幕間ー苛立ちー
フォティアの人生において思うようにいかないことは数多くあったけれど、ニコラオスと出会って以降は穏やかな日々を積み重ねられていた。
しかしその穏やかさはニコラオスがもたらしてくれたものだったからなのか。
最近は苛立つことが増えている。
「今日もご一緒していただけませんの?」
ルーカスの執務室で、フォティアはいらいらしながら声を上げた。
以前はなんだかんだ言いつつもどこへ行くにもつき添ってくれていたルーカスが、先日から全くというほどつき合ってくれなくなっている。
「お義母様からもお願いされているでしょう?」
「義母上からの仕事も全て引き継いだから時間がない。買い物には侍女と護衛と行ってくれ」
「そんなに大変なら今まで通りお義母様に手伝っていただけばよろしいのに」
フィティアの言葉に、ルーカスは冷めた眼差しを向ける。
「フォティア嬢はいつから公爵家の仕事に口を出す権利を得られたのだろうか」
辛辣な物言いにフィティアの頬にカッと血がのぼった。
「率直な意見に過ぎませんわ」
「あなたがどう思おうと関係ない。これ以上仕事に口を出すのは止めていただこう」
そう言うと、ルーカスは家令に命じてフォティアを執務室から追い出した。
「…なっ!」
パタリと目の前でドアを閉められて、フォティアは怒りにわなわなと震える。
おかしい。
あってはならない状態になっている。
このままでは、ルーカスがフォティアに魅かれてアリシアと婚約破棄をしフォティアと婚約をするという筋書きが狂ってしまう。
先日までは確かな手応えがあったのに。
何がいけないのか。
以前フォティアが考えていたほど簡単にルーカスが心変わりしなかったのは、心外ではあったが予想内だった。
それでも、一緒にいる時間を増やしていけば好かれる自信があったのに。
噂好きの貴族の住まう王都では上手くやらなければ揶揄されて弾かれるのはこちらになってしまう。
だからこそ、時間をかけてフォティアとルーカスが一緒にいる姿を当たり前にし、二人の仲を思えばアリシアとの婚約破棄も致し方ないと思ってもらわなければならなかった。
そうしなければ、その後のフォティアの社交界の立場に響いてしまう。
貴族間の婚約破棄は無いわけではないが、やはり基本的には外聞の良いものではないためそれなりの根回しが必要だった。
「このままではダメだわ」
状況を打破するには何か他の方法を考えなければならない。
ひとまず義母に相談するために、フォティアは身をひるがえした。
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