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幕間ー変質ー

戦争が終結して、イリオン国からの補償の一部として隣国の第2王女が輿入れしてくることは知っていた。

イレーネはてっきりその王女は皇太子に嫁いでくるものだと思っていた。


その日、イレーネはセルジオスから話を聞いて目の前が真っ暗になるのを感じた。


セルジオスとしても王女は皇太子が娶るべきだと進言はした。

しかし、皇太子にはすでに皇太子妃を含め3人の妃がいたためこれ以上の妃を持つこと、さらにはそれが隣国の王女であることは揉め事を増やすだけだと判断されたらしい。


人質のような扱いとはいえ、相手は隣国の王女。

皇太子ではないなら王族かそれに準じる公爵家へ降嫁させる必要があった。


そこで白羽の矢が立ったのがセルジオスだ。


そもそもが戦争の影響で王族も4公爵家で適齢期の者も少ない。

また、現在結婚していて子どもが一人しかいないのはディカイオ家だけだった。


いわば、王女の降嫁は王命であった。


国の決定にイレーネは嘆いた。

自分がもう一人子どもを産める身体だったらと自身を責めた。

でもどう足掻いても現実は変わらない。


そんなイレーネを見てセルジオスは一つ約束をした。

王女は領地の別荘に暮らし、王都のタウンハウスには足を踏み入れさせないと。

また、それは王女も承知していると。


どうしても受け入れなければいけない現実を前に、最大限イレーネの心情を考慮した措置だというのは理解できた。

気持ちの上では到底納得できないけれど、イレーネもまた仕方なくその王命を受け入れた。


そしてほどなくして王女はディカイオ家にやって来た。


降嫁後、約束通り王女は領地から出ることなく王都へも一度も来なかった。

時々セルジオスは領地へ赴いていたが、王女は亡くなるまでついにイレーネの前には現れなかった。


その姿勢が、王女が自身の立場をきちんとわきまえていたのだと、わからないほどイレーネも愚かではない。


だから王女が若くして亡くなった後、遺されたルーカスを受け入れた。


ルーカスが学園への入学のために王都にやって来て以降は義理の母として王都での生活を助けた。

事務的なことは全てニコラオスが手配していたけれど。


それでも、イレーネにとってルーカスの存在は痛みを伴うもので、その彼を受け入れることは大きな出来事だった。


このまま時間をつみ重ねていけば息子のニコラオスと同様にいつかは心から家族だと思えるようになると感じていたのに。


ニコラオスの死が、イレーネの心に重たくのしかかる。

時間をかけて歩み寄ってきた心がゆっくりと歪んでいくのを、イレーネはどうすることもできなかった。

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