武器
ルーカスはロゴス国では珍しい色合いの自分の容姿が好きではなかった。
いつでもどんな時でも、ルーカスに対する態度が変わらなかったのはカリス家の人たちだけで。
だから成長してから多くの人がルーカスの見た目を好意的に見るように変わった時不審感を覚えたくらいだ。
その頃にはルーカスの人間不信はかなり強くなっていて、でも同時に処世術も上手になっていたからある程度さばくことができるようになっていたけれど。
思えば昔フォティアに惹かれた理由は彼女が偏見の眼差しでルーカスを見なかったからかもしれない。
ただそれだけでもルーカスにとって大きいことだったから。
結局それは家の事情でフォティアがトウ国人を見慣れていたからだったけれど。
でも当時のルーカスにとっては衝撃を感じるできごとだった。
カリス家でソティルと話して以降、ルーカスは自分の中で何かが吹っ切れたのを感じた。
今まではどこか遠慮がちだった態度も堂々としたものになり、どちらかというと無表情だった顔には淡い微笑みが浮かぶようになった。
武器は使ってこそ意味がある。
公爵家の権力も自身の容姿も、どちらも武器になり得るのだと、ルーカスはここにきてすっと腹に落ちた。
自分の中の譲れない優先順位がはっきりしたから、何を必要としているのか、何を重要視するのかも迷わなくなった。
その意識が劇的にルーカスの雰囲気を変えていたらしい。
いつかの日のように近衛騎士に先導されてルーカスは皇太子の間にやってきた。
あの時と同じ状況で、でも心持ちは全然違う。
「失礼します」
今度は自ら声をかけて室内に入った。
「よく来てくれた」
ルーカスを見たニキアス皇太子は一瞬「おや?」という顔をする。
「少し見ない間にずいぶん雰囲気が変わったようだが…何か心境の変化でも?」
「そんなに変わったでしょうか?」
最近は行く先々でそう言われることが増え、ルーカスは若干困惑気味に答えた。
「見違えるほどには変わっているな」
思ってもみないことだったのか、ニキアスの瞳がおもしろそうに輝く。
案外興味のあることには食いつくタイプなのかもしれない。
「迷いが無くなったら視界がクリアになった気がします」
「…なるほど」
何かに納得したのかニキアスが何度も頷いた。
「おそらく今の姿が本来のルーカス公の姿なのだろう」
本来も何も、今までも今も自分は自分でしかないのだが。
ただ一つ言えるのは、以前に比べるとずいぶん楽に息ができるようになった気がする。
「今日は先日預かっていただいた『婚約破棄依頼書』を受け取りに参りました」
「ほう。イレーネ前公爵夫人があの依頼書を取り下げると?」
「はい」
さらにニキアスの瞳が輝きを増す。
今まではニコラオスの弟としてしか見ていなかったルーカスのことを、初めてちゃんと認識したかのようだ。
「よかろう。詳しく話を聞こうじゃないか」
そう言うとニキアスはルーカスに席をすすめる。
ニキアスの興味をかなり刺激していることを、ここにきてルーカスははっきりと感じたのだった。
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