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疑惑

突き抜けるような青空の日だった。

アリシアの学園時代の友人が結婚した。

新たな門出のお祝いにあたりには笑顔があふれている。


「結婚おめでとう!」

「おめでとう!!」


あちこちからかけられる祝いの言葉に友人も嬉しそうだ。


「結婚おめでとう!素敵な結婚式だったわ」

「ありがとう。次はあなたの番よ、アリシア」


そう言って友人はブーケを渡してくれる。


「綺麗ね。でも私の方はもう少し先になると思う」

アリシアの言葉に友人はかすかに顔を曇らせた。


「ニコラオス公のことは残念だったわね。ルーカス様はやっぱりお忙しいのかしら?」

「そうね。なかなかお会いすることもできないくらいには」


「…アリシアは最近ルーカス様にお会いしていないの?」

「ええ」


アリシアの返答に、友人はつかの間黙ったあと躊躇いがちに切り出した。


「家のつき合いの関係上パメラ様もご招待しているのだけど、今日はなるべく近寄らない方がいいと思うわ」


パメラといえばアリシアと同じ伯爵家のご令嬢で、学園の在学中からルーカスに執心していた。


詳しくは語りたがらない友人にあまり良い話ではないことが窺われ、アリシアは思わずため息をつきそうになった。

祝いの席でため息はいただけないと飲み込んだけれど。


「忠告ありがとう。パメラ様にはお会いしないように気をつけるわね」


せっかくの祝いの席で心配をかけてはいけないし、アリシアとしてもあえて嫌な思いはしたくなかったので友人の忠告をありがたく受け取った。


しかし、往々にして嫌なことというのは向こうからやってくるもの。


「そちらにいらっしゃるのはアリシア様ではなくて?」


友人へのお祝いが済んだこともあり、退席は自由と聞いていたので早々に失礼しようと思っていたところパメラに捕まってしまった。


「ごきげんよう。パメラ様」

「ごきげんよう。今日は素敵な結婚式でしたわね」


いかにも一緒にお祝いをしたいとでもいうように近づいてきたパメラの、でもその顔に浮かんでいる表情は決して良いものではない。


「そういえばアリシア様は知っているのかしら?」

獲物を見つけた獣のように、パメラは目を細める。


「何のことか仰っていただかなければわからないわ」

「最近ルーカス様がたびたびフォティア様とお出かけになってみえるみたいですけど、ご存じ?」


ドレスショップで見かけた二人の姿が脳裏に浮かぶ。

胸がズキリと痛み咄嗟に胸元に手を当てたが、アリシアは心の痛みを表情には出さなかった。


「フォティア様はご懐妊されてお身体を気づかう必要がありますし、気晴らしのお出かけも大事ですから身近におられるルーカス様がお手伝いをされるのも当然だと思いますわ」


社交界において、弱みを見せることは相手につけ入る隙を与える行為でしかない。

パメラがアリシアに対して好意的でない以上、アリシアも弱みを見せるわけにはいかなかった。


「変な勘ぐりをされるのはパメラ様の品位を疑われてしまいますし、他人の事情に口を出すのは褒められた行為ではないのではなくて?」


元々アリシアは温厚な性格であったし誰かとやり合うことは得意ではない。

それでも、受け身でいるだけでは渡り合えないのが社交界だとわかっていた。


そしてここはきちんと釘を刺しておくべきところだ。


まさかアリシアから反撃されるとは思ってもみなかったのか、パメラの顔色がサッと赤くなる。

学園でも害がない限り噂話は放っておいたから、パメラはアリシアから言い返されるとは夢にも思わなかったに違いない。


「お話がそれだけなら失礼しますわ」

これ以上つき合う必要はないと判断し、アリシアはパメラに一声かけるとその場を辞した。

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