3 スパニッシュオムレツとガーリックチーズトースト、野菜のポタージュにあぶりベーコン
皮をむいて芽をナイフの角で取ったジャガイモは、小さめの角切りにして水にさらしておく。鍋でやるとより良い。少しそのままおいておいて、ブロッコリーの茎と茂った蕾に分ける。
茎と水にさらしたジャガイモを少量の水を入れたフライパンで茹でている間に、台所に干してあるニンニクを2つ捥いで(2欠片では足りない)皮をむき、スライスする。すりおろしてオリーブ油に浸した方がいいのだが、ゴーダチーズの下に歯ごたえを出すなら断然スライスだ。
くつくつと沸騰してきたところでスライスが終わったので、パンをパン用の包丁で切ってスライスガーリックを乗せる。フライパンを一旦下げて、そこに網をかけて次々にパンを並べた。かまどの火はちょうどとろ火だ。準備している間に、大鍋に朝の残りの牛乳を全部注ぐ。
ジャガイモとブロッコリーの茎を煮た水も、その牛乳の中に一緒に注ぎ、軽く火が通ったジャガイモとブロッコリーは網に上げて水切りをしておく。
卵をボールに全部割り入れて、塩コショウで味を調え、乾燥パセリを混ぜた後、もう一つのかまどに大きなフライパンを乗せてたっぷりのオリーブオイルを入れる。残しておいたスライスニンニクもだ。
水切りした角切りのジャガイモとブロッコリーの茎を半分、じゃっと入れて油が跳ねなくなるまで水気を飛ばし、炒めて完全に火を通す。半分油で揚げるような具合で丁度いい。こんがりと焼けたパンを順に焼き目をその油に浸していって油を吸わせて、またとろ火の網の上に戻す。40人ともなると、網の上に戻した後に軽くあぶってさっと引き上げては次のパンを焼かなければいけない。
忙しなくパンを半分焼き終わると、フライパンの中に残った油はちょうどいい量だ。その間に牛乳が沸騰しているので、皮をむいて洗ったとうもろこしを包丁でこそげるように鍋に入れ、ブロッコリーの葉の部分も入れて煮て溶かす。
フライパンの中に下味をつけてた卵の半分を入れて、ジャガイモとブロッコリーの茎が少し見える位で火を通し、ちょうどいい具合になるまで新しいパンを焼いておく。
牛乳とじゃがいもとブロッコリーの風味が溶けた水で煮あがった野菜を、両手で使う巨大なマッシャーで潰してポタージュ状にし、葉物野菜は一口大にちぎって少し塩辛いくらいのドレッシングを混ぜておく。運動している人にはちょうどいい塩梅だし、非番の人はパンと一緒に食べればちょうどいい。パンには、塩気はチーズしかない。
フライパンと焼き網の作業を繰り返すうちに、野菜はいい具合に煮溶けて黄緑のポタージュになり、サラダも出来た。ポタージュを作った残り火でゴーダチーズを溶かしてトーストの上にかけていき、その間に空いた焼き網で厚切りのベーコンを人数分行き渡るように切ったものを炙っていく。
いい匂いが立ち込める頃、訓練を終えた、または非番で昼の時間になった騎士たちがダイニング集まって来て、私の作った料理を各自進んでテーブルに並べていく。
スパニッシュオムレツと、ガーリックチーズトースト、それに野菜のポタージュとあぶりベーコン、野菜サラダも、私が来てからは残す人が少ないと聞いた。
お代わりの分ももちろんあるけれど、私はそれよりも先に自分の分をしっかり確保して、ダイニングにいっぱいになった騎士たちに笑顔で告げた。
「めしあがれ!」
「いただきます!!」
男所帯の大合唱にも慣れたものだ。其処彼処でうまい、うまい、と言われながら食べる声を聞きながら、私は素早く自分の分のご飯を食べた。彼ら程食べないが、私にはこの後、もう一つ仕事がある。
非番以外で動いて来た騎士たちのお代わり攻撃を、素早く捌くという仕事が。
既に、焼き網の上には残しておいたパンとベーコンが待機しているし、ポタージュもまだ半分は残っている。
これが、毎日3回ある、私の仕事。本当に『飯炊き女』だ。