えませんでした」
どこまでが本当のことなのか。
そもそもイレーネとフォティアは共謀していたのではないか。
そう思いながらルーカスはイレーネの申し開きを聞く。
「ルーカス公とアリシア・カリス伯爵令嬢との婚約破棄依頼書がイレーネ夫人、あなたの名前で出されていたことを思えば、フォティア嬢の希望に沿うつもりだったと思うが、それについては?」
「亡くなった兄の婚約者がその兄弟の婚約者となるのはままあることです。婚約は家と家の契約でもありますし、今回の婚約不履行はフォティア嬢には落ち度がない。フォティア嬢の希望もあり、ルーカスと婚約するべきだと思いました」
一見筋が通っているようにも思える。
ルーカスとアリシアの気持ちを考えず、そしてカリス家にきちんと話を通さずに強行したことを除けば。
「しかし婚約は当主が取り決めること。夫人の行ったことは越権行為だ」
「あの時はまだルーカスが当主の仕事を全てこなすことができず私がその分を担っておりました。当主代理として依頼書を提出したこと、越権行為とは思いません」
「当主代理というのはあくまで代理に過ぎぬ。ましてやその書類はルーカス公の預かり知らぬところで出されていた。婚約破棄する本人すら知らない状況で出された書類が正当なものとなるはずはなかろう。夫人の行った行為が問題だということは、夫人自身がよく理解しているものと思うが?」
「婚約が家と家の契約である以上、本人の希望が通らないことはよくあることです」
「ルーカス公のことだけであればディカイオ公爵家内だけで決めることも可能だが、相手であるアリシア嬢になんの問題もなく、またカリス家に承諾を得たものでもない」
そこで一度言葉を切ると、ニキアスは言った。
「つまり、どんな言い訳があろうとも夫人の行為に正当性はない」
イレーネは反論できなくなったのか口を噤む。
「婚約破棄はできず、フォティア嬢の希望に沿えなかった。ならばニコラオスの子の権利を有する彼女がいなくなればすべて解決すると思ったのか?」
「………」
「婚約破棄の件も問題だが、暗殺未遂というのはそれとは比較にならないほどの重罪だ」
ニキアスから渡された書類には、いつ誰がどこで暗殺を依頼したか、さらにはそこでやり取りされた金額、暗殺の計画内容までが事細かに記されている。
当然イレーネが直接依頼に行くわけにはいかないため、そこにはイレーネの実家である侯爵家が絡んでいた。
そして、さらには公爵家乗っ取りへと繋がっていく。
「イレーネ・ディカイオ前公爵夫人の処罰を言い渡す」
ニキアスの声が謁見室に響いた。
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