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【本編完結】たとえあなたに選ばれなくても  作者: 神宮寺 あおい@受賞&書籍化


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領地

領地に来るまで、思えばいろいろなことがあった。

でもいざ王都を離れたら思ったよりも何もなく、アリシアは思いの外のんびりとした時間を過ごしていた。


アリシアを心配してずっとそばにいてくれるイリアのおかげもあるかもしれない。

戻ってくると同時に始めた訓練場での鍛錬は、レベルを上げながら今も続けられている。


どちらかというとひょろっとしていたイリアの体格も気づけばだいぶしっかりしてきた。

それと同時に、アリシアのお腹も心なしかふっくらしてきて、そろそろ妊婦だということが周りに気づかれそうなくらいになっている。


今日もアリシアは散歩がてら訓練場まで来ていた。


訓練場の中心、対戦のできるスペースでイリアとノエが向き合っている。

胸を借りるつもりで向かっていくイリアをノエはあっさりといなしていた。


普段接している時はあまり意識しないが、やはりノエの実力は飛び抜けている。

アリシアにつき合って領地に来てから近隣のご令嬢の間ではノエのことが話題になっているらしく、昨日も隣の領地の令嬢からノエについての質問がきていた。


ノエは身分としては男爵家の出になるので、本人にその気があれば貴族との結婚も可能だが、肝心の本人にその気がなさそうだった。


「二人とも、そろそろ一度休憩をして水分を取った方がいいんじゃないかしら?」


専属侍女のタラッサが用意してくれたレモン水は暑い最中に飲むとことのほか美味しい。


気づけば暑さも進み、季節はルーカスとアリシアが結婚を予定していた時期が巡ってきていた。


王都を離れて以降アリシアは一度も領地から出ていない。

両親はシーズンの終わりまで戻ってこない予定らしく、隣国に留学中の兄も留守にしている今、屋敷にはアリシアとイリアしかいなかった。


「ルーカス兄から手紙が届いたって?」


レモン水を飲みながらイリアが聞いてくる。


「ええ。手紙と贈り物が届いたわ」


ルーカスは、ディカイオ公爵家の問題が片づいたら迎えにくると言っていた。

必ず迎えに行くから待っていて欲しい、と。


あれからどうなっているのか、アリシアは詳しいことを聞かされていなかった。

胎教に悪いと言って皆が皆教えてくれず、最初はなんとか聞き出そうとしていたアリシアも最近ではあきらめていた。


ルーカスは折に触れて手紙をくれたし、結局無理に聞き出すことはやめた方がいいという結論にいたったせいでもある。


アリシアはルーカスを信じている。

だから不安はない。


母親の気持ちがお腹の子に伝わると聞いてから、アリシアは努めて穏やかでいることを心がけていた。


「そういえば、フォティア様のお子様はそろそろかしら?」

「ああ…時期的にはそうですね」


ノエの返答にもうそんなに時間が経ったのだと思う。

ディカイオ公爵家が今どうなっているのか、距離の離れている領地には噂すら入ってこない。


今回のルーカスの手紙でもその辺りのことには何も触れていなかった。

そもそも、ルーカスから届く手紙にはアリシアとお腹の子を心配する内容しか書かれていないと言っても過言ではない。


ニコラオスとフォティアの子が産まれる。

避けようもなく事態が動くのはこれからだと、胸のざわめきと共にアリシは感じていた。

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