第七十四刻 魔族激突 迫る危険
彼の力を信頼してない、という訳では無い。
だがまだ一年になろうかという新人だ、正直余り気乗りはしなかった。
(隊長のお気に入りとは言えあまりお世話は出来ませんよ…。)
戦場では、一つの間違いで死ぬ。
こちらも相手も死にたくないから必死だ。
彼の初戦闘も見ていた、とどめを刺せずいた姿も。
(彼は優しすぎる、両師団への出張でなにか変化があるといいが…)
それが命令でも自身の思いでも何でもいい、理由がいる。
戦う理由が、それがない人間は必ず死ぬ。
(さてさてどうなってるでしょうかね?)
ウェルス敵の首に刺さった剣を抜きながら振り返る。
丁度セスが剣を振り下ろす直前だった、彼の口元が動くのが分かった。
すまない。
(貴方なりに決めたんですね、戦う理由を。)
うちの新人も思ったより成長しているみたいだ。
…
……
………
「痛っ!」
右腕を矢がかすめる、腕は動く問題ない。
剣を振り血を払う、脂で刃の通りも悪くなってきた。
「十三…」
意味があるかは分からない。
それでも数えないといけない気がした、相手の為、自分の為に。
「大丈夫ですかウェルスさん!」
ウェルスに向かって叫ぶ。
彼はやはり上手かった。
極力無駄な動きをせず的確に首を貫く、それに加えて目や足捌きで他の相手を牽制している。
「問題ありません、それより騎馬が来てます!
馬の足を狙えますか?」
馬の足音、他兵士を吹き飛ばしながら凄い速度で騎馬兵が駆けてくる。
「やってみます!」
意識を集中させ生命力を回す。
「無名二式〈壁〉」
腰を落として腕を組む、これはカトレアから初めて教えてもらった無属性魔法だ。
(セス君、これは自分を守る為の技。
攻撃には全く使えないけど、その分一番難しい。)
最初は意味が分からなかった言葉だが使う毎に分かってきたことがある。
俺の壁は大きな膜を身体全体に張る感じ、隊長の壁は攻撃が来る場所にのみ点で膜を張っている。
「隊長よかお粗末だけど馬くらい…」
馬の身体とぶつかる、速度が乗った分重い。
奥歯を嚙みしめる、手を伸ばして馬の首に手を伸ばした。
「押さえつけれるわ!!」
馬の体が宙を舞う、ドスンと大きな音を立てて馬は地面に叩きつけられた。
「ふぅ、よし!」
倒れているのは馬だけだった、乗っていたはずの騎兵が居ない。辺りを見渡す。
「おいおい、馬投げ飛ばすってまじかよ。」
聞き慣れない声に目を向ける、紅い瞳に尖った耳、長槍を背負った魔族がこちらを見て笑っている。
「喋れるのか?」
今までの兵士と違う、同じ言葉を喋り明らかに他の奴らと雰囲気が違う。
「あぁ雑魚とは違うからな。」
槍を回しながら魔族は答えた。
俺は刀を構える、ウェルスに伝えなくてはと視線を一瞬逸した瞬間だった。
「………。」
強烈な殺気と風切り音。
俺の喉元には槍の刃先が止まっていた。
「おい、次よそ見したら殺すぞ。」
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