天国か地獄か 【月夜譚No.229】
当選した宝くじの保管場所に困っている。
少額ならばいざ知らず、一等ともなれば、こんな吹けば飛ぶような紙切れ一枚がとんでもなく重く感じるのも無理はない。それを両手で持ちながら、彼は狭い部屋の中を徘徊していた。
冷蔵庫や箪笥の中は定石過ぎて見つかり易いというし、かといってテーブルの上に無造作に置くのも不安だ。常に持ち運ぼうかとも考えたが、失くしそうで怖いし、掏られる可能性もゼロではない。
色々考えてしまった結果、彼はこうして無意味に部屋を歩き回るしかできないでいるのだ。
さっさと換金して口座にでも入れてしまえば良いのだろうが、最近は忙しくて中々銀行まで行く時間が取れない。だからひとまず宝くじのまま何処かに保管しようと思ったのだが……。
彼は天井を仰いで溜め息を吐いた。これでは、当たった喜びよりも心労でどうにかなりそうだ。
当たって良かったのか悪かったのか、それは誰にも判らない。