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SF量子小説・「マッドサイエンティストの変身」

作者: 超プリン体

みなさまおひさしぶりです。約1年ぶりの新作です!


昨日カズレーザーの、量子コンピューターについての番組を見て、

夢にでてきたシーンをアレンジしてショートショートにしてみました。


 俺が買い出しからマッド・ラボに戻ると、博士が何やら妙な装置を作っていた。


「博士、なんですかそれは」

「これはな、聞いて驚くな。量子論を拡張した新しい技術を使った、タイムマシンじゃ」


 まじか……。


 いや、マジなのだろう。マッドサイエンティストと名高い博士は、これまで口にしたことはすべて実現してきた、恐ろしい男だ。そういえば量子テレポーテーションを使って情報を未来や過去に伝達するという研究については、俺も知っている。あれを使うのだろうか?


「量子テレポーテーションを使って、情報を未来に送るんですか?」


「いんや。拡張したというのはそこじゃ。わしは気づいたのじゃ。情報と物質は表裏一体。実は同じものだとな。光が波になったり粒子になったりするように、情報と物質も、相互に置き換え可能なものなのじゃ」


※と、いう設定です。


「えーと、つまりどういうことですか?」


「物質を情報という形で翻訳して未来に送って、それを物質に逆翻訳することによって、未来にトラベルできるのじゃ」


 ああ、それって映画で見たことある。確か最後に人間とハエが遺伝子レベルで結合してしまうんだっけか。いや、あれはタイムトラベルじゃなかったな。


「ということでアラン君、わしが未来に行ってみるのでそこのボタンを押してくれんか?」


「ええ?! 作ったばっかりでもう人体実験ですか! しかも博士ご自身が!」

「うむ。最近の小説は、テンポが命なのじゃ」

「は?」


 まあ、確かに一理ある。セオリーではまず物質、肉、動物、そして人体実験と進むのであるけれども、現代の読者は、そんなお約束はすでに理解しているであろう。ならばそれらをすっ飛ばし、いきなり人体実験に進んだ方が、読者思いというものだ。


「わ、わかりました。この赤いボタンですね」


「うむ。わしがこのポッドに入って、指ハートのポーズを取ったら、ボタンを押してくれ。その瞬間、わしは消えるが、10分後に戻ってくる。そういう設定じゃ」


「設定……? わ、わかりました」


「すでに記録用のカメラが回っておる。君とそのカメラが、人類の偉大なる歴史の目撃者となるはずじゃ。では参るぞ」


「は、はかせ! 待ってください。情報と物質を未来に送れるのはわかりました。精神は……、精神はどうなるのですか?」


「大丈夫、それも解決ずみじゃ」


ポッドに入ろうとしていた博士は俺を振り返り、ウィンクをした。ポッドの強化ガラス製と思われる扉をしめ、俺に向かって指ハートのポーズを取った。俺はめまいを感じながら、手の平くらいの大きさのある、赤いボタンを押した。


 瞬間、博士の姿が消えた。エフェクトも何もなく、突然にだ。おい、せめて光子っぽいものが飛び交うような、演出をしろよと俺は思った。


 10分後。


 消えた時と同様に、唐突にポッドの中に何者かが現れた。


「ちょっ……」


 それは、かわいい顔をして、制服を着た女子高生だった。


「いやああん!」、と、彼女は両肩を抱いて、甲高い悲鳴をあげた。


「あ、あの……、どなたですか?」

「何いってんの? あたしよあたし、博士に決まってるじゃん」

「は?」


 博士(?)は説明した。実は未来への転送の際、心も情報に置き換えらる、しかも物質(肉体)と心は混ざり合って、復号の際、肉体が心に浸食されることがあるという。


※と、いう設定です。


「つまりね、あたしの場合、女子高生への変身願望が強かったから、肉体を上書きして性転換しちゃったってわけ、えへっ!」

「えへっじゃねええええええ!!」


 俺はカメラの前でクネクネとポーズを取っている博士(?)をポッドまで引きずり戻し、中に押し込もうとした。元の姿に戻ってもらうためだ。


「ちょっと、なにするのよぉおおお! イタイイタイ、イタイイタイイタイ。もう一回転送しても、元の姿に戻れる保証はないんだからね! プンプン!」


「はっ! 確かにそうですね。ん? ちょっと待ってください? ってことは、博士は今女子高生に変身しましたけど、物質や動物や、肉などに変身してしまうことも、あり得たのですか?」


「うん、あり得たよ!」、にっこりと笑う博士(?)。


「まじですか……」、俺はしゃがみ込み、頭を抱えた。俺は続けた。

「そんな危険な装置、使えないですよ。まあ、情報や物質を転送するのには、使えそうですがね」


「うんにゃ? そうでもないよアラン君。考えてみてよ。老人だったあたしが、ぴちぴちの女子高生に変身できたんだよ? それって究極の、アンチエイジングだよね?」


「はっ!! 確かに!」


 最近、自分の髪に白いものがまざってきたのが気になっていた俺は、顔をあげてポッドをみた。


 そうだ……、俺自身もそうだが、俺の飼っている犬が、そろそろ老衰間近である。あいつをこの装置に入れて、未来に転送すれば、あるいは……。


「ねえアラン?」

「は、はい?」


 ポッドを見つめて考え込んでいた俺とポッドの間に、博士(?)が割り込んだ。目の前のかわいい女の子の顔に、俺はどきっとした。


「あたしは今のままのアランでも、大好きだよ? ちゅっ!」

「やめろおおおおおお(笑」


 俺は立ち上がり、博士(?)を見つめて言った。


「博士。ちょっと考えがあるのですが、このポッド、一回だけ借していただけますか?」

「うん、いいよぉ」

「ありがとうございます!」


 俺はきびすを返してマッド・ラボを出、車で自宅に向かった。


「待ってろよわんこ。お前の願いはきっと、子犬の頃のように、走り回れる健康な体のはずだ! 俺がお前のその願いをかなえてやる!」


「わおーん」


 家にいるはずのわんこが、ありがとわん、と言ったように聞こえた。


<おわり>

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