表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
148/154

番外編 テリオスのつぶやき<6>

 ミリヤは思った以上に早く屋敷の仕事に慣れた。

 といっても、元々それほど多くのものを求めてはいないからだとは思うけど。


 そして余裕が出たミリヤはたびたび僕の話につき合ってくれる。

 

 じいやもばあやも、さらに言えばルナも、他のみんなは僕が生まれた時からいる。

 つまり、たいていのことはすでに話したことばかりということだ。

 そして変わらない日常を過ごしていると新たに話したいと思うこともあまり増えない。


 今までそのことに気づいていなかったけど、ミリヤと話していて初めて知った。


 そうなるとさらにいろいろと知りたくなるのは仕方のないことだと思う。


 ミリヤが話してくれることは僕にとっては未知なものが多かった。

 聞く限りミリヤはわりと良い家の出なんだと思う。

 

 そんな人がなぜ侍女を?と思わなくもなかったけど、考えてみれば良家の子女と言われる令嬢たちも行儀見習いで高位貴族の家へ行くこともあると聞くから、それと同じなのかもしれない。


 ミリヤは元々公爵領に住んでいたわけではないようで、彼女の話してくれるのはこことは違う領地の話だ。


 学校に通っていたこと、街に出て友人と一緒にお店で買い物をしたこと。

 きっとなんてことのない話なんだろうけど、体験したことのない僕にはどの話も新鮮だった。


 中でも彼女の話によく出てくるのはミリヤの元婚約者だった人の話だ。

 ミリヤを裏切って他の人を好きになってしまった人なのに、ミリヤはまだその人のことが好きみたいだった。


 裏切られても好きでい続ける気持ちが僕にはわからないけど。

 それは僕がまだ子どもだからなのだろうか。


「そういえばミリヤはなんで今回の募集に応募してくれたの?」


 じいやから理由は聞いていたけれど、ミリヤ自身がどう思っているのか知りたくなって聞いてみた。


「そうですね……領地にいたくなかったというのが一番でしょうか」

「それなら王都の方が長期間雇用してくれるところが多いんじゃないの?」

「王都は……いろいろな人がいますので」

「そうなんだ」


 一瞬、ミリヤの瞳に影が走った。


 じいやが調べたことは本当なんだろうな。

 ここで雇うことができるのは一ヶ月だけだけど、その後も彼女の希望のところで働くことができるように口添えをしよう。


 僕はそう思った。


 だから。

 ミリヤには目的があってこの公爵領までやってきたのだと、この時点で僕は気づくことができなかったんだ。

読んでいただきありがとうございます。


少しでも続きが気になりましたら、ブックマーク登録や評価などしていただけるととても励みになります。


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ