番外編 テリオスのつぶやき<10>
寄りたいところがあると言ったミリヤは僕と手を繋いだままどんどん歩いていく。
人の多い大通りを抜けて小道に入ったところで人影はかなり少なくなっていた。
「ミリヤ、どこに行くの?」
「もう少し先です」
それだけ言ってミリヤは黙って歩いていく。
何となく話しかけることができなくて、僕は何も言わずに着いて行った。
目的地は小さな小屋だった。
お店には見えないしここに何の用事があるのかもわからない。
そう思いながらも中に入れば、中にはほとんど何も置かれていなかった。
部屋の真ん中に机と椅子が一脚。
そして壁際に小さな棚がある。
物置小屋?
屋敷の庭園を管理する庭師の使っている小屋に似ている。
小さな小屋の中にスコップとかバケツとか肥料とかが置いてある、そんな場所だ。
「ミリヤ、ここに何の用事があるの?」
そう問いかければミリヤはとても辛そうな顔をした。
なぜそんな顔をするんだろう?
考えても僕にはわからない。
どうしたのかな?
そう思っていたらミリヤが小さく呟いた。
「……ごめんなさい」
そう言って、ミリヤは机の上に籠を置く。
「ミリヤ?」
「テリオス様、この小屋から絶対に出ないでください」
「どういうこと?」
「もしお腹が空いたら籠の中にサンドイッチがありますのでそれを食べてください」
僕の問いかけに答えず、ミリヤは矢継ぎ早に言う。
そして。
「迎えが来るまで、絶対に、小屋から出てはダメですよ」
そう言い置いて身を翻す。
「ミリヤ!?」
突然のことに反応ができないでいたら、あっという間にミリヤは扉から出て行ってしまった。
ガチャン。
そして、外から鍵がかけられる音がする。
「……え?」
どういうことなのか僕にはまったくわからなかった。
「鍵をかけたら自分から外に出ることなんてできないよ……」
そんなどうでもいいようなことが口からこぼれる。
ああでも、壁の上の方に窓があるから僕の体の大きさならそこか出られるのかもしれない。
「なんで?」
突然小屋に置いていかれて僕は混乱していた。
小さな小屋の中に僕一人。
じいやにもばあやにも出かけることは秘密にしていたから、このままだと僕がここにいることを誰も知らないままだ。
ミリヤはどうしてこんなことを?
それに、迎えが来るまでってどういうこと?
そうだ。
ミリヤは「迎えが来るまで絶対に外に出るな」と言った。
ということは、いずれここには誰かが来るということ。
いったい誰が?
その迎えは僕を助けてくれるのだろうか?
それとももっと酷いことが起こるのだろうか?
何もわからなくて、僕は震えることしかできなかった。
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