テリオスのひとりごと<11>
ミリヤに置いていかれてどれくらい経ったのだろうか。
まだそれほど時間が経っていないような気もするし、もうだいぶ経ったような気もする。
心細くて僕は椅子の上で膝を抱えて座っていた。
ミリヤは何でこんなことをしたんだろう?
ずっとその疑問が心の中に渦巻いている。
僕はわりと小さい頃から自分の置かれている環境が普通ではないことには気づいていた。
だから人の気持ちには必要以上に敏感だったと思う。
だってもしじいややばあやに見捨てられたら生きていくことすら難しいのだから。
だから僕に対して敵意を持った人なのかどうかはわかるようになったと思っていたんだけど。
ミリヤは僕に普通に接してくれていた。
そこに悪意は感じなかったのに。
なんで?
何度考えてもわからない。
そうやって膝を抱えていたけど、ほどなくして僕は空腹を感じた。
「お腹すいた……」
呟きに答えてくれる人はいない。
仕方なく僕はミリヤが置いていった籠をのぞきこんだ。
籠には埃よけなのか布がかけてあってパッと見では中に何が入っているかわからない。
「あ……」
籠の中にはミリヤと一緒に買った牛乳と卵だけでなくサンドイッチが入っている。
「ミリヤが言ってたサンドイッチ?」
箱に詰められたサンドイッチは僕の好きな卵サンドだ。
たしか屋敷にはもうほとんど卵がなかったはずだから、その残り少ない卵で作ってくれたのだろう。
そこにたしかな気遣いを感じて、僕はますますわからなくなる。
どうしたらいいんだろう?
卵サンドを食べ、ついでにさっき買った牛乳を飲んでお腹は膨れたけれど状況は何も変わっていない。
ただ少しだけ、気分が上向いた気はする。
「ご飯ってすごいな」
お腹が空いていると気持ちも暗くなるけど、お腹がいっぱいになったら何とかなるような気もしてきた。
僕は壁の上の方に設置されている窓を眺める。
あの窓の下に椅子を持っていけば、もしかするとこの小屋から出られるのでは?
そう思ったからだ。
でも同時にミリヤの言葉も思い出した。
『迎えが来るまで、絶対に、小屋から出てはダメですよ』
勝手に僕をここまで連れてきた人の言葉を聞く必要はあるのだろうか?
そう思いながら、同時にとても辛そうな表情を浮かべていたミリヤを思い出す。
『どうか、ここから出ないで』
ミリヤの瞳がそう訴えていた気がした。
何か事情があるのかな?
そう思う僕はお人好しだろうか。
どちらにしろここから出ても僕はどうやって屋敷まで帰ればいいかわからない。
道ゆく人に聞いて教えてもらえるのかどうかも。
そうやって思い悩んでいたら、遠くの方から物音が聞こえてきた。
「誰か来る?」
果たしてそれは助けなのかそれとも僕を害すものなのか。
わからなくて、僕は自分の体をギュッと抱きしめた。
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昨日より新しい話を始めました。
異世界転移もので、どちらかというと『転生した悪役令嬢の断罪』に近い雰囲気の話になっているかと思います。
よろしければ新しい話も読んでいただけるととても嬉しいです。
タイトル↓
『異世界に行った、そのあとで。』
読んでいただきありがとうございます。
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