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幕間ー妄執ー

イレーネにとって、セルジオスは最愛の夫でニコラオスは大事な息子だ。

その二人をこんなにも早くに亡くすとは夢にも思わなかった。


ニコラオスが皇太子をかばい命を失って、茫然としていられた時間はしかし短かった。

公爵家としての仕事が待ったなしで降りかかってきたからだ。


タウンハウスとカントリーハウス、それぞれの家令の力も借り、イレーネも知りうる限りの知識と情報をルーカスに教える。


たとえつけ焼き刃であっても、今現在ディカイオ公爵家当主はルーカスであり、全ての決済はルーカスを通さなければならない。


ここにきてルーカスに公爵家の仕事を教えてこなかった弊害が現れるなんて。


セルジオスとニコラオスは以前ルーカスにも公爵家の仕事を教え、一部を任せるべきだと言った。

跡継ぎはニコラオスであるが、スペアの立場になるルーカスにも何かあった時は仕事を任せる必要が生じるからと。


わかってはいたがイレーネは頷けなかった。

どうしても、ルーカスの存在を受け入れることができなかったから。


何よりもセルジオスという頼もしい当主がおり、ニコラオスという跡継ぎがいるのならそれ以上に必要ないと突っぱねた。


本来であれば当主の仕事に妻が口を出すことはできない。

しかしルーカスの出自のせいか、セルジオスはイレーネの希望を受け入れた。


過去のことを悔いても仕方がないとばかりに無我夢中で仕事をこなしてしばらくして。

ふっと空いたエアポケットに入ったかのような時間に。

突然イレーネは気づいてしまった。


このままルーカスがアリシアと結婚して二人の間に子どもが産まれたら、ディカイオ公爵家の血筋から自分だけが外れてしまうことに。


本来通りニコラオスとフォティアの子が継ぐのであればそれはセルジオスとイレーネの血を引いた子になる。


夫を奪われたわけではない。

奪われたわけではないが、セルジオスとイレーネではなくセルジオスと王女の血を引く者がディカイオ公爵家を継いでいくことを、許せない自分がいた。


ルーカスが当主となったのは避けられないことで。

ならばその先、ルーカスの次に跡を継ぐ子はフォティアのお腹にいるニコラオスの子でなくてはならない。


ならばどうすればいいのか。


ただただそのことに囚われて、イレーネの心は歪んでいく。

妄執に取り憑かれて自身の考えがおかしいと気づくこともできず、自分の行動が誰にどれだけ影響していくかも考えられず、イレーネは思考に沈んでいった。

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